最後のニュース

昔むかしのそのまた昔のその昔「もうあといくつ寝るとお正月」と思った時代は、はるか遠くに去って、とっても年寄りになった今「お正月など来なくていいよと、残り時間が短くなるだけだから」と言いたくなります。だけど、

「今年1年、元気に生かして頂いて有難う」と言わなくちゃいけないんでしょうね。だけど、私、凡人。そうは問屋が下ろしません。元気なのは良いけれど、ああでもないけど、こうでもないという悩み多き1年を送っています。

令和のスタートの今年、世界もわがニッポン国も、楽しいことはチョッピリ、つらくてやるせない事が多かった気がするけれど、ダーイ好きな井上陽水の「最後のニュース」という曲を思い出してなりません。

この曲は29年前に、報道番組「筑紫哲也 NEWS23」のエンデングテーマーに作られた曲だけれど、29年後の今、聞いても通じる曲だと思っています。

と、いうことで「夢旅人」の今年最後の締めは、この「最後のニュース」です。

 

最後のニュース(抜粋) 井上陽水

 

暑い国の象や広い梅の鯨

滅びゆくかどうか誰が調べるの

原子力と水と石油達の為に

私達は何をしてあげられるの

 

薬漬けにされて治るあてをなくし

痩せた体合わせどんな恋をしているの

地球上のサンソ、チッソ、フロンガスは

森の花の園にどんな風を送っているの

 

今 あなたにGood-Night

今 あなたにGood-Bye

 

機関銃の弾を体中に巻いて

ケモノ達の中で誰に手紙を書いてるの

眠りかけた男達の夢の外で

目覚めかけた女達は何を夢見るの

 

親の愛を知らぬ子供達の夢を

声のしない歌を誰が聞いてくれるの

世界中の国の人と愛と金が

入り乱れていつか混ざりあえるの

 

今 あなたに Good-Night

今 あなたに Good-Bye

 

今年、この「夢旅人」を読んで頂き有難うございました。

あなたにとって、来年も・・・というか、来年こそ良い年でありますようにお祈りいたします。

 

星新一 ComeBack

北九州市立文学館から、芥川賞作家・村田喜代子さんが語る「村田喜代子の文学いろいろ」の講座案内が届いた。

日本芸術院会員でもある村田先生は,1987年に芥川賞を受賞以来、諸々の賞を受賞しているわが街北九州市が誇る作家である。作家というと、近寄りがたい存在と思ってしまうけれど、村田先生はわが街に住んでおられるので、何度かお話を聞いたことがあるが、とってもお上手なうえに親近感がいっぱい!!!

そういう訳で講座に参加したいのはヤマヤマなれど、なにしろ全7回の講座で、永井隆の「長崎の鐘」・葉山嘉樹の「セメント樽の中の手紙」・アラン・ベネットの「やんごとなき読者」・松本清張の「黒地の絵」・スベトラーナ・アレクシェービッチの「チェルノブイリの祈り」というまさに文学っぽい講座がずらずら。

私、文学などという世界にほど遠い人間でしょ。こりゃ無理と思った・・・のではありません。なんと星新一のショート・ショート「おーい でてこーい」が9月に「終末の日」が11月の講座に取り上げられているんですね。

むかし昔その昔、私、星新一大好き人間。それで、星新一にかぶれている私は、今でも、宇宙人と空飛ぶ円盤の存在をかたく信じている訳だけれど、そういう話をすると「アホか」的眼差しで私を見るんですね。でもね、ここで言いたいけれど「宇宙人と空飛ぶ円盤はない」という証拠はないでしょ。だから居るんです。宇宙人と空飛ぶ円盤。

今や、星新一は忘れ去られた存在になっている思っていたのに、講座に取り上げた村田先生って凄い!!! 当然ながら、嬉しさいっぱいでこの2講座だけ申し込んだ次第です。

だけど星新一のショート・ショート、これっぽちも覚えていないでしょ。でも、私、早川書房が1969年に出版した「世界SF全集 全35巻」というのを持っていて、その28巻目が「星新一」。これに100のショート・ショートが掲載されていたので、受講する前に読まなきゃと、おっとり刀で読んだら「おーい でてこーい」が2編目に掲載されていました。村田先生の選択眼って凄い。

この講座では、取り上げた2編のショート・ショートの全文コピーが用意されていて、村田先生のお話がありました。「おーい でてこーい」のストーリーは、

ある村に、台風が去った後、1メートルの大きさの穴が出来た。底は暗くて深さが分からなかったので、最初に小さな石を投げ込んだら、落ちた音がしない。どうも深くて深くて底がないように思われたので、利権屋がその穴を買い取り「原子炉のカスを捨てるのに最適」と売り込んだら、原子力発電会社が争って契約。以後、外務省や防衛庁が機密書類投げ捨てたのをはじめ、役所や会社や個人までもありとあらゆる不要物を投げこみ、生産することばかり熱心で後始末に頭を使うのはだれもがイヤがっていたので、この問題も、穴によって少しずつ解決していくだろうと思われた。

