ご機嫌いかが 7

梅雨まっさかり。
私、雨大嫌い。だから雨の続く梅雨は大大嫌い。

気象庁 天気予報に従ひて 今日も要なき傘持ちありく   奥村晃作

そうです。私、手に物を持って歩くのも嫌いなのに、傘を持ち歩けば忘れるという習性があるから始末に負えません。

だから、雨の日は出来るだけ外出をせずに、糸満久美子の句にあるように過ごせたらいいけれど、これって高望み。

雨の日はぬいぐるみの犬しゃべらせて 終日かるくかるく過ごす

せめて、「ハードボイルドに恋をして7」 の「ご機嫌いかが」のシリーズ最終回、「爽快」を読み「感嘆」して下さい。

爽 快

日曜日の午後だった。私は洗って濡れた手を太陽にかざして乾かしたような気分だった。
二見書房「スキャンダラス・レディ」マイク・ルピカ/雨沢泰訳

今日はすてきな音楽のようにすばらしいので、スキーをする気になれないの。
大和書房「ニューヨークは闇につつまれて」アーウィン・ショー/常盤新平訳

何もかもが快適に感じられた。空気は蒸発した昨夜の夜霧を含んで甘く、隣にはこれからの人生に素敵な予感を抱かせてくれる美人がいる。
早川書房「災厄という名の男」R・D・ブラウン/安倍昭至訳

今は朝、金曜日の朝、気分は最高とまではいかなくても、絶好調の人間の中古品程度の気分ではあった。
早川書房「泥棒は抽象画を描く」ローレンス・ブロック/田口俊樹訳

「・・・やっぱりニューヨークは好きだと思うわ。ジュッと音が出そうな活気があるのよ。サイモン。この疲れはてた世の中で、まだジュッと音をたてるほど元気のいいものがいったいいくつあると思うの」
早川書房「死者は惜しまない」ナンシー・ピカート/宇佐川晶子訳

何がたのしいと言って、人の悪口を言っているときほど楽しいものはない。
しかし本人がいる前ではなくて、いないときに言う悪口ほどたのしい。それも「バカ」とか「ウスノロ」とかいうような単純な悪口ではなくて、もっと多角的に創意と工夫をこらして言うほど、満足がゆくようである。
「さあ、だれかの悪口を言ってみな」
と言われても、悪口を言う相手を思いつくことができないのは、なんという孤独なことであろうか。
新潮文庫「両手いっぱいの言葉ー413のアフォリズム」寺山修司

秋は昔から大好きな季節だ。冬のブルースが流れ出す前に、爽快な気分を味わう最後の季節だから、というだけのことかもしれない。
早川書房「火事場でブギ」スティーヴン・ウォマック/大谷豪見訳

(車の)
窓をのこらずあけると、涼しい秋風が流れこんできた。睡眠不足でぼうっとした頭がすっきりして、順風満帆の人生が流れていくような気がした。
早川書房「火事場でブギ」スティーヴン・ウォマック/大谷豪見訳

感 嘆

「・・・わたしは朝、頭脳明晰でいるつもりなんかありませんからね。ペレに蹴っ飛ばされたサッカー・ボールみたいな頭でいるつもりよ」
「だったら、ぼくが頭脳明晰でいよう。・・・アスピリンは薬箱にはいっている」
「なんて賢い場所にはいっているんでしょう。賭けてもいいわ、あなたってミルクは冷蔵庫に、石鹸は石鹸箱にしまっておくタイプなのね」
早川書房「泥棒は抽象画を描く」ローレンス・ブロック/田口俊樹訳

(14歳の少女セーラが手伝いにきて)
学校が夏休みにはいるころには、オフィスの書類はすべてきちんと整理された。そして、この娘はおれのスケジュールを完璧に把握し、歯医者に行き、離婚した妻たちに誕生日のプレゼントを送るといった、思い出したくもないようなことを知らせ、おれの行動を管理するようになった。
扶桑社「笑う犬」ディック・ロクティ/石田義彦訳

(宝石のついた高価な時計を貰って)
・・・わたしもこれで時計を持ったといういうわけだ。恋多き男の言い訳のごとく薄っぺらで、報われぬ恋人のごとくずっしりと重い。
早川書房「風の音を聞きながら」デイヴィッド・M・ピアス/佐藤耕士訳

