ご機嫌いかが 6

桜の花もほころび、いまや見所となった途端、咳がコンコン、鼻水はツルツル垂れ流しとなり、おなじみの病院に行ったところ、診察室どころか別棟に連れていかれ、コロナとインフルエンザの検査をさせられる羽目になってしまった。

私、「平熱の上に5回目のワクチンもインフルエンザの予防注射しているから、普通の風邪」と抵抗したものの聞く耳をもたない。しかし結果は私の診断のとおりすべて陰性。私は、医師の素質があるやかもしれぬ。

毎年、通例のお花見の計画が3回もあったのに、コンコン&ツルツル状態だからすべてキャンセル。弱り目に祟り目とはこのことである。

3月から4月は、私にとってホトホト精一杯お疲れの月である。
なにしろ「80歳以上の合唱団」とか「80歳以上の歩こう会」とか、あれこれ他人から見たらどうでもいいような、私からみたら、どうでもいいなってとんでもないというような会にいろいろ入っているのである。
さらに加えて、自治会と老人クラブの会長もしているものだから、年度末と年度初めは行事がゾロゾロ&ゾロゾロ!!!

かくして4月15日は老人クラブの総会、16日は自治会の総会となってテンヤワンヤしているのに、85歳の「終末高齢者」となった私のアンテナは、感度不良となって、今日、15日の夢旅人の原稿なんて書けそうもない。

ということで、私の隠し球。「ハードボイルドに恋をして」。これなら書き写すだけでいいから「ご機嫌いかが 6」を掲載することにした。
そう、私にとって一番必要なのは「安らぎ」。どうぞ、皆様にも安らぎのひとときをどうぞ。

安らぎ

テレビは一般大衆にとって、電子安定剤なのかもしれない。
早川書房「殺人ウェディング・ベル」ウイリアム・L・デアンドリア/真崎義博訳

「・・・いずれにしても長くて乾いた一日だった。ここらで一日の埃をふるい落とさない?」
早川書房「暗闇にひと突き」ローレンス・ブロック/田口俊樹訳

彼女は立ち上がって、暖炉に歩いていった。もうすぐ、火やセーター、それにかわいい女の微笑みが欲しくなる季節がやってくる。
早川書房「秋のスロー・ダンス」フィリップ・リー・ウィリアムズ/坂本憲一訳

パジャマを着て室温を24度に設定し、明かりを消してベッドに入った。純真で汚れのない眠りだった。
早川書房「パームビーチ探偵物語」ローレンス・サンダース/眞崎嘉博訳

あたしは夕食と朝食を食べ、あったかいベッドでひと晩ねた。・・・それもアンダーシャツとパンティって格好で、ぐうたらしてればよかった。
早川書房「汚れた守護天使」リザ・コディ/堀内静子訳

ステレオをつけ、長椅子にすわって酒を飲み、煙草をふかした。いたって文化的な気分になった。パヴァロッティがヴェルディの《鎮魂ミサ曲》から〈われらは嘆く〉を歌う。ふんふん、とても文化的だ。つづいては、ドニゼッティの《連隊の娘》から〈おお、友よ〉の高いハ音を九回もだせるなんて信じられない。しろうとなら、化粧だんすの引き出しキンのタマをはさみでもしないかぎり、一回もだせないだろう。すこぶる快適。わが家の優雅な夕べ。
早川書房「二日酔いのバラード」ウォーレン・マーフィ/田村義進訳

私はときどき、世界で一番小さい星を食べる。それはコンペイトウという名で、どの星座にも属していない。
新潮文庫「両手いっぱいの言葉ー413のアフォリズム」寺山修司

ラジオ・ワンからは《わたしとあなたとブーという名の犬》が流れていた。カフェインとビタミン Cにノスタルジアを加味した朝食をとるのが、最近の習慣になりつつあった。
早川書房「見習い女探偵」リザ・コディ/佐々田雅子訳

