ミステリアス 2

世の中はミステリアスがいっぱい。
パーティ券のキックバックという抜群のアイデアを思いついた人も、それを再開させた人も???となるなんて・・・なんとミステリアス。
自民党が、クソミソに云われているのにーーエート、訂正、下品な言葉を使うのはよしましょう。自民党に申し訳ないーー自民党がこてんぱに云われているのに、政党支持率が野党より断固として高いなんて・・・なんとミステリアス。
以前は値上げと云っても10円単位だったが、最近は100円単位の値上げが続出しているなんて・・・なんとミステリアス。
日経平均株価が4万円台を突破したというのに、こちとらいっこうに好景気ムードにならないなんて・・・なんとミステリアス。

世な中には、うっとうしいミステリアスが満ちているけど、今日の「ハードボイルドに恋をして11」の「ミステリアス2」を読んで、憂さを払ってください。
12月1日に掲載した「ミステリアス」の「嘘」に続く第2編です。

罪と罰

勉強好きそうな若い女が、サルトルの「存在と無」をくすねていったのは、私にも、はっきりとわかった。でも、彼女がそれを読むのなら、それで罰は充分だ。
早川書房「泥棒は哲学で解決する」ローレンス・ブロック/田口俊樹訳

警察の車庫でわたしは懐どころか、手足まで痛みかねないほどの大金を払って車を引き取り・・・。
早川書房「身代金ゲーム」ハワード・エンゲル/中村保男訳

だが、おれは世界のからくりを知っている。幸福感が八点になると神様はかならず天罰をお下しになり、七点までならおとがめなし。ところが八点になると、赤ランプが点灯しサイレンが鳴り人々は窓ごしに石を投げはじめる。
早川書房「愚か者のララバイ」ウォーレン・マーフィー/田村義進訳

秘 密

これに対してループが小声でいった意味は良風美俗に反するので、ここには書きつけないでおこう。
早川書房「哀愁のストレンジャー・シティ」ロス・H・スペンサー/田中融二訳

「お嬢さん、この世の中は、自分が知っていることをすべてわたしに話してくれる人間なんかいない。それがけだものの習性なんだ」
「人生の半分を、鍵穴をのぞいて過ごしていると、人生のすばらしい面が見られるにちがいないわね」
早川書房「ゴッドウルフの行方」ロバート・B・パーカー/菊池光訳

探 偵 

私立探偵の免許をとるならぜひとも学んでおく鉄則の一つは、質問をしたときに相手が首をどう振るかよく観察することだ。ノーと言うときに縦に振り、イエスの場合に横に振る者もなかにはいる。人間は嘘をつく。これが第二の法則だ。
早川書房「秋のスローダンス」フィリップ・リー・ウィリアムズ/坂本憲一訳

「聞くところによると、君は非常にタフだそうだな」
「もちろん、そうさ、今日、ここで、サヴァンナ風ロブスターにしようか、椅子を一つ食べるだけにしておこうか、と考えていたんだ」
早川書房「レイチェル・ウォレスを探せ」ロバート・B・パーカー/菊池光訳

(ロバート・B・パーカー作の探偵スペンサーを主人公とするミステリーを読むと)
スペンサーというのは、ファースト・ネームがない分は、肉体的に取り戻そうかというタフな男で、何章かごとに、ボストンじゅうをジョキングしてまわったり、重量挙げをやったり、そのほか心臓発作かヘルニヤにでもなりそうなことを、片っ端からやってのける。私は読んでいるだけで疲れてしまった。
早川書房「泥棒は哲学で解決する」ローレンス・ブロック/田口俊樹訳

わたしが78歳まで生きながられた理由のひとつは、尻尾をまいて逃げだす時期に関する勘がよかったためである。今回も、その例外ではないように思われた。
早川書房「オールド・デック」L・A・モース/石田善彦訳

とっておきの良き父親兼有能な私立探偵風の微笑の塵をはらい、顔に貼りつけた。そして、デスクの上で両腕を組み、身を乗りだした。だが、わたしが「私立探偵になる方法」にあるとおりに力強くそして丁寧に話しかけようとしたとき、彼女はたずねた。
「本当にこの仕事をしていらっしゃるの?」
早川書房「消えた女」マイクル・Z・リユーイン/石田善彦訳

