やっぱりキョンキョン

九州も6月4日に梅雨入り。

私、夏も冬も大嫌いだけれど、梅雨も大嫌いである。傘をさしていても、靴とズボンの裾はグシャグシャ。気持ち悪いったらありゃしない。

土砂降りの国道沿いを歩くとき 苦笑の似合う男と思う    俵万智

とんでもない、私、苦笑どころか、苦虫を噛み潰したような顔をして歩いている。
だから、雨の日は外出などしなければ良いのである。予定が入っている時は、言語明瞭意味不明な理由をアレコレ言って逃げることにしている。

でも、雨が大嫌いと言っても、家にいてシトシトと降る雨を見るのは大好きである。アタフタと忙しい日々を送っていると、苛立った気持ちがシーンと静まり、なんだか心が洗われて癒された気分になる。そう、スローバラードなジャズを聴きながら、ボンヤリと窓越しに降る雨を見ていると、ホンワカと幸せ気分。

梅雨のなると、いつも「Rain Songs」という2枚組のCDを聴く。大滝詠一や稲垣潤一に渡辺美里など雨をテーマにした楽曲が30曲あるが、その中で一番好きなのは、大好きな小泉今日子の「優しい雨」。この楽曲の冒頭の歌詞は

心の隙間に 優しい雨が降る
疲れた背中を そっと湿らせてく

むかし昔のそのまた昔、ヘンリイ・スレッサー 作の「怪盗ルビイ・マーチンスン」を映画化した「怪盗ルビイ」を見に行ったことがある。
私の大好きな和田誠が監督したとあって、胸弾ませて見に行った訳だが、それまでアイドルとばかり思っていた小泉今日子が主役。

なんと「キョンキョン」を脱皮して、摩訶不思議な魅力を持つキュートな女優になっていたのである。魅せられてしまった私、当時は中年のおじさんだったが、彼女はアイドルじゃないと言い訳してファンになってしまった。

以来、彼女は、時代に応じて華麗にときめいて変身し映画にドラマに大活躍。今や、おばさん化しても、そのときめきを失わず存在感がいっぱいで「歌手」ではなく「元歌手」になってしまったと思っていた位である。

ところが、6月11日にNHKBSテレビで「小泉今日子40周年スペシャル」が放映されたのである。75分のスタジオライブでヒット曲ばかり9曲。私の一番好きな「丘を越えて」はなかったけれど、懐かしの「怪盗ルビー」に「優しい雨」も歌い、私、彼女を見つけたあの時代に戻った気がした。

彼女、56歳。黒いロングドレスに黒のパンツ。黒のサンダルに黒の大きなブローチ。黒一色に纏めたお洒落でシンプルな装いは、とってもよく似合ってうっとり!!!
さすが「キョンキョン」。ウーン、いまだに「キョンキョン」の輝きを失わずにいるなんて・・・。

梅雨の晴れ間の素敵な出来事でした。

愛する人のために・・・

季節はまだ春なのに、気温は夏模様。25度以上の日が続出して、6月なのに夏日と云われても「?」
かくなる上は、夏日は25度以上ではなく30度以上に、真夏日は30度から35度以上、猛暑日は35度から40度以上に目出度く格上げすべきであろう。これなら、季節感にピッタリの温度となるに違いない。

ロシアがウクライナの侵攻を始めた頃、テレビで或るコメンテーターが
「ウクライナが勝てるはずがない。国民の命が一番大切だから、早めに降参した方がいい。前の大戦の時、日本だって原爆を落とされる前に降参していたら、多くの命が助かったのに・・・」と話していた。
それは正論かもれぬ。しかし、ミステリイ作家のパーネル・ホールが「依頼人がほしい」の中で言っているように

「正論だ。ここが、わが妻の大きな問題のひとつだ。彼女は、頻繁に正論をはく」

世の中、とかくままならぬものだから、正論を吐かれても出来ないことが多いのである。正論は理想であり、現実とかけ離れた正論は始末に負えない。

ウクライナは侵略されている国である。そんなウクライナの人にとって「死んでは元も子もないので早く降参したら・・・」なんて、こんなに失礼な話はないであろう。自分の住んでいる国が乗っとられるなんて・・・こんな理不尽なことが許されるなんてあってはならないのである。