マールを注ぎたし一本イングリッシュ・オパールを吸った。これで、その日、一日に別れのキスをする用意ができた。
早川書房「パームビーチ探偵物語」ローレンス・サンダース/眞崎嘉博訳

ジャッキーは、女がいつもカロリー計算をしていたわけでもなければ、仕事の昇進を気にかけていたわけでもなく、男と女が一日じゅう過ごしたいと言ったからといって男をわがままとは責めない。そんな時代の女なのだ。少なくても、たいていの情事の発端なる、過度の性の感情の発端からくる陶酔のひとときのあいだは、そんなことを考えない女なんだ。そういう女を好きなのかどうか自分でもよくわからなかったが、ふたたび降り出した雪と噛みつくような冷たい夜とドナの不在という状態のなかでは、ジャッキーの腕の中はすてきだった。彼女がまだ三十になっていなくても、中年の落ち着きに包まれているようなやすらぎを感じた。
東京創元社「影たちの叫び」エド・ゴーマン/中津悠訳

自分自身をはぐくんで

わがニッポンがこんなに盛り上がったことってあった?

WBCの準決勝戦と決勝戦。

準決勝戦では、9回裏でまるでダメだった選手が逆転打で試合をひっくり返し、決勝戦では9回裏に最高と云われる投手が最高と云われる打者を三振させて優勝を勝ち取って・・・まるで映画の一シーン。

これって奇跡みたい。運命の神様が、こうゆう感動的なシーンを演出したに違いない。

こんな胸ドキを味わったのは久しぶりである。野球はおじさん時代の人間の趣味で、現代人はサッカーというのが定番らしいが、WBCは老若男女を問わずテレビにくぎ付けになったみたいである。

野球は、勝っていても負けていても、ハラハラ&ドキドキして見なくてはならぬ。サッカーは、ボールがゴールに入りそうで入らず、イライラ&ジラジラして見なければならない。
ハラハラ&ドキドして興奮する方が、イライラ&ジラジラしてストレスをつのらすより良い。だから、野球の方が好きである。

それに、サッカーはちょっと目を離したりしたら、アッという間に点数が入たりして、すこぶる目が離せない。だけど、野球の方は、交代する時にオシッコに行ったり、女房と不変不滅のどうでもいい会話を交わすことも出来る。そう、余裕綽々の人生を送れるのである。

今日は4月1日。プロ野球がついに開幕。とってもエラそうに見えるプロ野球評論家の皆さんが「今年も巨人の優勝はムリ」とのたまう。しかし、野球に限らずもろもろの評論家の予想は当たらないというのが通例だから、私、まったく心配していない。

そして、4月は門出の月でもある。キラキラ輝いての新入学や新入社。異次元の世界に飛び込む訳だが、夏目漱石が1906年に小説「草枕」に、
「智に働けば角が立つ。情に棹(さお)させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい」と書いたが、100年以上たった今でも、この世はこの言葉とおりである。

いろいろな出来事に遭遇し、喜んだり、苦しんだり、悩んだりすることだろうが、谷川俊太郎の詩「自分をはぐくむ」のとおり、あなた自身を大切に・・・。

 自分をはぐくむ 

悪いこころと善いこころ
悪いことと善いことと
ふたつはからみあっている
木に巻きついた蔓のように

自分をはぐくむのは難しい
自分を枯らすのは簡単だ

あなたを導くのは
ほかでもないあなた自身
あなたはあなた自身を超えていく
自分を発見し続けることで

自分を大切に見つめたい
今日も明日もいつまでも

ご機嫌いかが 5

私は生まれながらの生粋のジャイアンツファン。TVではジャイアンツの試合、それも勝っている試合しか見たことがない。初めから負けている試合はもちろん見ないし、勝っていても逆転されたら、ムッツリ スイチOF。だけど、未練がましく時々スイッチを入れて、勝っていればニコニコ スイッチON..。

そして、勝ったらTVのスポーツニュースをはしごする。すこぶるいい気分!!!