罪なき嘘は許して・・・

元安倍総理大臣のアレコレについて、官界のオエライさんたちが、忖度をただよわせながら
「記憶にありません」を連発したことがあった。

私「嘘か本当か」の二者択一しかないと思っていたが、官界のオエライさんたちは「本当のこと」を言うと、エイエイと築いてきた地位がフッ飛ぶ可能性があるし、「そんなことはありません」とウソっぽい答えをすると、世間から胡散臭い目で見られそうだから、「記憶にありません」という名言を思いついたらしい。

わがニッポン国をになう官界のオエライさんって「なんと頭が良いんだ」とすこぶる感服!!! わがニッポン国はこれにて安泰かも・・・。

むかし昔「嘘つきは泥棒のはじまり」と云われたものですが、童謡作家の富谷陽子さんが、講演会で

ホラは他人を喜ばすためにふくもの、ウソは自分のためにつくもの

と話されたことがあります。

官界のオエライさんが「記憶にありません」というようなミエミエのウソをつくのはダメですが、「ウソも方便」という言葉もあります。どうせウソをつくのなら、罪のないウソをついてくださいね。

そこで、今日の「夢旅人」の「ハードボイルドに恋をして11」は「ミステリアス」のシリーズです。最初は「嘘」。

 

「大丈夫」僕はいった。社交辞令としてのささやかな嘘だ。
二見書房「ピンク・ウォッカ・ブルース」ニール・バレット・ジュニア/飛田野裕子訳

(父のことを葬儀でほめそやすので)
「・・・なぜ飲んだくれだったと言わないのだろう。そう言ってくれれば、少なくとも父のことを言ったことになるのに、わたしたちがこれから埋葬する人が誰かがはっきり自覚できるのに、と思ったわ。ときどき母を打った、となぜ言わないのだろう。おおむね善人だったというのはいい。でも一生を通じて来る日も来る日も善人だった、瞬時たりとも悪人ではなかった、とは到底言えない人だったわ」
扶桑社「最後に笑うのは誰だ」ラリー・バインハート/工藤政司訳

(シーモンが弁護士に嘘をついているのを思い浮かべると)
あたしのためにやってくれる。もう相棒みたいなものだ。・・・あたしがシーモンのために嘘をついたこと、シーモンがあたしのために嘘をついたことを考えた。お互いのために嘘をつく人間のあいだには絆がある。
おかしいのは、シーモンが嘘をつくとみんなが信じたのに、あたしがほんとのことを言ってもめったに信じてもらえなかったことだ。
早川書房「汚れた守護天使」リザ・コディ/堀内静子訳

(葬儀で)
牧師は火葬係とともに現れた。言葉巧みでいんちき臭く、おそらく見習い期間を百科事典のセールスマンでもして過ごしたのだろう。残念ながら故人を知る光栄に浴していなかった、と牧師は言い、それを証明し始めた。
東京創元社「夜の海辺の街で」E・C・ウォード/小林祥子訳

「命をかけて誓うわ・・・あんたに嘘はつかないわ」
モレリの口の片隅がほんのわずかに吊り上がった。
「おまえならローマ法王にだって嘘をつくだろうさ」
あたしは十字を半分りかけていた。
「あたしは嘘をつくことはほとんどないわ」絶対に必要なときだけよ。それから、真実が妥当だと思えないときもだけど。
扶桑社「あたししかできない職業」ジャネット・イヴァノヴィッチ/細野遥子訳

(トップレス・クラブに行こうと誘ったため)
・・・トップレス・クラブについて一席ぶつはめになった。孤独な男たちが制限つきの環境の中で、安全に女性とある種の相互影響を受け合うところだ、とぼくは説明した。エミーは納得せず、それよりも自分の家に行きたいといった。
早川書房「破産寸前の男」ピーター・パーセルミ/齋藤数衛訳

そこで、アメリカの嘘にかかわるジョークをご紹介しましょう。

帰宅が遅い理由として「今夜も残業があって・・・」というのをひんぱんに使うと妻は疑い始める。
小さな子が母親に聞いた。「おとぎ話って、〝昔々〟で始めるものなの?」
母親はちょっと肩をすくめて言った。
「いいえ、きょうは残業があってねえ、で始まることもあるのよ」

酒場で二人の男が話している。
「この間、珍しいものをみたぜ。ウソ発見器というやつだ」
相手は吐き出すように言った。
「おれはそういう機械と結婚しているよ」