赤い髪は長く目は熱帯の海のように、澄んだエメラルド色。肌はとても白く青みがかったスキムミルクのようだ。家の近所のバーでこんな女が隣にすわって、飲み物のチェイスをほめてくれたら、男は人生が変わろうとしているぞと思うものだ。
早川書房「夏をめざした少女」リザ・コディ/堀田静子訳

※奥村 晃作ーー1936年生まれ。歌誌「コスモス」選者。
糸満久美子ーー1945年生まれ。詩集「愛ポポロン」など多数。

なんだか 幸せ

吉永小百合さんが歌手デビュー60周年を記念して「吉永小百合 60周年記念BOX~星よりひそかに 雨よりやさしく~」CD5枚組が発売された。価格 一金 13.200円也。

私、「ちょっと見りゃ金持ち」と思われているけど「よく見りゃ貧乏」でしょ。一金 13.200円也を前に思案投げ首。クヨクヨ悩んだ挙句、今や死語となっているかもしれないけれど、私、生粋の「サユリスト」なんです。
「エイヤ!」とばかり意気揚々とCD屋さんに行き注文したらなんと「売り切れ」。どうも思案投げ首など関係ない「サユリスト」がいるみたいである。「生粋のサユリスト」なんて言ったら顰蹙をかうかもしれぬ。

しかし、美人でやさしさあふれる売り場の娘さんが、お年寄りをいたわりましょう的眼差しで、アチラに電話し、コチラに電話した結果「ありました」とニッコリ。1週間位かかるとのことで首尾よく目的達成。

届いた「吉永小百合 60周年記念BOX」の5枚のCD。収録60曲。
1 吉田正作品ヒット曲集。
2 話題曲セレクション。
3 映画主題歌コレクション。
4 吉永小百合レア・トラックス。
5 SPESIAL DESK 「心ひとつで」

それに100頁の「オールカラーブックレット」付である。CDを聴く前にそのブックレットを開くと、なんと凄い!!! 
歌を出した当時のとっても可愛い吉永小百合さんの写真が色とりどりいっぱい載っているのである。私の部屋には、彼女のカレンダーが飾ってあって、2か月ごとにめくると、また新たな彼女に出会えることになっているが、若い時の写真は全くない。
かくして、イイ歳をしている私だけど、ため息をついて一挙に「サユリスト」時代に戻ってしまった。

5枚のCDを聴いたけれど、一番のお気に入りはSPESIAL DESK「心ひとつで」。二番目のお気に入りは「吉永小百合レア・トラックス」。
この「心ひとつ」には、吉永小百合さんが「寒い朝」でデビューした当時の思い出を語り、次になんと坂本冬美が「寒い朝」を、「夢千代日記」のナレーションを吉永小百合さんが、歌を坂本冬美が歌っているのである。

私、演歌はあまり聞かないけれど、むかし昔のそのまた昔、坂本冬美がセーラー服を己野清志朗と細野晴臣が学生服を着て、「日本の人」を歌っているのをたまたまテレビで見て、口をアングリ!!!
ロックとテクノに演歌のコラボ。「そんなことってある?」・・・それがあったのである。摩訶不思議な調べにすっかり惑わされてしまった。ロックなのにシャイな己野清志朗はもともと好きな歌手だったが、私的には坂本冬美は演歌歌手を飛び越えて・・・そう、大好きとなってしまった。

その坂本冬美が吉永小百合さんと歌うなんて、想定外の想定外の出来事である。私の大好きなお二人の2本立て。「こんなことってある?」・・・それがあったんである。ナガーク生きていて良かった!!!

それにもう一つ。「安典さんへ」という朗読が収録されていた。昨年、テレビで戦没した学生たちが描いた絵画を展示している美術館「無言館」で、吉永小百合さんが、この「安典さんへ」を朗読している番組を見て胸をうたれ、この「夢旅人」2022年8月15日に掲載した「声なき声に耳をすませて」に掲載した次第である。その時の感動を、再びCDで聴くことが出来るなんて・・・。なんと幸せ!!!