「勝てば官軍、負ければ賊軍」なんてことは言語道断と、ウクライナの人達や世界の人達も思っているのである。
まして、街をぶっ壊し、みさかいもなく銃弾を子供や市民に浴びさせるなんて・・・許せない!!! 最後まで絶対に立ち向かう、と思うのが人間の常であろう。

そう、茨木のり子の詩「血」のように、血を流してはいけない、でも愛する身近なひとのためにならと・・・。 

 

   血      茨木のり子

  イラクの歌手がうたっていた
  熱烈に腰をひねって
  サダムにこの血を捧げよう
  サダムにこの命を捧げよう と
  聞きなれた歌

  四十五年前のわたしたちも歌ってた
  ドイツのこどもたちも歌ってた
  指導者の名を冠し
  血を捧げようなんて歌うときは
  ろくなことはない
  血はじぶんじしんのために使い切るもの
  敢えて捧げたいんなら
  もっとも愛する身近なひとのためにこそ

嗚呼 沖縄

今日は、沖縄復帰50年。
国土面積0,6%に全国基地の約70%がある沖縄。「基地のない平和な島」を願う沖縄。もう50年もたっているのに・・・。

朝日新聞の5月13日版に世論調査の結果が掲載されていました。
その中で沖縄に関わる主な項目をご紹介します。
・沖縄の米軍基地は日本にとって必要?
必要 69%  不要 26%
・普天間飛行場の辺野古への移転は?
賛成 33%  反対 54%
・軟弱地盤問題の国の対応は?
移転賛成の人ー納得できる  69%
移転反対の人ー納得できない 95%
・基地の一部を他地区に移すことは?
賛成 63%  反対 27%

沖縄タイムス&琉球朝日放送が合同で実施した世論調査も掲載されてました。
・復帰当時に思っていたような姿になった?
なっている   55%
なっていない  37%
・沖縄戦の体験は引き継がれている?
引き継がれている  42%
そうは思わない   52%

2020年の沖縄全戦没者追悼式で沖縄県立首里高等学校3年の甲良朱香音さんが
「あなたがあの時」という詩を朗読しました。とっても長い詩ですが、沖縄の人々の想いをくんで読んでください。

あなたがあの時

まだ昼間だというのに あまりにも暗い
少し湿った空気を感じながら 私はあの時を想像する

あなたがまだ一人で歩けなかったあの時 あなたの兄は人を殺すことを習った
あなたの姉は学校へ行けなくなった

あなたが走れるようになったあの時 あなたが駆け回るはずだった野原は
真っ赤っか 友だちなんて誰もいない

あなたが青春を奪われたあの時 あなたはもうボロボロ
家族もいない 食べ物もない ただ真っ暗なこの壕の中で
あなたの見た光は、幻となって消えた。

「はい、ではつけていいですよ」 一つ、また一つ光が増えていく
照らされたその場所は もう真っ暗ではないというのに
あまりにも暗い 体中にじんわりとかく汗を感じながら
私はあの時を想像する

あなたが声を上げて泣かなかったあの時
あなたの母はあなたを殺さずに済んだ
あなたは生き延びた

あなたが少女に白旗を持たせたあの時
彼女は真っ直ぐに旗を掲げた
少女は助かった

ありがとう

あなたがあの時
あの人を助けてくれたおかげで
私は今 ここにいる

あなたがあの時
前を見続けてくれたおかげで
この島は今 ここにある

あなたがあの時 勇気を振り絞って語ってくれたおかげで
私たちは 知った 永遠に解かれることのない戦争の呪いを
決して失われてはいけない平和の尊さを

ありがとう

「頭、気をつけてね」 外の光が私を包む
真っ暗闇のあの中で あなたが見つめた希望の光
私は消さない 消させない 梅雨晴れの午後の光を感じながら
私は平和な世界を創造する

あなたがあの時 私を見つめたまっすぐな視線
未来に向けた穏やかな横顔を 私は忘れない
平和を求める仲間として

ゴールデンウイークをどうぞ

5月。10連休のゴールデンウイークがスタート。なんと素敵!!!

