三頭山~ハナは流れる

 1996年11月6日の目黒ハイキングクラブ(MHC)例会が終わって帰ろうとした時、堀川さんが「三頭山に行こうよ」と云ってきた。私は、女性から誘われると何故か知らねど「ウン」と言う習性がある。それも堀川さんからの誘いである。見境もなく「ウンウンのウン」と云ってしまった。
 ところが、帰って会報「ほうろう」を見るとグレードⅢとある。私は、四捨五入すればオジーサンにあるオジサンなので、グレードⅢとなると「ン、大丈夫?」というところであるが、リーダーが高山さん、メンバーが鈴元さんに堀川さんである。MHCの誇る超弩級の高山さん、鈴元さんにサンドイッチされての山行なれば、上役下役に挟まれてのサンドイッチとはエライ違いである。「マ、いいか」ということにした。
 ところがである。前日の土曜日、何故か「クシャン」と風邪を引いてしまった。ヤバーイという訳でクスリを飲み寝たところ、幸いにも下着がビッショリなる位、汗をかいた。それで、これは良くなった証拠だと、翌朝「エイ ヤ!」とささやかに気合をかけ、山行に参加した次第である。
 山行のコースを、西原峠経由から都民の森経由に変更したため、新宿駅6時集合を6時半に変更。前夜、下着を着替えたりして睡眠大不足の身にとっては30分のズレはありがたい。
 メンバーは4人。時間通り揃って電車に乗る。自称「MHCきってのイイ男」3人に囲まれて、堀川さん幸せいっぱい・・・ですよね?
 JR武蔵小山駅で降り、バスに乗り換える。駅が素敵に変身してリック姿が似合わない。なにやら、奥多摩の山のベース・ステシーョンでなくなったようで寂しくもある。
 数馬でバスを乗り換え都民の森で降り9時40分出発。堀川さんがトップ。かなりいいピッチで都民の森を抜ける。都民の森はきれいに整備されて、山を歩いているという雰囲気ではない。公園の散策という感じでステキである。カラマツの梢が秋のやわらかな陽をあびてきらめく。これぞ、白秋の詩の世界である。

  からまつの林を過ぎて        からまつをしみじみと見き
  からまつはさびしかりけり      たびゆくはさびしかりけり

  からまつの林を出でて        からまつの林に入りぬ
  からまつの林に入りて        また細く道はつづけり

 しかし、詩的気分にひたるのはいいが、昨夜良くなったと思った風邪がカムバックしてきたらしく、ハナミズが出始めズルズル(これはハナミズをすすり上げる音)というバックミュージックが流れ始める。私は、それにメゲずティシュでハナをかみながらカラマツの林を見上げるものの、どうも詩的気分とハナミズは両立しないみたいである。
 大滝の橋を通り抜けあとはひたすら三頭山へ。しかし、だんだん足が重くなってキャラバンシューズがスチールシューズに変貌したようでエンヤコラと歩く。でも、堀川さんは自称「MHCきってのイイ男」3人に囲まれて元気ハツラツ。地図を勉強しながら歩く。
 分かれ道で、そこには「三頭山⇒」と立派な道標があるけれど、彼女は気が付かずに地図と磁石に首っ引き。しばし思案投げ首となるが、我ら3人はニヤニヤ笑うのみで何も言わない。ややあって、彼女が「こっち!」と誇らしげに言う。ピンポンアタリ!
 そして鈴元さんがニコニコしながら「ウン、僕もコッチの方が好き」という。モノは云いようである。ホント、鈴元さんはやさしい。私も、なんだか楽しくなってズルズル・エンヤコラをしばし忘れる。
 ブナの原生林を抜ける。原生林を歩くと、心、休める想いはするものの、ハナミズは止まらない。かくして「もうすぐ頂上」にウン10回となく騙されながらも、11時30分ヤット頂上。バンザイ! シアワセ! 
 ここまでのミニティシュ使用量3個。
 下山はツネ泣き坂を抜け、ヌカサス山からイヨ山経由で奥多摩湖に抜けるコースを取る。今度は、重い靴を持ち上げずに重い靴に引きずられて下りればいいのだからラクチンと思ったら、これが大誤算。ツネ泣き坂は、アット驚くような急坂である。途端に、ハナミズのズルズルに呼応して私の足もズルズルと2m位滑り落ちる。
 ヤバーイ! そうなると、ハナなどカミながら優雅に下りる訳にはいかない。両手でバランスを取りながら下りねばならぬ。
 しかし、ハナミズは容赦なくヅルヅル流れる。大体、私のハナの下は長いと思っていたのに、何故かハナミズは口元に直行する。ハナが詰まっているので、必然的に口が開いているため、ハナミズは自動的に口に流れ込む。ウーン、なんとショッパイ!
 懐かしのハナタレ小僧の再現である・・・なんて感慨に耽っている訳にはいかない。ホント、真面目なハナシ、鼻ズル、足ズルの恐怖におののいた私に、大いなる同情を捧げてもらいたいものである。そして、ツネ坂に
「この坂は、別名モリ泣き坂とも言い、MHCのモリソーハチ氏がズルズル流れるハナミズが地面に落ちないよう、身を犠牲にして飲み込み、都民の貴重な水資源である奥多摩の汚染を防止した坂である」という案内板を作って貰いたい位である。
 このイマイマシイ坂を抜け必死でイヨ坂を超えると奥多摩湖。ドラム缶橋を渡って小河内神社前のバス停へ。
 ヤレヤレ! もう、死にそう!
 ところで、いつもゴミは家に持ち帰るのだけれど、腰にブラ下げたビニール袋一杯のハナミズまみれのティシュ、ここだけの内緒の話だけれど、奥多摩湖駅のゴミ箱に捨てました。だって、いくらなんでも品がないでしょ。ハナミズまみれのティシュ、腰にブラ下げて電車に乗るなんて!
 帰って熱を計ってみたら、なんと37度4分。バタンキュウと寝る。かくしてミニティシュの使用料8個のハナミズまみれの山行は無事終了。お疲れさま!

1996年12月 記

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