二番目のお気に入りは「吉永小百合レア・トラックス」の「おばあちゃん」。そのナレーションの一節をどうぞ。
「おばあちゃん うち もうじきお嫁に行くねん うちのお婿さん ごっつうエエ人や それにナあのナ 男前やねン おばあちゃん 月給安いけど かまへん うちら若いもん 一生懸命働くわ 貧乏なんてこわいことあらへんわ・・・」
ウーン、こんな人もいたんですね。昔は・・・。

28日の日曜日、NHKBSTVの22時50分から「THE Covers 平原綾香アニバーサリーLIVE」が放映され、私の大好きな中島みゆきの「誕生」を圧倒的な歌声で熱唱。平原綾香の「誕生」になってました。スーーーゴイ!!!。
続いて23時20分から「プレミアムシアター 藤田真央ルツェルン音楽祭デビュー」でラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番ハ短調」をルツェルン祝祭管弦楽団の指揮、リッカルド・シャイーの指揮で藤田真央が弾きました。テレビ朝日で日曜日に放映される「題名のない音楽会」に度々出演するあの可愛い藤田真央が一変。時にはほほえみ、時には苦しみ、時には悲しみの表情で、ソフトにそしてダイナミックに心をのせて弾き切り、スイスにあるルツェルンコンサートホール3階までの客席全てスタンディングオベーション。拍手が鳴りやみませんでした。
私もテレビの前でスタンディングオペレーション。幸せな週末をありがとう。

ちょっと 二言

昨年子供が生まれたのは80万人。過去最低らしい。この調子でいけば2070年は、わがニッポン国の人口1億人は夢の彼方、8700万人になるとのことである。

・・・なんてことは、今さら言われなくっても、ズズズーイと前から分かっていることだが、わがニッポン国の政治屋さん・・・ン? 失礼、政治家さんは、目先のことに忙しくてほったらかしにしていたのである。
ところがわが国の岸田ソーリ、なんとハッタと目覚めて、OECDで最低の子ども関連予算を5~6兆円に倍増し、異次元の少子化対策を立てるそうである。スゲーー!!!

かくして、頭脳明晰な官僚さんたちが、子どもが生まれたら、アレもしてあげますコレもしてあげますと盛りだくさんの案を並べてきて、いいことづくし。さすがに野党も文句の付けようがない。。

だけど、少子化の最大の原因は、結婚する人が少ないからである。
結婚相談の株式会社ZWEIによると、男性の未婚率は平成17年には,25~29歳では71.4%,30~34歳でも47.1%。女性は20代女性が17年には59.0%とほぼ6割の女性が未婚、30~34歳では17年には32.0%。

国立社会保障・人口問題研究所によると、50歳までに一度も結婚しない人の割合を表した「生涯未婚率」は、1980年に男性が2・6%、女性が4・5%。
それが2020年には男性がほぼ4人に1人の25・7%、女性が16・4%にまで上昇した。

結婚した夫婦にアレコレしてあげて子供を産みやすいようにしても、結婚する人が少なければ何もならないのである。
だから、少子化対策というのは、まずは結婚する人を増やすということにつきるのではないか。結婚すれば子供が欲しくなるというのが人の常であろう。

結婚したくても出来ないのは、相手がいないということと、相手がいても給料が安いから、というのが大多数である。だけど、給料が上がるのはいつのことやら・・・と、いうことだから、そこで結婚しようかという即効性のある方法を考えればよいのである。

頭脳不明瞭な私だけれど・・・国が資金を提供するという前提で、
・市町村主催で豪華な食事付きの婚活パーテイを会費無料で常時開催し、結婚したら結婚祝金50万円。
・婚活パーテイに年4回参加した人には努力賞として10万円を与え、35歳までに特別な理由なくして結婚しない人には、独身税を年間10万円を課す。、
・結婚して公団や市営住宅など公営住宅に入居したら、3年間家賃を半額とする。
・出産費用は無料。出産祝金50万円。
・毎月3万円の買物券を3年間交付する。

ウーン、結婚した人を支援し、子育てしやすい環境を作るというのは大事なことだと分かるが、結婚しようとする人を支援する方策を講じないのは何故?

ここで、ちょっと三言。「LGBT理解増進法案」が、成立するらしい。「LGPT法案」ではなくて理解増進する法案だなんて・・・・。
どうして、「この人が好き」と云ったらいけないのか!!!

