突然、ポケット一杯の夢を果たすこともなく命を絶たれた方々の無念な思い・・・。
そして、すべてをなくして呆然と佇む方々の底知れぬ絶望感・・・。
云うべき言葉もありません。
あのひと 吉原 幸子
あのひとは 生きていました
あのひとは そこにいました
ついきのう ついきのうまで
そこにいて 笑っていました
あのひとは 生きていました
さばのみそ煮 かぼちゃの煮つけ
おいしいね おいしいねと言って
そこにいて 食べていました
※ 吉原幸子 1932年~2002年。第1詩集「幼年連禧」で室生犀星受賞。他に 高見順賞、萩原朔太郎賞など受賞。詩の朗読とジャズのセッションなど、他の分野とのコラボレーションを試みた。