ジィアンツ以外の試合を見たことがない私だが、見た!見ました!!びっくり!!!の4日間。
WBCの1次ラウンド。

豪華絢爛たるメンバーが意気軒昂にして獅子奮迅の働きに驚天動地。なんとジャイアンツが勝った時以上に、私、喜色満面、欣喜雀躍!!!
こんなことってある?・・・という4日間でした。

最高にご機嫌の4日間でしたので、今日の「ハードボイルドに恋をして」は、2022年11月1日のプログ「ご機嫌いかが 4」の続編です。
「ご機嫌いかが」で今までに取り上げたテーマ「笑い」「喜び」まではご機嫌うるはしく、以下の「悲しみ」「怒り」「驚き」はご機嫌ナナメ。そして、今日のテーマは「悩み」です。
WBCで優勝するかどうかなんて悩まないで、このプログを読んで悩みを吹っ飛ばして下さい。

 悩 み

誰だって、他人の悩みなんか聞きたがらないわ。他人の悩みなんか退屈なんですもの。たとえ、自分の悩みだって退屈なものよ。
早川書房「殺人オン・エア」ウイリアム・L・デアンドリア/真崎義博訳

あてもなくさまよう考えに、屋根をかぶせて定住させるために、ラジオの音量を上げた。
早川書房「身代金ゲーム」ハワード・エンゲル/中村保男訳

テレビでは「・・・悩み事は、すべてイエスに差し出しなさい」と言っていた。なかなかいいアイデアと思って考えてみたが、私は、神は自ら助くる者を助くという信念で育てられたのだ。もうしばらくは自分で悩むことにした。別に、イエスを恨んでいたからではない。
早川書房「殺人ウエディング・ベル」ウイリアム・L・デアンドリア/真崎義博訳

もう新しい悩みごとはごめんだった。これ以上問題を抱え込んだらギネス・ブックにのってしまう。そうなったら自分が不良アパートの不在家主より、もっとたちの悪い人間になりそうな気がした。・・・もう二度とジャック・ダニエルのグラスのなかに、難易度Cの後方宙返り一回転半ひねり降りをきめようとは思わない。マンハッタンはどうしようもないほど蒸し暑く、レッド・ソックスは4位。みんな人生の琑末事だ。一人きりにしてほしかった。
二見書房「スキャンダラス・レディ」マイク・ルピカ/雨沢泰訳

「どうにもならないことをくよくよ考えるのは、貴重な時間をむだにして心の傷口をひろげるにすぎないわ」
早川書房「騙しのD」スー・グラフトン/嵯峨静江訳

しばらくして、もう一杯こしらえた。手がひとりでに動いていた。私が機械的に何かするときは、心にかかる悩みがあるのだ。だが、大した悩みじゃない。四十歳を過ぎてしまうと、大した悩みなんかあるものではない。時間は肩掛けのように私の上に停滞していた。この街のほかの場所では、人々が食事をしたり、ダンスをしたり、酒を飲んだり、笑ったり、触れあったり、しゃべったり、愛と友情の通貨である自分自身のかけらを交換しあっている。そういうことを、私は何一つしていなかった。私はひとりぼっちだった。
早川書房「感傷の終わり」スティーヴン・グリーンリーフ/斎藤数衛訳

「・・・エドナとピアス夫人は、わたしをこれ以上太らせまいとしているのですよ」・・・「誰だって、肥満の悩みをかかえています」エリーは言った。
司祭はちらっと彼女を見た。
「あなたは当てはまらないでしょう。わたしの場合は、全身これ、肥満の悩みです」
新潮社「エリー・クラインの収穫」ミッチェル・スミス/東江一紀訳