とっても年寄り私などは365連休だろうから、ゴールデンウイークは関係なかろうと思われるかもしれませんが、とんでもハップン!!!
スマホのスケジュール表で、プライベートを含めると空白な日は3月も4月も三日だけという散々たる有様。

エ? 何?「それってプライベートがほとんどでしょ。イイ年をして遊びすぎ」・・・だって。
ウーン、まあ、花見は4回だけ(弁当付きは2回、すみません)映画は4本のみ、演奏会は1回だけ、その他エトセトラ・エトセトラだけで・・・後は仕事がらみ。

ホントです。これでも私、自治会と老人クラブの会長、老人クラブ連合会の会計&副会長をやっているものだから、年度末と年度初めは会議と行事がいっぱい。

でも、私、84歳の末期高齢者でしょ、「男の死にどき」の真っただ中。そして来年は85歳の終末高齢者となって、天の彼方から「もういいよ」と言われゴールすることになっているそうです。
だから、なけなしの余生を楽しむため、背負い込んでいる3団体は85歳までと断言していますので、それからは夢の365連休となるに違いありません。
ウーン、あといくつゴールデンウイークを迎えられるのでしょうか???・・・トホホホホ。

そう、竹内まりやの「人生の扉」にあるように

満開の桜や 色づく山の紅葉を
この先 いったい 何度見ることになるだろう

4月でようやく仕事のケリはついたし、ここで、わが生涯最後の・・・ではないと念じて・・・ゴールデンウイークを満喫しようと思ったけれど、TVで観光地の様子を見ると、こりゃとっても年寄りの出る幕ではないとガマンがまん我慢の連続!!!

そこで、貴重な10連休を、私の大好きな井上陽水や中島みゆきを聴きながら、ツン読していたミステリー・・・ギリアン・ロバーツの「死体と一緒にヴァケーション」とローレンス・ブロックの「殺しのリスト」に土屋賢二のユーモア・エッセイ「日々是口実」を読破し、録画してある懐かしの洋画・・・「黄色いリボン」や「北北西に進路を取れ」とか「ティファニーで朝食を」など6本をしみじみ楽しむことにしましょう。

そして、井上陽水の「5月の別れ」をどうぞ・・・ネ、これって5月がピッタリでしょ。私の大好きな歌!!!

5月の別れ

風の言葉に諭されながら
別れゆく二人が五月を歩く
木々の若葉は強がりだから
風の行く流れに逆らうばかり

鐘が鳴り花束が目の前で咲きほこり
残された青空が夢をひとつだけ
あなたに叶えてくれる

いつか遊びに行きたいなんて
微笑みを浮かべて五月の別れ
月と鏡はおにあいだから
それぞれにあこがれ 夜空をながめ

星の降る暗がりでレタスの芽がめばえて
眠りから醒めながら夢をひとつだけ
あなたに叶えてくれる

果てしなく星達が訳もなく流れ去り
愛された思い出に夢をひとつだけ
あなたに残してくれる

ご機嫌いかが 3

春はアッという間にやってきて、アレヨアレヨと云う間もなく、もう夏の気配が漂ってきました。
私、夏は暑いから大嫌い、冬は寒いから大嫌い。だから春と秋は大好き。
特に春になると、コートを脱ぎすて超ミニスカートでボインボインを誇らしげに、エロっぽい眼差しで見る男どもを見くだして闊歩する女性を見るのが大好き。