ちょっと 一言

岸田ソーリって、一見おとなしい顔をしているけれどスゴイ人なんである。あのこわもての安倍前ソーリがやりたくっても出来なかった軍備増強と敵基地攻撃能力、それに原発再稼働をすました顔で実現させたのである。

ウクライナの戦争が始まった途端、わがニッポン国も侵略に備えなければと・・・どうも北朝鮮や中国がわがニッポン国を攻めてくると岸田ソーリは恐怖に陥ったらしい。
だけど、北朝鮮や中国がわがニッポン国に軍事侵略をする大義名分なんてあるはずがない。

侵略しようとする場合、まずミサイルをニッポン国中にまき散らすだろうが、占領するためには海を越えて何万人の兵隊を送らねばならぬ。しかし、わがニッポン国には海という強力な防衛ラインを持っているのである。襲来するミサイルを100%打ち落とすのは至難の業だろうけれど、海を渡ってくる敵の輸送船は100%狙い撃ちするくらい簡単なことはない。

わがニッポン国を金正恩王国のメンバーにしようなんて、途方もない考えを北朝鮮が持つわけがない。中国もすでに経済的には固く結ばれているわがニッポン国と戦争までして乗っ取ろうなんて、ムダにしてアホなことをことをするはずがない。

ウクライナを口実に、北朝鮮や中国から侵略されるかもしれないからと、敵基地攻撃なんて神業みたいな能力を持つ軍備増強をするなんて・・・岸田ソーリって頭脳明晰にして遠謀神慮、権謀術数に富む人に違いない。政治屋、ン? 失礼、政治家の模範としなければならないであろう。

中国が台湾に武力侵略をした場合、わがニッポン国も巻き込まれるから、軍備増強をはからねばならぬとのお言葉である。
でも、中国と台湾はもともと同じ国民。親戚や友人が共にいっぱいいるのに、中国人同士で殺し合いをさせてまでして台湾を侵略するなんて信じられない。

多分、中国は台湾が独立宣言などしないように脅しをかけているに過ぎないのである。台湾は中国の一部であるという原則を傷つけづに現状維持を保ち、その内に台湾に親中国派の政権を成立させ、香港と同じように自由にふるまわせ、最後に香港と同じ運命をたどらせるという筋書きであろう。

中国の脅しに負けて軍備増強にはしるわがニッポン国を見て、中国は余計なことをと苦笑いしているに違いない。

岸田ソーリは広島生まれ。原爆の恐ろしさが身に沁みているから、G7の開催地を広島に持ってきて、G7の指導者の方々に、原爆の恐ろしさを身に沁みてもらおうと考えたのに違いない。とってもエライ!!!と思うのは当然である。

ところが、ウクライ戦争が始まって、燃料費が高騰したものだから、ここぞとばかり岸田ソーリは原発再稼働をさっさと決めてしまった。
わがニッポン国の原発がない地域の人たちも、原発がぶっ壊れても被害が及ぶ訳でないから・・・とまでは言わないけれど
「マ、しょうがないか」という雰囲気になってしまった。

原爆の燃料は原子力、原発の燃料は原子力。だから、原発はぶっ壊れたら原爆が落ちたのと同じである。
わがニッポン国は、原爆を各地に保存しているのである。

ドイツは原発廃止を決めたが、わがニッポン国は海に囲まれ風力発電、温泉に恵まれて地力発電、温暖な地となって太陽光発電と、世界から羨望の目で見られているのに、アレコレダメ理由をつけて原発しかないということになっている{

世界中で、想定外の災害に見舞われ、地球は壊れかけているというのに、わがニッポン国は災害大国であるが、どうも想定外の災害は起こらないと岸田ソーリは信じているらしい。

だから「予算は使い放題でOK、わがニッポン国の技術力を総動員させて自然エネルギーを確保せよ」などと、岸田ソーリが言う訳がない。
決して、電力会社を贔屓にしている訳ではないそうである。

ウーン、G7の広島開催の意義と原発再稼働とはどうしてもつながらない。
岸田ソーリって、一見「温厚風」に見えるけれど、「賢い」うえに「恐ろしい人」かもしれぬ。

ご機嫌いかが 6

桜の花もほころび、いまや見所となった途端、咳がコンコン、鼻水はツルツル垂れ流しとなり、おなじみの病院に行ったところ、診察室どころか別棟に連れていかれ、コロナとインフルエンザの検査をさせられる羽目になってしまった。

私、「平熱の上に5回目のワクチンもインフルエンザの予防注射しているから、普通の風邪」と抵抗したものの聞く耳をもたない。しかし結果は私の診断のとおりすべて陰性。私は、医師の素質があるやかもしれぬ。

毎年、通例のお花見の計画が3回もあったのに、コンコン&ツルツル状態だからすべてキャンセル。弱り目に祟り目とはこのことである。

3月から4月は、私にとってホトホト精一杯お疲れの月である。
なにしろ「80歳以上の合唱団」とか「80歳以上の歩こう会」とか、あれこれ他人から見たらどうでもいいような、私からみたら、どうでもいいなってとんでもないというような会にいろいろ入っているのである。
さらに加えて、自治会と老人クラブの会長もしているものだから、年度末と年度初めは行事がゾロゾロ&ゾロゾロ!!!