「この宇宙はそんなふうにはなってないんだよ。ーーひとつ問題を解決しても、別の問題がそのあとを埋める。たしか、苦悩保存の法則というんだ」
早川書房「熱い十字架」スティーヴン・グリーンリーフ/黒原敏行訳

彼女は靴をはかずに6フィートあったので、ふつう彼女が初対面の男についてまず知ることは、その男にフケがあるかないかということだった。そういう眺めがわたしをしらけた心の持主にしてしまったのだ、と彼女は主張した。
早川書房「モンキー・パズル」ポーラ・ゴズリング/秋津知子訳

「探偵という職業は、上昇過程で通り過ぎるものじゃなく、下降過程でしがみつくものなんだ」・・・
「おやおや、わたしとあなたで、末期的絶望病患者の収容施設が開けそうね。それで、あなたの悩みはなんなの?」
早川書房「匿名原稿」スティーヴン・グリーンリーフ/黒原敏行訳

「でもね、陰気になったって、悪いことがますます悪くなるだけよ。人生は大事なの。人生がどんなに短いかわかったら、あなたも陰気なことを考えて、無駄に過ごしたいとは思わなくなるわ」
早川書房「夏をめざした少女」リザ・コディ/堀田敏子訳

(エレベーターに乗ると)
実はみな女性で、一人の例外もなくハンドバッグか鞄を持つか赤坊を抱くかしていた。ーー女はいつも何かしら手に持っていて、それを怪しまないが、男は何か持たなければならないとなると、いつも軽い束縛感を抱くのだ。
早川書房「偽りの契り」スティーヴン・グリンリース/黒原敏行訳

その時の職業の選択肢といえば、タンポン工場の箱詰め機械を見張る仕事しかなかった。それもたしかに重要な仕事であるが、あたしをわくわくさせてくれるようなものではない。
そして、あたしの財力と気力の欠如のため・・・こんな車を乗りまわさなければならないのは、何か悪いことをした報いだろうかと思い悩むのみだった。
扶桑社「モーおじさんの失踪」ジャネット・イヴァノビッチ/細見遥子訳

わたしは右を向き、左を向き、仰向けになり、腹這いになり、ほとんど床に落ちーーとうとうあきらめた。6時21分になっていた。どんなに待っても、眠りの白鳥は戻ってきそうもなかった。表では、街がベッドの中で身じろぎし、伸びをし、シーツをはねのけ、巨大な咳払いをしていた。
早川書房「黒いスズメバチ」ジェイムス・サリス/鈴木恵訳

「それに空腹な上に、カフェイン禁断症状で死の苦しみを味わっていて、しかも6日間も性的片思いに悩んでいる」
早川書房「蒼ざめた王たち」ロバート・P・パーカー/菊池光訳

83年前の格言

3月。日本はもうすぐ春。うららかな春が来るというのに、ロシヤによる戦争はもう2年目。

人の命は、ウクライナの兵隊さんにしろ、ロシアの兵隊さんにしろ同じように尊いものだから、今日も、否応なしに何人もの命が失われていると思うと、言葉を失います。

ウクライナの兵隊さんは、死ぬかもしれないけれど「祖国を守る」という信念で自ら戦場に向かっていると思います。
しかし、ロシアの兵隊さんのなかには「祖国を守れ」と命令され、仲間と思っていた隣国で殺し合いをさせられて、合点がいかないままに無念の戦死を遂げる・・・。
ロシアの人々は「そんな無茶な戦争を・・・」と、どうして思わないのでしょうか。

日本では、人を殺せば「殺人罪」。二人以上殺せば「死刑」なのに、1947年に制作されたチャプリンの映画「チャップリンの殺人狂時代」の殺人者ヴェルドーの言葉、

「一人を殺せば犯罪者だが、百万人を殺せば英雄だ」 ※1

とあるように、チャップリンは、どうして、戦争であれば人を殺していいのかと、戦争による殺戮の正当化を弾劾しています。

又、同じようにヒットラーを痛烈に風刺したチャプリンの映画「チャップリンの独裁者」で、独裁者になりすましたチャップリンが、映画の最後に平和を呼びかけた有名な6分間のスピーチがあります。その一部に、

