前回のこのプログで「てんやわんや」と書いたけれど、それって序の口。この世の溢れている「大変」から言えば、取るに足らないほどのちっぽけな「大変」。
今や、めったやたらに「大変」が出現し、中国を脱出した得体のしれないウイルスが地球上でバッタバッタと跋扈。わがニッポン国でも学校はズズズイズーンとお休みで暇があふれ、わが街の公共施設はスッカラカンと人はまばらで寂しさ漂い、株はドドドーンと下がってウン千億円がドロンと消え、売り上げは景気を道連れにしてズルズルズルーと落ちてため息が蔓延し、経済界もわがニッポン国のソーリもジタバタ&ドタバタ!!!
かくして、わがニッポン国は悲鳴がいっぱい・・・。この深刻な「大変」状況からみると、我がプログの「大変!」は、ちっぽけなどうでもいいような「大変」。これを読んで「大変疲れ」を癒してください。
逃 避
人間だれしも一生に一度、穴を掘ってもぐりこみ、中から穴をふさぎたくなる時がある。
角川書店「俺には向かない職業」ロス・H・スペンサー/上田公子訳
つまるところ、ひとりになって箱入りのフライドチキンと三文小説をかかえて、現実をシャットアウトしたいだけなんだ。
早川書房「逃げるアヒル」ポーラ・ゴズリング/山本俊子訳
上着を着てマジノラインをこえ、ミス・エイムズを彼女の巣に、そして、そのすさまじいお茶とともに残して、彼は部屋を出た。
新潮社「別れを告げに来た男」フリー・マントル/中村能三訳
シャワーを浴びて夜を洗い流し、ベッドにもぐりこんだ。
早川書房「殺人ウエディングベル」ウイリアム・L・デアンドリア/真崎義弘訳
失 敗
(それをやるには)
「ダイエットに失敗するみたいに簡単だぜ」
早川書房「最高の悪運」ドナルド・E・ウェストレイク/木村仁良訳
「準備をしくじるってことは、しくじる準備をしているってことだ」
東京創元社「ストリート・キッズ」ドン・ウィンズロウ/東江一紀訳
・・・結局、ぼくのしたことは骨折り損のくたびれもうけだった。世の中、えてしてこういうものだ。必要なとき、必要なものは決して手もとにはない。なんとしても手放すまいと思っていると、昨年のクリスマス以降手に入れたものがすべて他人の敷物上のこぼれ落ちてしまうのだ。
二見書房「ピンク・ウォッカ・ブルース」ニール・バレット・ジュニア/飛田野裕子訳
月並みなことでも、それが過ちであれば月並みにはならない。
早川書房「ブリリアント・アイ」ローレン・D・エスルマン/村田勝彦訳
アリーは始め、死に物狂いで完璧を求めようとしたが、その努力が無駄に終わると、無関心を決め込むようになり、最後には、わざとへまをやるようになった。完璧な成功は成し遂げられなくても、完璧な失敗なら成し遂げられる。理想的な王女になれなくても、完璧な悪女になられる。
東京創元社「ストリート・キッズ」ドン・ウィンズロウ/東江一紀訳
苦 手
わたしは大のコンピュター・オンチで、扱い方などどうせわからないのだ。彼らに対して含むところはなく、ただ向こうが嫌っているだけなので、わたしは〈羽ペンとインクを普及する会〉の設立メンバーになった。それも大きな団体ではないが。
早川書房「天使の火遊び」マイク・リプリー/鈴木啓子訳
昔、付き合ていた恋人から電話をもらいたくないものだ。親指2本でオイル交換をやろうとするようなもので、厄介なことこの上もない。
早川書房「図書館の美女」ジェフ・アポット/佐藤耕士訳
エマ・ウォルッシュは賢かった。わたしはそれが良く分かった。わたしよりずっと頭が切れた。頭が切れるボスというやつは始末が悪い。わたしは落ち着かない気持ちになった。
