秋がいっぱい

 昔むかしその昔、人生にはまだまだ先があったあの頃、私はピチピチプリンと女性がはじけて輝いていた夏が大好きだったけれど、もう、たそがれ時を迎えて、夏からテイクオフしてしまった。
 春は眩しくきらめいて華やかだけれど、もう主役にはなれず傍観者。冬は、雪にはしゃぐ気分も消えうせて、身も心も冬ごもり。
 だから、好きなのは秋。
 我がニッポンのオエライさんのそのまたオエライさんであった前ソーリは『一葉落ちて天下の秋を知る』とシミジミ悲哀を感じているだろうし、つい心にもないこと・・ン?訂正、心にあることをしゃべってクビを取られた中山ナニガシ大臣は『物言えば唇寒く秋の風』と、フイにした大臣の座を惜しんでいるだろうけれど、私にとって『一日千秋』の想いで待った秋である。
 だって、『天高く馬肥える秋』でしょ、『秋の味覚』のとうもろこしや焼き芋や栗に柿に・・・以下紙面の都合により略・・・などをパクパク食べて、『秋茄子は嫁に食わすな』とは思っていても口には出さずに、秋茄子や秋刀魚をおいしくいただき・・・ホント、メタボなんてあっち向いてポイ気分である。
 それに、秋といえば『紅葉狩』である。そこで、ひよっとして素敵美人に巡り合い、『秋の日はつるべ落とし』だから、『中秋の名月』などめでようと、手に手を取って夜の部に誘ってと・・・下心付で出かけなければならぬ。
 ても『女心と秋の空』と言うから、あっち向いてポイされるかもしれないけれど、『秋の夜と女の心は七度変わる』というから、マ、いいか気分でヤッパ紅葉狩りには行った方が良いであろう。
 そして『芸術の秋』。今、北九州市立美術館で「中山忠彦」展があっているので、これまた見に行かねばならぬ。
 と、ある女性に話したら「それって永遠の女神展というキャッチフレーズのある展覧会でしょ。そう八さん、目の保養に行くんだ」と言う。それは大いなる誤解である。
 私は、美人愛好者ではなくって美術愛好者である。痴性と狂養・・・ア、これ変換間違い・・知性と教養を誇る私は、純粋な美的鑑賞眼で華麗に描かれた女性像を見に行くだけであって・・・。
 「ウフフ」って何で笑うの? ホント、失礼なんだから・・・。
 それから『読書の秋』。でも、机の横にはツン読された単行本が8冊もある。おまけに毎月取っている「ミステリマガジン」も7月号から読んでいない。もう、本を見ただけでゲップが出そうだから、『読書の秋』なんてあっち向いてポイしたいけれど、知性と教養を誇る私が、そんなことをしたら、
『秋深し、隣は何をする人ぞ』と疑惑の眼差しで見られるかも知れぬ。
 ホント、『悩み深き秋』なんだなァ・・・。

あなたとは違うんです

 我がニッポン国のソーリ大臣が辞めた。
 丁度、臨時ニュースが流れた時、TVを見ていたので、その後行われた記者会見を見ることが出来たけれど、さすが我がニッポン国の頭脳明晰なオエライさんのそのまたオエライさんだけあって、云うことが違う。
 ソーリを辞める理由として「みんな、あなたが悪いのよ」的見解を堂々と披露、最後に勇気ある記者がイチャモンをつけると
「あなたとは違うんです」と一刀両断。スゴイ!!!
 どうも、政治の世界は「みんな、あなたが悪いのよ」と「あなたとは違うんです」というこの二言で、コトを終わらせることが出来るらしい。なんと素敵な世界!!!
 私などは「みんな私が悪いのデス」と「あなたは私と違ってエライ」という言葉を乱発しているけれど、なんたって、我がニッポン国の頭脳明晰なオエライさんのそのまたオエライさんが云っているのだから、今後は、これを見習って
「みんな、あなたが悪いのよ」と「あなたとは違うんです」という発言に改めることにしよう。
 この二言があれば、この乱世、スイスイと渡れそうな気がする。ホント、我がニッポン国の頭脳明晰なオエライさんのそのまたオエライさんに感謝しなければならない。
 エ、何? 「我がニッポン国の頭脳明晰なオエライさんのオエライサンだから云える台詞だあって、畏れ多くもそう八のようなフツ-の人は、云っちゃあダメ」だって・・・。
 フーン、そうなんだ。だけど、アメリカには、こんなジョークがあるんだけど・・・。