かくして4月15日は老人クラブの総会、16日は自治会の総会となってテンヤワンヤしているのに、85歳の「終末高齢者」となった私のアンテナは、感度不良となって、今日、15日の夢旅人の原稿なんて書けそうもない。

ということで、私の隠し球。「ハードボイルドに恋をして」。これなら書き写すだけでいいから「ご機嫌いかが 6」を掲載することにした。
そう、私にとって一番必要なのは「安らぎ」。どうぞ、皆様にも安らぎのひとときをどうぞ。

安らぎ

テレビは一般大衆にとって、電子安定剤なのかもしれない。
早川書房「殺人ウェディング・ベル」ウイリアム・L・デアンドリア/真崎義博訳

「・・・いずれにしても長くて乾いた一日だった。ここらで一日の埃をふるい落とさない?」
早川書房「暗闇にひと突き」ローレンス・ブロック/田口俊樹訳

彼女は立ち上がって、暖炉に歩いていった。もうすぐ、火やセーター、それにかわいい女の微笑みが欲しくなる季節がやってくる。
早川書房「秋のスロー・ダンス」フィリップ・リー・ウィリアムズ/坂本憲一訳

パジャマを着て室温を24度に設定し、明かりを消してベッドに入った。純真で汚れのない眠りだった。
早川書房「パームビーチ探偵物語」ローレンス・サンダース/眞崎嘉博訳

あたしは夕食と朝食を食べ、あったかいベッドでひと晩ねた。・・・それもアンダーシャツとパンティって格好で、ぐうたらしてればよかった。
早川書房「汚れた守護天使」リザ・コディ/堀内静子訳

ステレオをつけ、長椅子にすわって酒を飲み、煙草をふかした。いたって文化的な気分になった。パヴァロッティがヴェルディの《鎮魂ミサ曲》から〈われらは嘆く〉を歌う。ふんふん、とても文化的だ。つづいては、ドニゼッティの《連隊の娘》から〈おお、友よ〉の高いハ音を九回もだせるなんて信じられない。しろうとなら、化粧だんすの引き出しキンのタマをはさみでもしないかぎり、一回もだせないだろう。すこぶる快適。わが家の優雅な夕べ。
早川書房「二日酔いのバラード」ウォーレン・マーフィ/田村義進訳

私はときどき、世界で一番小さい星を食べる。それはコンペイトウという名で、どの星座にも属していない。
新潮文庫「両手いっぱいの言葉ー413のアフォリズム」寺山修司

ラジオ・ワンからは《わたしとあなたとブーという名の犬》が流れていた。カフェインとビタミン Cにノスタルジアを加味した朝食をとるのが、最近の習慣になりつつあった。
早川書房「見習い女探偵」リザ・コディ/佐々田雅子訳

マールを注ぎたし一本イングリッシュ・オパールを吸った。これで、その日、一日に別れのキスをする用意ができた。
早川書房「パームビーチ探偵物語」ローレンス・サンダース/眞崎嘉博訳

ジャッキーは、女がいつもカロリー計算をしていたわけでもなければ、仕事の昇進を気にかけていたわけでもなく、男と女が一日じゅう過ごしたいと言ったからといって男をわがままとは責めない。そんな時代の女なのだ。少なくても、たいていの情事の発端なる、過度の性の感情の発端からくる陶酔のひとときのあいだは、そんなことを考えない女なんだ。そういう女を好きなのかどうか自分でもよくわからなかったが、ふたたび降り出した雪と噛みつくような冷たい夜とドナの不在という状態のなかでは、ジャッキーの腕の中はすてきだった。彼女がまだ三十になっていなくても、中年の落ち着きに包まれているようなやすらぎを感じた。
東京創元社「影たちの叫び」エド・ゴーマン/中津悠訳