素敵に百歳 Part2

 昔、むかし、その昔
「お年寄りをいたわりましょう」と云っていたものである。
 しかし、時は移り、我がニッポンの頭脳明晰なオエライさんは、お年寄りのことを、「後期高齢者」というクールな言葉で表現して、頭脳明晰なれど「思いやり欠乏症」にかかっていることがバレてしまった。
 どうも、我がニッポンのオエライさんは、お年寄りを邪魔者扱いにしているらしい。
 戦争で夫を亡くし3人の子供を、多くの多くの多くの・・苦労を背負いながら女手一つで育て上げて生きてきた私の叔母が、百歳のお祝いの席で
「生きてて良かった」と流した美しい涙を、我がニッポンのオエライさんに見て貰いたかったと思う。
 そして、川崎洋さんの詩の最後の一節を、我がニッポンのオエライさんに捧げたいと思う。

老年について   川崎 洋

年をとった美しい森で
生まれて初めて
詩を書いてみたい
そのあとで
渇いているからおいしい
というのではない水を
一口飲みたい
生きてることが
岩の間から
清水が湧いている
というふうであれ
という祈念
肉体の愛についても
たしかに
20代の頃より
熟してきているのでから
決して決して無理でなく
ふいに思うのだが
齢を刻むことが
何かを失っていくというのは
肯定できない

※川崎洋・・・1930年生まれ。詩集「海を思わないとき」(1978年思潮社刊)より。

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