「必要なのは機械より人間性だ。兵隊たちよ! 機械の頭と機械の心を持った連中に、あなた自身を売り渡してはならない。彼らは君たちに行動を命令し、感じることまでを命令する。そして大砲の的として使うのだ」 ※2

この映画が作られたのは1940年で今から83年前。83年前のこの台詞を、ロシアの兵隊さんに告げても、なんら遜色がないなんて・・・。
ITの時代になっているのに、人間の頭はまったく進歩していないんですね。

人間の頭は旧態依然のままなのに、チャップリンの時代より機械の頭の方は格段に進歩して、今や、人間の頭は当てにならず、
「必要なのは人間性より機械だ」と、史上最も急速に成長している対話型のAI「チャットGPT」に任せた方が良いのかもしれません。

「チャットGPT」ってスゴイですよ。「チャットGPT」に質問したら何でも答えてくれるんです。私の頭脳は「チャットGPT」の何百兆分の0.01以下に違いありません。
そこで、ネットで紹介されている「チャットGPT」応答例をどうぞ。

「アメリカの原爆投下理由を尋ねたら早期終結と答え、2度と被曝させないように日本も核保有すべきではと尋ねたら日本が保有すると核戦争の脅威が高まると答える」

「中国や北朝鮮が保有する理由を尋ねたら安全保障の理由と答え、日本も安全保障を理由に保有すべきではと尋ねると核不拡散の努力をすべきと答える」

※1 図書刊行会発行・著者 和田誠「お 楽しみはこれからだ」より引用。
※2 図書刊行会発行・著者 和田誠「お楽しみはこれからだ PART2」より引用。

とっても素敵で素晴らしいお知らせ Part2

今日の「夢旅人」は、前回の「とっても素敵で素晴らしいお知らせ」のとっておきの第2弾。
「なんだ、二番煎じ。だったらdelキイをクリック」なんて殺生なことは言わないで頂きたい。
私、すこぶる老人なのに「ハードボイルドに恋をして ~名言集~ 」のタイトルで電子書籍を出版したのである。これで、めげずに電子書籍6冊目。「老人をいたわりましょう」の気分を発揮して、このプログ、ポイしないで読んでもらいたい。

私はミステリー大好き人間である。但し、本格推理小説なんていうのは苦手である。疑わしい容疑者がウジャウジャいて、犯人は誰だと悩まなければならぬ。世間には悩み事はウジャウジャあるのに、本まで読んで悩むことはないであろう。
と、言う訳で私の好きなのは外国のハードボイルド小説。

私がハードボイルド小説にはまったのは、レイモンド・チャンドラーの「プレイバック」の中の台詞である。

 「男はタフでなかったら、生きてはいられない。やさしくなかったら、生きている資格がない」

私は、この台詞に憧れ、この通り生きようと思ったものの、自慢じゃないが小学校で懸垂が一回も出来なかったというように、腕っぷしの弱いことにつけては誰にもヒケは取らぬ。
だから、「身体のタフ」は諦め、せめて「心のタフ」を心がけようと生きてきたが・・・とかくこの世はままならぬ。心がけるだけでヨシとしなければならぬであろう。

かくして、レイモンド・チャンドラーにはまって以来、ハードボイルド小説を読むたびに、気に入った台詞・・・気障でウイットに富んだ会話、ウフフと笑えるような表現、お洒落な会話、豪華絢爛なる比喩、ウンウンと頷かせる表現などをノートに書き残している。

例えば、ディック・ロクティの「眠れる犬」の

「セーラ、おれは結婚したことがる。1度ならず3度まで。1回目は若き日の過ち、2度目は中年の好奇心のためだ。3度目は・・・そう、いわば老年期の愚行で、おれは貴重な人生のうちの10年を奪われ、貴重な教訓を得た」