東京創元社「裁きの街」キース・ピーターソン/芹沢恵訳
この娘と議論しても利益はない。ノイローゼに悩むガールフレンドに拳銃の撃ち方を教えてくれと頼まれた時と同様に、勝てる見込みはない。
早川書房「眠れる犬」ディック・ロクティ/石田善彦訳
(電話をかけたところ)
私が何か言う前に相手はすぐにテープに切り替えてしまった。機械、の、声、が、数字、を、ひとつ、ひとつ、しゃべる、あれ、だ。どうしてあんなことをするのか、彼らに説教のひとつでもしたいところだが、私もそれほど暇人ではない。
二見書房「処刑宣言」ローレンス・ブロック/田口俊樹訳
(グレッチェンは義母だが)
ぼくとしては、グレッチェンを雇うくらいなら、犯罪学の棚の新刊注文は切り裂きジャックに頼み、戦記物はチンギス・ハーンに任せ、精神病理学はスターリンにでも扱ってもらうほうがまだましだったけど、ボブ・ドンは僕に「雇ってくれ」と懇願したのだ。
早川書房「図書館の親子」ジェフ・アポット/佐藤耕士訳
過 剰
ジャズはスローなブルースだった。・・・ダンスフロアーで彼女がやったことは、50年前なら強姦罪とよばれたろう。こっちもまんざらではないが、こうさとるだけの分別はあった。この女はなにかを狙っている。それがなんであるしろ、えらくご執心だ。照れがない。準備運動のつもりか、わたしの首すじをチューチュー吸いはじめた。
早川書房「ハリーを探せ」リチャード・ホイト/浅倉久志訳
(フランがドライブをしながらいろいろな店で買い物をしたけれど)
私は一度も車からおりなかった。それでもなんだか、“ぶっ倒れるまで買いまくれ”というアメリカの国民的スポーツに参加しているような気がした。
早川書房「いまだ生者のなかで」ザカリー・クライン/黒原敏行訳
「つまり大胆すぎる。自身がありすぎる。いつも、ギャを一段上に入れすぎる。バランス感覚が欠如している」
文芸春秋「推定無罪」ストット・トゥロー/上田公子訳
当 惑
メイザおばあちゃんは新聞の死亡広告欄を、娯楽欄を読むみたいに熟読する。よその地域共同体には、カントリークラブとか友愛組合があるようだが、バーグには葬儀会館がある。人々が死ぬのをやめたら、バーグ社交生活はストップするだろう。
扶桑社「あたししかできない職業」ジャネット・イヴァノヴィッチ/細美瑶子訳
(二日酔いでまったく記憶がないのに、なぜかギャングに追われ)
・・・いったいなにをしたのかさっぱりわからない。もちろん、だからといって、なにもしていないという証拠にはならない。“さっぱりわからない”というのが、本日の顕著な傾向だ。
二見書房「ピンク・ウォッカ・ブルース」ニール・バレット・ジュニア/飛田野裕子訳
タイニーが戸惑いの海で溺れているのを見た。
早川書房「天から降ってきた泥棒」ドナルドE・ウエストレイク/木村仁良訳
・・・に電話をかけると、本人はいなかったが正体不明の生き物がいたので、その日の午後オフイスにきてもらいたいというメセージを残した。
早川書房「チコの探偵物語」ウォーレン・マーフィー/田村義信訳
(男は私を商品としてしか見ていないというモナに対し)
私は自分の手を見つめながら考えた。世界のどこへモナを連れていけば、毛皮を着て買い物包みを抱え、雪の中を歩く女の子に戻してやれるか。さらにそんな私の思いをどう伝えれば、むなしく聞こえずにすむか。
早川書房「神なき街の聖歌」トマス・アドコック/田口俊樹訳
多 忙
朝の病院のざわめきは最高潮に達していた。・・・他のある商売でもそうだが、仰向けになっているのは、病院でも実はとても多忙な行為だった。
早川書房「虹の彼方に」ナンシー・ピカート/宇佐川晶子訳