これって名誉なの?

 8月15日。今日は、戦後70年目の終戦記念日である。
 詩人岡本潤は1933年(昭和8年)に詩集「罰当たりは生きてゐる」を刊行したが、発行と同時に発禁処分にあい印刷所に置いてあった詩集は押収されてしまった。しかし、事前に印刷所から持ち出されていた100部は押収を免れ、秘かに配布された。
 次に掲載する詩は、この「罰当たりは生きてゐる」に掲載されていたものである。

ある母に(部分)   岡本 潤

―――名誉の戦士だ
―――勇ましいことじゃ
―――村のほまれじゃ
まわりの人たちのやんややんやとほめはやす興奮のなかで
あなたはわれを忘れ
いたたまれない惨憺の思いを「名誉」の言葉であやさずにはいられなかったのです
気の毒なお母さん
お泣きなさい 誰にも遠慮することなく泣いて下さい
泣けるだけ泣いてから静かに考えて下さい
ほめはやす人は酔っぱらているのです 酔わされているのです
酔っぱらいはきっとさめる時があります

 ウーン、この詩が書かれたのは1933年(昭和8年)。それから80年も経て、今、2015年。ああ、それなのに、まだ覚めていない酔っぱらいがいるって、本当?。

 ※ 岡本潤――1901年~1978年。詩人で第一詩集は「夜から朝へ」、他に「夜の機関車」等あり。1935年治安維持法違反で逮捕、翌年釈放さる。当初はアナキズムだったか、後にコミュニズムに転向した。

これって ハードボイルド 5

 梅雨が明けたら初夏を飛び越して、夏日どころか真夏日&猛暑日に突入。ウンザリ、ゲンナリ、グッタリ。 
 かくして、私、ヤル気なくして思考力0。これって全てオテントウさまのせいです。私が悪いのでありません。
 と、いう訳で今日は手抜き・・・エート、訂正、ここはハードボイルドのクールでキザな台詞を読んでウサをはらしてください。ヤレヤレ。

(リンダと別れた探偵マーロウの独白)
 こんなとき、フランス語にはいい言葉がある。フランス人はどんなことにもうまい言葉を持っていて、その言葉はいつも正しかった。
 さよならをいうのはわずかのあいだ死ぬことだ。

早川書房「長い別れ」レイモンド・チャンドラー/清水俊二訳

(生ビールとホットドッグを食べていると)
 「ご一緒してよろしいかしら。ミスター・デンスン」グレインハウンドのように色つやがいい。
 私は彼女を見上げた。口はホットドッグでいっぱい。マナコは乳首でいっぱい。

早川書房「ハリーを探せ」リチャード・ホイト/朝倉久志訳

 通常、彼女たちは若くして両親をなくす。パパは金儲けの疲れで死ぬ。ママはパパと一緒に暮らした疲れで死ぬ。

早川書房「素晴らしき犯罪」クレイグ・ライス/小泉喜美子訳

 リーアンはふたたび溜息をついた。悲哀の一歩手前から、絶望の一歩向こうまでのあいだのどこからか漏れたような音だった。

早川書房「殴られてもブルース」スティーヴン・ウォマック/大谷豪見訳

 Tシャツは羨望の目で見る大人にむかって十代の女の子がさりげなく、人生には乳房が断固重力に抵抗する時期があることを実証して見せる例のタイプだ。

扶桑社「最後に笑うのは誰だ」ラリー・バインハート/工藤政司訳

 どこまで信じてよいかわからないが、すくなくとも、彼女の人生観は九九換算表のように冷たいと思って良いだろう。

二見書房「スキャンダラス・レデイ」マイク・ルピカ/雨沢㤗訳

 「命をかけて誓うわ。・・・あんたには嘘は言わないわ」
 モレリの口の片隅がほんのわずかに吊り上った。「おまえならローマ法王にだって嘘をつくだろうさ」
 わたしは十字架を半分切りかけていた。「私が嘘をつくことはほとんどないわ」絶対に必要なときだけよ。それから、真実が妥当でないと思えないときもだけど。

扶桑社「あたししかできない職業」ジャネット・イヴァノヴィッチ/細見遥子訳

 目を開けたら最初に見えたのは壁で、最初に感じたのは疲労と、このいやな事件に対するユーウッな気分だった。だがその後、足を動かしたらきみにさわった。・・・するとおどろいたことに、急に安らかな楽観的な気分になったんだ。愛は一晩の熟睡よりも効果がある。