 野党議員が首相のことを痛罵した。
「まるでロバのように頭が鈍く、ブタのように貪欲じゃないか」
 首相はかんかんになって発言の撤回を求めた。野党議員はあっさり承知した。
「撤回します。あんな表現をしては、ロバやブタに申し訳ない」

  ※ ジョークは井坂清「ジョークは人生のスパイス」より

シッチャカ  メッチャカ戦って・・・

 オリンピックが終わった。と、云っても、私、天才的な運動バカときているから、スポーツはやるのは勿論、見るのも得意ではない。
 第一、自慢じゃないけれど、腕力のないことにかけては、誰にもひけを取らない。子供の時、懸垂などしても、デレートとぶら下がったままである。どうも、私はデレケート・・・ン?訂正、デリケートに出来ているので、私の身体は、地球の磁力に敏感に反応しているに違いない。
 走れば、いつも後ろから数えて1位。いつも勝ちを譲っているから、せめて「謙譲の美徳賞」くらい、出してくれてもいいと思うけれど、貰うのは哀れみの眼差くらいである。
 ゴルフだって、やったことはあるが、どだいあんな小さな玉を打てる訳がない。地球や大気をブッ叩くか、たまたま玉に当たってもチョロばかり。
 それなら、野球は、ボールが大きいから当たるだろうと思われるかもしれないが、その玉が飛んでくるではないか。止まっている玉が打てないのに、飛んでくる玉を打つなんて、言語道断である。打てる訳がない。 
 そういう訳で、スポーツは見るのもイヤ。だけど、TVで見る番組が一つだけある。それは、我が愛するジャイアンツが勝っている時だけである。何故か同点になったら、腕が自動的に動いてスイッチを切ってしまうので、自慢じゃないが、我が愛するジャアインツが負けた試合を見たことがない。いつも負け知らず「GoGo GIANTS」である。
 でも、8月中旬から、世間はオリンピック一色。いくら、スポーツ大嫌いと云っても、世間の話題についていかないと
「ア、そう八さん、ボケ気味」と云われそうだから、TVのオリンピック番組は見なかったけれど、ニュースで勝った負けたと報じてくれるので、非国民扱いされずになんとか2週間を過ごすことが出来た。
 でも、ニュースを見ていて、負けた選手が
「くやしいーーーー」と、号泣するならともかく
「楽しんで・・・ウンヌン」という一見負けてサバサバ風のコメントを聞くと、負け惜しみで云っているのかもしれないが、
「オリンピックって、楽しんでやるものじゃないでしょ」と云いたくなってしまう。
「死ぬ気になってやったけれど・・・」てなことを、云わないことには、その選手の後には、ウン千人の出れずに悔し涙を流した選手がルイルイといるのだから、その人たちの思いを踏みにじってしまうような気がする。
 中国のように、国が威信を賭けて、シッチャカメッチャカ主催する時代ではないような気がするけれど、選手は、負けてモトモト精神ではなく、個人の威信を賭けてシッチャカメッチャカ精神で戦って欲しい気がする。
 エ、何? 「運動バカのそう八がそんなエラソウなこと、云っていいの」って・・・。
 ウーン、だって、でもねェ・・・・。