でも、私、とっびきりの年寄りだから、

夜桜を見に行かないかと君が言う 思いっきり幸せを抱きしめる瞬間   諸星詩織

という世界からは程遠い存在でしょ。だから

のんびりと春を探しに出かけます 寂しい者はこの指とまれ  諸星詩織

という世界なんです。ウン、誰かこの指に止まってくれないかなァ。

ところで、今日の「ハードボイルドに恋をして7」は、2022年2月15日のプログ「ご機嫌いかが 2」の続編です。
ウクライナのTVニュースを見るたびに、私、機嫌は悪くなるばかり。そして「怒り」はますばかり。そこで、ハードボイルドの「怒り」を読んで、チョッピリうさ払らしをして下さい。

怒り

けんかは不得意だから、すぐに相手に殴り倒されてしまった。正義の味方を気どるには体重も軽すぎるし、年もとりすぎている。それは自分でも十分承知しているにもかかわらず、時として、世界の不公平さを特別に見せつけられると、ついそれを忘れてしまうのだ。
角川書店「暗くなるまで待て」トニー・ケンリック/上田公子訳

いかし、わたしがいくら理性的な性格にできていても、わが長所のトップは忍耐ではない。
早川書房「ダウンタウン・シスター」サラ・バレッキー/山本やよい訳

エレベータは、奇数偶数方式だった。こんなものを設計したデザイナーには本年度の「アホバカ大賞」をやるべきだ。この種のエレベーターときたら、やたらスピードがのろい。
早川書房「絞殺魔に会いたい」パーネル・ホール/田中一江訳

(男のトイレはあっても、女性トイレがないので、エヴァは頭にきて)
連中はたとえ寒い夜でも、女には鉄の膀胱があるから大丈夫だと思ってるんだろうが、そんなの公平じゃない。金持ちで有名になったら、あたしも文句が言えるかもしれない。金持ちでも有名でもないときに文句をつけるのはいいことじゃない。だって、コルクの栓でもしろと言われるのがおちだし、こっちはますます頭に血が昇るからだ。
早川書房「汚れた守護天使」リザ・コディ/堀内静子訳

患者から金を奪った上に、人格まで奪ってしまう病院の日課なるものを押しつけられると・・・。
早川書房「ダウンタウン・シスター」サラ・バレッキー/山本やよい訳

(性倒錯者が少年を傷つける秘密ビデオを見せられたエレインは)
「・・・この世の中には、変質者や頭のいかれた人間がうじゃうじゃいる。そんなことは百も承知よ。・・・そりゃ時には、人類に取りつけられている生命維持装置を誰かがもうはずすべきだ、なんて思うこともあるけれど、でも、大丈夫、とりあえずわたしはこの世界と折り合いをつけている。でも、今見たビデオだけは我慢ならない。このビデオだけは絶対に許せない」
二見書房「倒錯の舞踏」ローレンス・ブロック/田口俊樹訳

俺の怒りは順調に進行し・・・彼の顔は、不吉な桑の実のような暗赤色を呈していた。
早川書房「大あたり殺人事件」クレイグ・ライス/小泉喜美子訳

ニッキは端然として椅子に座っている。そのひっそりとして静かな物腰は、まるで感情のギアが入れ忘れられているかのようだ。
早川書房「アリバイのA」スー・グラフトン/嵯峨静江訳

(整備してもらったばかりの車がぶっ壊れたので)
「こんちくしょう!」あたしは叫んだ。
「この日本製のくそったれトラックめ。あの大嘘つきの詐欺師のしょんべんたれの整備工め!」
あたしは一秒ほどハンドルに顔を押しつけた。まるでお父さんみたいな口をきいてしまった。タイタニック号に乗って沈んでいくときに、きっとこんなことを思うのだろう。
扶桑社「モーおじさんの失踪」ジャネット・イヴァノヴィッチ/細美遥子訳

(探偵の資格をなくすと脅されて)
「探偵の資格を剥奪されたって、この世の終わりがくるわけじゃない」
この世の二日前ぐらいの気分にはなる、ということはいわないでいた。
早川書房「偽りの契り」スチィーヴン・グリンリース/黒原敏行江訳

※諸星伊織ーー本名 糸満久美子、沖縄県出身。詩集「雨上がりの窓」より。