崖 石垣 りん
戦争の終わり、
サイパン島の崖の上から
次々に身を投げた女たち。
美徳やら義理やら体裁やら
何やら。
火だの男だのに追いつめられて。
とばなければならないからとびこんだ。
ゆき場のないゆき場所。
(崖はいつも女をまっさかさまにする)
それがねえ
まだ一人も海にとどかないのだ。
十五年もたつというのに
どうしたんだろう。
あの、
女。
※ 石垣りんーー1920年生まれ、2004年没。『表札など』(1968年刊行。翌年H賞受賞)より。
森 荘八のブログ
崖 石垣 りん
戦争の終わり、
サイパン島の崖の上から
次々に身を投げた女たち。
美徳やら義理やら体裁やら
何やら。
火だの男だのに追いつめられて。
とばなければならないからとびこんだ。
ゆき場のないゆき場所。
(崖はいつも女をまっさかさまにする)
それがねえ
まだ一人も海にとどかないのだ。
十五年もたつというのに
どうしたんだろう。
あの、
女。
※ 石垣りんーー1920年生まれ、2004年没。『表札など』(1968年刊行。翌年H賞受賞)より。