早川書房「死者は惜しまない」ナンシー・ピカード/宇佐川晶子訳

素敵に 音楽を

 私、先月から今月にかけて音楽映画を3本見ました。「ジェームス・ブラウン」と「セッション」に「さだまさし 大誕生会」
 エッ、 何? 「だってそう八さん、ドンパチ弾が飛び交っても主人公には絶対当たらないっていう、嘘っぽいドンパチ映画専科じゃなかったの?」って・・・。
 ウーン、何事も「例外のない原則はない」と言うでしょ。我が道を猪突猛進する我がニッポン国の超最高権力者のソーリもそう云っているんだから、間違いありません。ハイ。
 そういう訳で、私、ドンパチ大好きだけれど、音楽ミーハーでもあるので、「ジェームス・ブラウン」のキャチコピーの
 「音楽の歴史を変えた史上最強アーティストの栄光と挫折、そして知られざる友情を描く、観る者を激しく揺さぶる、感動エンタテーメント!!」を読むと見に行かなきゃソンソンって気がするでしょ。
 もともと、私はロックは苦手だから、聴いてもせいぜい矢沢栄吉と忌野清志郎。ジェームス・ブラウンの曲は聴いたことがなかったけれど、イヤー、驚いたのなんのって看板に偽りなし、キャチコピーの通りでした。
 この映画のプロデューサーは、ジェームスを敬愛してやまないミック・ジャガー、ジェームスを演じたのはやはりロッカーのチャドウイック・ボーズマン。歌声はジェームス自身のものと部分的にはチャドウイックの声も使われているらしいけれど、その歌声とダンスに圧倒されてア然。「最高の魂ーソウルーを持った男」と云われるゆえんが良く分かりました。

 次に見た映画は「セッション」。この映画はジャズドラマーとその指導者を描いた作品で監督は若干28歳。製作費はたった3億円で撮影日数は19日だけれど本年度アカデミー賞3部門を受賞した作品である。
 私はジャズ大好き人間なので、これの予告編で衝撃のラストシーンがチラッと映し出された時「スゲー」と思ってイソイソと見に行った次第である。
 名門音大に入学した野心家のドラマーと恐るべき鬼教師とのバトルともいうべき狂気の練習と、どんでん返しの後のラストの10分に及ぶドラム打ちっぱなしの圧巻のシーンは、ド胆を抜かれ声も出ない・・・と、云うような音楽映画を超えたアクション映画みたいだった。
 ジャズの演奏はライブにしろ映像にしろよく見るけれど、あんなドラマーのバチ捌きは見たことがないような気がする。だけど、これは吹き替えでなく主演のマイルズ・テラー自身が演じたと聞いて、なんと凄いと改めて感じ入った次第である。

 NHKTVで毎月末の土曜日0時5分から1時35分まで「今夜も生でさだまさし」という番組が放映されている。
 この番組はさだまさしがこの番組に寄せられたハガキを読むだけ。歌うのはたった1曲だけという歌手そっちのけの番組だけれど、それが何故かオカシックっておかしいんデス。 
 私、いい加減年寄りだけど「遅寝遅起き」をモットーにしているから、アハハアハハと深夜に顰蹙をかいながらいつも最後まで見ている。 
 そのさだまさしの60歳の還暦を祝って「さいたまアリーナ」で2012年4月10日に行われた伝説のコンサートが映画化されたのである。たった20分でソールドアウトとなったこのコンサートなど、高嶺の花と思っていたらそれがなんと映画化されたのである。
 コリャア見なきゃあ沽券にかかわるという訳で、いつもは1000円也のシニア入場料で映画を見ているケチ私だけれど、本音シブシブ建前ニコニコで金2500円也の入場券を買った次第である。
 このコンサートは、60組の豪華アーティストが出演しているものの持ち歌は歌わず、さだまさしの歌を1曲だけ歌うという趣向をこらした演出になっていたんだけれど、この映画はエンエン5時間にわたるコンサートを2時間にまとめて編集したものである。
 だから映画に出演したアーティストは厳選されて南こうせつほか12名だけ。ところが女性のシンガーは平原綾香と岩崎宏美・ももいろクローバーZの3組だけ。これって男女均等法に反しているんじゃないの?
 私、男性の歌手はキライという訳ではないけれど、何故か女性の歌手の方が好きでしょ。だからプンプンのプン。
 だけど、私の大大好きな平原綾香が「ひまわり」を、岩崎宏美が手話を入れて私の大大好きな「いのちの理由」を歌ったから、云うことありません。
 ももいろクローバーは「むかし子ども達は」。この歌は初めて聴いた曲だけれど、みんな可愛いうえにピンピンと見えそうで見えないくらい足を跳ね上げて歌うから、私はニコニコ。
 この演奏をしていたバンドが、時々写し出されていたけれど、それがバンドの右側でバイオリンを弾いていた女性をメインに撮影して・・・なんとこれが美人!!! ホント、このカメラマン、あんたはエライ。女性不足は勘弁することにしよう。
 この映画、ライブ感はないけれど、映像も良かったし音声も大音響でバッチリ。ウン、金2500円也だけれど大大満足で映画館を後にしました。