殺した男

殺した男   トーマス・ハーディ

もし、どこか古い飲み屋ででも
彼と俺と出合っていたなら、きっと
同じテーブルを挟んで座り、一緒に
のどを潤しただろう、何杯も!
ところが、歩兵として戦場に送られ、
彼と俺と、にらみ合うことになった。
お互いに狙いを定めて、鉄砲を撃ち、
俺のほうが彼を、その場で殺した。
理由は、彼が敵だったからだ。
敵だったから、俺は彼を撃ち殺した。
それはその通りで、こっちにとって
敵に違いなかった、当然のことーーだが
そもそも入隊したのはひょんなことから、
俺も、たぶん彼もそうで、失業して次の
職が見つからず、家財道具を売り払って、
別にそれ以上、深いわけはなかった。

まったく奇妙なものだ、戦争というのは。
飲み屋でもし会ったら、喜んで何杯も
おごったり、金だって貸してやるような
そんな相手を、撃ち殺すのだから

訳  アーサー・ビナード(詩人)

暑くて熱くってアツーーイ!!!

 夏、真っ盛り。暑くって熱くってアツーーイ!!!
 『心頭滅却すれば火もまた涼し』と云っても、私、瞑想よりも迷想に耽るのが得意。だから無念無想の境地などなれっこないし、頭に氷枕を乗せて街を歩く訳にもいかないし・・・ウーン、やっぱり暑くって熱くってアツーーイ!!!
 街を颯爽と歩く見えそうで見えない超ミニの女の子や、ささやかな布でピチピチプリンの身体を覆った女の子を見ると、そりゃ、そちら様は涼しいでしょうけれど、こちら様のH心はカッカと燃えて、暑くって熱くってアツーーイ!!!
 今度届いた年金通知書を見たら「長寿医療保険」なる欄が設けられてあって、私はまだ該当しないから「0円」表示だけれど、その内「取りますわよ」というヤル気マンマンの通知書に変貌。
 長寿というのは、長生きしておめでとうと言う意味でしょ。だから、お祝いの品を差し上げますと云うのならともかく、逆に保険を差し引きますというのとは、どだいニュアンスが違う!!! 
 言葉遣いに気をつけろってんだ、とアッタマにきて暑くって熱くってアツーーイ!!!
 だから「後期高齢者医療保険」なんてオドロオドロしい名前や「長寿医療保険」なんてトンチンカンな名前でなくって、素直に「年長者医療費一部負担金」とでもすればいいでしょ。
 私、我が国のオエライさんは博学多才の御方と思っていたけれど、ひよっとしたら浅学非才の御方の間違い? と、思ったら我が国の将来が心配になって、暑くって熱くってアツーーイ!!!
 よく考えたら、私、就職して40余年、若い時は助け合いの精神でいこうと云われて、あまり大病にも罹らず、せっせと健康保険料をウン千万円納めてきたのに・・・ああそれなのに、助け合われる時になったら邪魔者扱いするって、これって、何?
「私のかかった治療費は全額払うから、支払った健康保険料返せ!!!」と叫びたい。でも博学多才の御方から「アホか!」と云われるのならともかく、浅学非才のオエライさんから云われると思うと悲憤慷慨・・・ゼッタイ暑くって熱くってアツーーイ!!!
 はるか宇宙の彼方で地球をウオッチングしているのナンジャモンジャ星雲のチチンプイプイ星人が、地球という星が『暑くって熱くってアツーーイ』のは、ヒト科の生物のなせる技だと断言し、この星に棲息している他の生物は文句も言わず黙って我慢しているのだから、
「ヒト科の生物も、自業自得と思って文句を言うな」と云っているらしいけれど、やっぱり暑くって熱くってアツーーイ !!!
 暑くって熱くってアツーーイから、このコラムで『暑くって熱くってアツーーイ』と悲憤慷慨したら暑さ半減するかと思ったけれど、やっぱ暑くって熱くってアツーーイ!!!
 トホホ・・・残念。