素敵に百歳

 我が岡原家一族はいとこがいっぱい。なにしろ父の兄弟は13人もいる。その内、11番目のみゆき叔母さんは100歳で健在。かくして、叔父叔母の子は総数31人。その内26人は、皆、いいかげん年寄りであるけれど、「岡原家いとこ会」を結成して、毎年打ち揃って旅行などに行き、年寄りなにするものぞと、元気を振りまいている。
 と、思っていたが、世間はそう甘くない。我がニッポンのク-ルにして頭脳明晰なるオエライさんが、年寄りは年寄りたる自覚症状が足りないと怒り狂って、75歳以上のお年寄りは「後期高齢者」という呼び名をつけてしまった。ドキッ!!!
 どうも、65歳以上は「前期高齢者」、70歳以上は「中期高齢者」、80歳以上は「末期高齢者」、85歳以上は「終末高齢者」と呼ぶことにしているらしい。
 そして、ここだけの話だけれど「前期高齢者には、まあまあの薬」を、「中期高齢者には、ほどほどの薬」を、「後期高齢者には、いいかげんな薬」を、「末期高齢者には、どうでもいい薬」を、「終末高齢者には、名前だけの薬」を投薬させ、膨大する治療費を抑えるために
「延命治療なんて問題外、短命治療に徹せよ」と激を飛ばすことにしているに違いない。
 しかし、我が「岡原家いとこ会」のメンバーは、いずれかの高齢者レベルに所属するけれど、なんたって、百歳の叔母さんがいる。それにあやかって、ニッポンのオエライさんに悔し涙を出させようと
「百歳万歳、皆も百歳」をモットーにすることにした。
 と、云う訳で、今年は熊本県甲佐町に住む百歳になったみゆき叔母さんの祝賀会をすることになった。叔母は長男の中嶋敬介さんと一緒に暮らしていて、足は弱って車椅子に乗っているものの「見たり聞いたり話したり」と、何でも平気。
 今年は、さいたま市、北九州市、福岡市それから熊本県下の4市から、いとこ21名が熊本駅に集合。
 一同車5台に分乗して叔母さんの家に行き、笑顔でしわくちゃの叔母さんに抱きついたり、手を握ったりして、百歳のエネルギーのおこぼれを頂戴する。
 それから、車で「かみましき阿蘇観光サザンルート」を通り、150年前に作られた日本最大級の石造りアーチ式水道橋「通潤橋」に行き、壮大な放水を見て近くにある「通潤山荘」に到着。
 ゆっくり温泉に入って、それから盛大に祝賀会。漢詩をたしなむ下山八州夫さんが『百歳万歳』と題して漢詩を詠み、それを奥さんの書道家・公子さんが条幅に筆を振るい、掛け軸にしてプレゼント。

百歳万歳

亀齢鶴算興天長
百福千祥萬壽觴
一談一笑開盛宴
岡原眷属有輝光

 そして、いとこの若手を代表して65歳の大村紀代子さんが、にこにこ顔の叔母さんに花束を渡すと
「ありがとう」と云ったきり涙で顔をぬらし、後は言葉にならない。そして、みんなで「ふるさと」を歌うと、叔母さんも一緒に歌って、又もや涙、涙。
 笑顔も素敵、涙も素敵。とっても素敵なお年寄りぶり、おばあちゃんぶりである。けっして素敵な高齢者ではない。
 フンだ!!! 我がニッポンの頭脳明晰のオエライさんなんて
「クソくらえ!!!」
 エ? 我が岡原家はそんな下品な言葉遣いはしないって・・・。ウーン、そうか、反省、反省。それなら
「クソくらってくださいませ」
 ネ、これならいいでしょ。

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