アアでもないけれどコウでもない・・・

 我がニッポン国のソーメイなソーリは「日本人の命と平和な暮らしを断固として守る」というスーコウな決意を固め
 「平和安全法制整備法」及び
 「国際平和支援法」の2法案を決定。それと共に、従来定めていた諸々の法令を纏めて
 「重要影響事態安全確保法」とすると共に、一旦コトが生じた時モタモタしないで直ちに出撃できるように
 「我が国の領海及び内水で国際法上の無害通航に該当しない航行を行う外国軍艦への対処について」と
 「離島等に対する武装集団による不法上陸等事案に対する政府の対応について」と
 「公海上で我が国の民間船舶に対し侵害行為を行う外国船舶を自衛隊の船舶等が認知した場合における当該侵害行為への対処について」も定めることにした。・・・・アア、疲れた、これだけ書いただけでも大変、ネ、コレ読んだだけでもヤヤコシイってこと分かるでしょ。
 法律の業界用語ってスゴイんだ。どうも、まわりくどく書かなくちゃいけないらしい。
 「無害通航に該当しない航行を行う外国軍艦」と云うのは、まあ「有害な航行している外国の軍艦」ということだろうけれど、お役人は簡単に書くとフツー人と同じと見られそうだから、頭が良いことを示するためにヤヤコシイ書き方をするに違いない。
 ホント、頭が良くないと、こんなヤヤコシイ書き方は出来ないことがよく分かりました。ハイ。
 そして、我々平平凡人が、見ただけでヤヤコシイそうだからと思わせ、読む気を失くすようにしているに違いありません。

 この法案が上程されると「アアでもないけれどコウでもない」と議論百出。憲法に違反していると言われても
 「それは見解の相違デス」と、シレッとかわして泰然自若。でも、我々平平凡人は「ン? どうなってるの?」
 「個別的自衛権」と「集団的自衛権」なんて、これの境目など解釈次第で右にも左にでもなるものだろうから、いくらエンエン議論したって正解が出るわけじゃないでしょ。それに「重要影響事態」なんかも、情勢が変われば解釈も変わる可能性があるでしょ。
 だから、こんなヤヤコシイ法律は作らず正々堂々と憲法を改正して、我がニッポン国はアメリかに守られているから義理は果たさねばならぬという訳で、すっきりくっきり
 「一旦、ことあるときはアメリカと共に戦う」と明確にすれば、解釈の余地もなくなって「アアでもないけれどコウでもない」なんて云われないと思うんだけどなァ。
 エ?何? 「そう八さんって、バッカみたい、そんなことしたら、憲法改正方式は反対が多くてオジャンにある可能性があるでしょ。だから、ソーメイなソーリは諸々の解釈自在な法律を作って、アアでもないけどコウでもないとネタがなくなるまで議論させ、最後は民主主義の原点に基づき粛々と多数決すれば、初志貫徹・万々歳でしょ。だから、憲法改正方式なんてムダな方法はとらない訳。そう八さん、こんなことまで分からないの?」
 フーン、そうなんだ。さすが我がニッポン国のソーリは、我が国の未来を託されているだけあってソーメイなんだ。エライんだ。

 誰かが「アベノミックスはアホノミックス」って言っていたけれど・・・これって間違い?

しとしと雨はどこに?

 梅雨である。
 梅雨を表す言葉はいっぱいあって、五月雨(さみだれ)、芽花流し(つばなながし)、田植雨(たうえあめ)、麦雨(ばくう)、猫毛雨(ねこげあめ)、水取雨(みずとりあめ)、短夜の雨(みじかよのあめ)・・・とたくさん。
 ホント、日本語って美しいですね。優しく風情があってこんな言葉で表現される梅雨なら、そして私の大好きな小泉今日子の「優しい雨」など聞いたりすると、

心の隙間に 優しい雨が降る
疲れた背中を そっと湿らせてく

群れをなす魚たち
少し 楽し気に
駅に向かって走ってく

こんなに普通の毎日の中で
出会ってしまった二人
降りしきる雨にすべてを流して
しまえたらいいけれど・・・

 ムードに弱い私は、「梅雨大好き」となりそうだけれど、トンデモハップン!!!
 しとしと降る雨の中を、相合傘でしっとり濡れながら歩くならともかく、最近の雨はズボンや靴をグチョグチョに濡らして、傘が風に飛ばされないように必死で歩くドカドカ雨でしょ。
 だから、梅雨は大嫌い。大大嫌い!!!
 気象庁気象研究所の過去100年のデーターを見ると、4時間雨量が50ミリ以上の雨が増加し、1~2ミリの弱い雨が減ってきているそうである。
 1900年から1940年頃までは弱い雨が多く、それから1980年頃までは弱い雨も強い雨もほぼ同じ割合、それ以降は強い雨が比較にならないほど多いということである。ウーン、実感。
 このままでいくと、梅雨と云う字は死語になるやもしれぬ。
 そして、俵万智に詠われたような世界は、なくなるんでしょうね。

サ行音ふるわすように降る雨の中遠ざかりゆく君の傘