林芙美子生誕120年

北九州市立文学館で、林芙美子生誕120年記念として企画展「拝啓 林芙美子様ー芙美子への手紙ー」が開催されると共に、文学館館長の今川英子先生の連続講座「林芙美子の生涯と作品」が2回にわたって開かれ、私、イソイソと受講した次第である。

私は、北九州市立文学館「友の会」の会員である・・・てなことを云うと、いかにも文学通と思われるかもしれないが、それはうるわしき誤解である。
私、文学館館長の今川英子先生のファン。
「ウン、そうか、今川英子先生が美人だからファンになったんだ」なんて、勘ぐられては困る。

私が南丘市民センターで働いていた18年ほど前、柄にもなく「文学講座」をやろうと思い立ったものの、何をやっていいのかまったく「?」。
そこで文学館に行き、面識はなかったけれど館長の今川英子先生に相談したところ、なんと快く承諾して頂き、表向きは「企画 森荘八」、本当は「企画 今川英子先生」で、「学んで楽しむ文学講座~松本清張生誕100年を記念して故郷の文学を辿りましょう」という講座が誕生した。
講座では松本清張のほかに森鴎外・火野葦兵・杉田久女などを取り上げ、毎月1回今川先生をはじめ7人の講師の方々から、毎月1回8ケ月にわたり開催することが出来た。。

私は司会をしただけだけど、市民センターホールいっぱい120名のお客さんがおしよせ大成功。すこぶる好評を得て、私、鼻タカダカ!!!
以来、私は今川英子先生の絶対的なファンとなり、「友の会」の中では文学通歴ゼロだが、ファン歴は誰にもヒケは取らないと自負している。

森光子主演で1961年(昭和36年)芸術座で初演された「放浪記」は、2017回にわたり演じられて有名になっているが、林芙美子の原作を読んでいる人は少ないに違いない。恥ずかしながら、私もこのお芝居をテレビで見ただけだが、すっかり「放浪記」を読んだつもりになっていた。
この小説は、昭和5年に出版されたもので、ひどい貧乏にもめげず、したたかに生き抜く女性を描いた自伝的小説でベストセラーとなっている。

特別展の会場には、北九州市立文学館所蔵の川端康成、井伏鱒二、宇野千代など同時代の作家をはじめ、ジャーナリスト、編集者67人が芙美子に書いた手紙73通と共に、林芙美子の生涯と作品、当時の社会情勢などが分かりやすく展示されている。

私、芝居「放浪記」だけしか知らないので、彼女は孤高の人とばかり思いこんでいたのに、交流した文壇の著名な人の多いことにビックリ。川端康成の毛筆で書かれた書簡、素晴らしかった。ホレボレ・・・。

林芙美子が随筆の中で「作家の手紙と云うものは、なんとなくうるおいがあって魅力があるのは、感情生活が豊かで、子供と同じように自分の生活をあまり隠さないからでしょう」と述べているように、とっても面白く読ませてもらいました。

今川先生の講座、先生の語り口は、居眠りを誘うように心地よいけれど、お話の内容は面白くって引き込まれ、アッという間にTHE END。とってもお上手。これ、お世辞ではありません。念のため・・・。

先生の講座の1回目は林芙美子の人生の行程をたどり、2回目は林芙美子の「浮雲」など5作品の「あらすじ」と「鑑賞」。この「鑑賞」は今川英子先生の作品に対する感想を綴ったもので、作品への愛情がにじみ出ていて素敵でした。それと「放浪記」など7作品に書かれた林芙美子の「あとがき」。これは林芙美子の作品に対するあけっぴろげな思いが感じられて感心しました。

私は、今川先生の作品の「あらすじ」を聞いて、まるで作品を読んだ気持ちになってしまった。
そうそうたる文学者は上から目線だけど、林芙美子は下から目線で社会の底辺でうごめいている人たちを描いているとの話に納得。多くの人たちとっては身につまされる作品で、愛読者が多かったのは当然と思える。

しかし、最近に出された中央公論社から出版された柚木麻子の本に「林芙美子は食と経済の人」と書いてあるらしい。私にはまったく「意味不明」だが、若い人の感性には、とてもついていけない。

ウーン、私、もうトシ!!! 仕方ないか。

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