世に怖いものは「地震・雷・火事・ナントカ‥‥ナントカは賞味期限切れになっているので割愛‥‥」だそうである。
東京に転勤して、仕事中に震度3の地震に初めて遭遇した時のことである。私はビックリ仰天。机にしがみ付いたところ、周りの東京人は平気でソシラヌ顔をして仕事をしているではないか。
なにしろ私の住んでいた北九州では、身体に感じるほどの地震はあまりない。なんとまあ、東京人は肝っ玉が太いと感心したものだったが、よく聞くと、この位の地震なんてしょ中だという。どうも、東京人は、震度3位の地震には不感症になっているらしい。
以来、ジタバタしたいけれど、ヅブトイ九州人が、センサイ東京人に負けては恥なので、私も地震不感症になることにした。かくして、A型にして体制順応型の私は、たちまちにして震度3位の地震にはびくともしないようになったのである。
それに大地震とか雷や火事なんぞは、私の周りでは起きないと信じているので、私にとって恐ろしいものは「地震雷火事なんとか」ではなくって「花粉かみさんハゲなんとか」になっていたのである。
ところがでる。3月21日11時前、こたつに入ってノホホンとTVを見ていたら「ドン」と地響きがして、家がゆれだした。
「アレッ、地震?」と、地震不感症の私は平気の平左、余裕しゃくしゃく。ところが1度揺れたら収まるはずの地震が止まらずに、次第に大きくなってきて
「ワーッツ、地震!!!」とあたふた。立ち上がろうとしたら、酔ってもいないのにフラフラする。
「ア、ア、ア、アッ‥‥地震ダア!!!!」と絶句。2階建ての我が家はギシギシ音を立て、一瞬、ブッ壊れるのではないかと気がする。
ホント、「地震雷火事‥‥なんて、ちっとも怖くなんかないよ」などと、オオソレタことは口が裂けても言ってはならない。どうもバチがあたったような気がする。
かくの如く、私は驚天動地したものの、我が家は泰然自若。物が落ちてくることもなく治まってしまった。どうも主人公が頼りないので、家がその分踏ん張ってくれたらしい。
しかし、地震が治まって、すぐNHKにチャンネルを変えたら、もう画面が切り替わってアナウンサーが「今、地震が発生しました。津波に用心してください」と言っている。
私が「ア、ア、ア、アッ‥‥地震ダア!!!!」と叫んでいる間に、NHKは
「スーパーを流す準備をして局内と街頭のTVが収録したテープを取り出し北部九州の地図に各地の震度と津波の予想地帯を入力しアンウンサーをカメラの前に立たせてハイスタート」とやっていたのである。
こんな時だから、アナウンサーもネクタイの結び目もほどけ、髪など振り乱だし息をきらしてアナウンスしているのかと思ったら、さすがに天下のNHKである。一向に動じた風ではない。
ホント感心した。地震が起こらないと思われていた地方のTV局が、一瞬にしてリハーサルなしで、ブッツケ本番をこれだけ瞬時にしてやれるなんて、凄いことである。
これからは『皆さまの(お金をポケットに入れる)NHK』となどと言ってはならない。
『皆様のNHK』と括弧抜きで言わないといけないであろう。
本物の地震に遭遇して、初めてTVやラジオの威力を知った次第であるが、おかげで、多くの友人知人からお見舞いの電話やメール、お手紙を頂いた。
私の家の被害が0だったので、ノホホンとしていたら、皆さんの方から心配していただいたようである。
とってもうれしくありがたく、改めてお礼を申し上げる次第です。もう一度、どうもありがとう。