パーネル・ホールの「依頼人がほしい」の

人生には、ついついわすれがちなことがある。いかに明々白々であり、いかに単純素朴であり、くりかえしくりかえし、わすれてはならじと自分にいましめても。わたしがついうっかりすののは、なにがあってもけっして妻を相手に議論をしようとするな、ということだ。

レイモンド・チャンドラーの「待っている」の

「あたしの待っているのは、背のたかい、色のあさ黒い、やくざな男よ。これといってわけはないわ。その男とは前に結婚していたの。もう一度よりをもどしてもいいと思っているの。人生はたった一度なのに、あやまちは何度でも繰り返せるものなのね」

とか、ジョージ・P・ペケレースの「友と別れた冬」の

「愛していたかどうかは言えないな。おれにはわからん。人を愛することと、だだある時期の思い出を愛することとは混合しやすいからな」

また、ラリー・バインハートの「最後に笑うのは誰だ」の

「マリー・ロールは俺が風呂と、アスピリンと、寝ることと、かしずかれるこにしか興味がない、と言って非難した。つんけんしている彼女に腹を立てた俺も気に食わなかった。要するに何もかも気に入らなかったわけだが、これで俺たちも恋人同士から本物の夫婦になれたようなものだ」

レイモンド・チャンドラーの「長いお別れ」の

「最初のキスには魔力がある。2度目はずっとしたくなる。3度目はもう感激がない。それからは女の服を脱がせるだけだ」

ウォーレン・マーフィーの「伯爵夫人のジルバ」の

「・・・でも、今夜以外なら、いつでも空いているよ。わしは、君に貞淑と、誠実と、純粋を誓う。お似合いのカップルだとみんな祝福してくれるだろう。われわれのロマンスは歌にまでうたわれるだろう」
「奥さんはどうするの」
「ええっと、見つからないことを心から祈っている」

これらの文章の一部を私のプログ「夢旅人」の「ハードボイルドに恋をして」に随時掲載していたが、今般、まだ掲載していない部分も含めジャンル別に纏めて編集し、電子書籍として出版することにした次第である。

引用した本は、1966年から2021年までに発行された文庫本・新書版の主としてハードボイルド等の小説515冊のうちから201冊。。
私が「いいな」と思った文章だが、皆さんのお口に合わぬかもしれぬ。そこのところは勘弁してもらい、きっと「ニヤッ」される文章に出会うことを期待して読んで頂きたいものである。
これの目次は次の通り。

「ハードボイルドに恋をして」 ~名言集~

◇男と女ーー愛・男・女
◇ハッピーですかーー結婚・夫婦・セックス・浮気・親・友人
◇感じる?ーー好感・予感・反感・冷淡・孤独
◇時の過ぎゆくままにーー人生・時・青春・若さ・衰え
◇魅力がいっぱいーー眼・鼻・乳房・ヒップ・服装・化粧・声
◇素敵ーー幸運・夢・楽観・期待・自信・信頼・良策・賢明・慰め
◇ハードな気分でーー誓い・努力・選択・判断・無視・代償・スピーチ
◇ご機嫌いかがーー笑い・喜び・悲しみ・怒り・驚き・悩み・安らぎ・爽快・感嘆
◇どうしようーー躊躇・錯覚・変心・図星・過ち
◇大変ーー後悔・反省・落胆・心配・疑問・苦労・逃避・失敗・苦手・過剰・当惑・多忙
◇涙なくしてーー死・悲惨・残念・同情・馬鹿
◇ミステリアスーー嘘・秘密・罪と罰・探偵
◇この広い空のどこかでーー人間・故郷・真実・現実・気配・藝術・車・渋滞
◇生まれながらのーー自分・身勝手・軽薄・優しさ・自惚れ
◇飲んで食べてーー酒・料理・食事・パーティ