ある日、建築中の高いビル鉄骨の上でひと休みしていた作業員が、頭の上で「おーい でてこーい」という声を聞いた。見あげた空には何もなかったが、小さな石が彼をかすめて落ちてきた。

これって、40年も前に書かれたショート・ショートだけれど、いずれわが身に振りかかってきますよという恐ろしい話ですね。現代にも通じるショート・ショート。星新一ってエライ。

この講座の最後に、村田先生が笑いながら「穴をテーマにした小説は、ほとんど男性の作家。この意味分かる?」と言われて、私、ニヤニヤ。受講生はほとんど女性だったので、皆さんキョトン風・・・。楽しい締めっくくりでした。

「終末の日」は、私が購入したSH全集が出版された後に、執筆されたショート・ショートだけれど、代表作となっているそうです。

平和で穏やかな町だけれど、町の全員が今日がこの世の終わりと知っていた。でも、これが運命だと思い、今迄あまりにも平和で幸福過ぎたのが、神々のお気に召さなったのだろうと思った。

終末の時がきた。空の一角に巨大な〝終〟という字。それと共に神の声が響いた。

「長いことご覧いただいた連続人形劇〝ちいさな町〟本日をもって終了させていただきます」続いてスポンサーの声に移ったが、すぐに途切れ非常で残酷であきっぽい神の手が別の局にすぐ切り替えてしまった。

ホント、まじ、これって私たちの世界で起こることかもしれません。星新一かぶれの私は、これと同じようなことをこのプログに何度か書いたことがあるんですから・・・。

遥か宇宙の彼方で地球という星をウオッチングしている「ナンジャモンジャ星雲」の「チチンプイプイ星人」が、「地球という星に棲息しているヒト科の生物が、やっりぱなし使い放題にこの星を酷使して他の生物や植物を滅ぼす可能性がある。怪しからん。邪悪なヒト科の生物を駆逐して地球という星を救済しよう」と、空飛ぶ円盤に乗ってくるに違いありません。ノホホンとしている場合じゃありませんよ・・・と。

星新一は、昔の人と思っていたけれど、村田先生は「星新一は現代に通じる」ことを証明してくれました。星新一かぶれの私、感謝感激です。

※ 村田喜代子 ーー 北九州市生まれ。女流文学賞・藝術選奨文部科学大臣賞・読売文学賞など受賞。著書は「鍋の中で」「白い山」「蕨野行」など多数。

星信一 ーー 1926年~1997年。1000以上のショート・ショートを書いた。日本推理作家協会賞・日本SF大賞特別賞を受賞。

 

耐えて 生きて・・・

台風19号上陸からもう1カ月。まだ2.700人の方々が避難生活を強いられているそうです。

家を失い生活の糧を失って、見通しの立たない避難生活の中で、

「今日、一日をただ生きていくだけで精一杯・・・」とTVで話された方の言葉の重さ・・・。

私、よく「今日も一日生きて・・・」などと、云うことがあるけれど、なんと軽々しい言葉だったと思わざるを得ません。

小林幸子が2012年に事務所のトラブルに巻き込まれていた時、さだまさしが彼女のために一日で書き上げた曲で、シングルで発売されました。

「茨の木」です。私、この曲が大好きです。

   茨の木   さだまさし

耐えて 耐えて 耐えて

生きて 生きて 生きて

それでも笑えたら良いね

 

季節の変わり目の雨が降る

坂道の上は霧で見えない

母の夢を見た

ただ笑っていた

坂道もいつか終わるよ

 

名も無い花などないように

喩え誰にも気づかれなくても

必ず花は咲く

それでいいじゃない

いつか花は咲く

それでいい

 

耐えて 耐えて 耐えて

生きて 生きて 生きて

それでも笑えたら良いね

 

季節を疑る私がいるから

明日を疑る時がある

母の夢を見た

ただ笑っていた

季節もいつか変わるよ

 

頑張り過ぎない諦めない

夢だけは決して捨てない

いつか明日は来る

それで良いでしょう

いつか明日は来る

それでいい

 

耐えて 耐えて 耐えて

生きて 生きて 生きて

それでも笑えたら良いね

 

耐えて 耐えて 耐えて

生きて 生きて 生きて

それでも笑えたら良いね

大変!!! その3

プロ野球の日本シリーズでパの2位のチームが、日本一になるなんて・・・。そんなおかしな話ってある?

私、憤慨しています。なんたって私、生粋のジャイアンツファンですから。

野球以外のスポーツでは、戦い抜いて競り勝った二者が争ってチャンピオンを決めるというのが、世間一般の常識でしょ。もし、パの1位の西武とジャイアンツの試合だったら、ジィアンツが勝ったに違いありません。

それなのに・・・。今年の秋は、さびしい秋です。

私的には、日本シリーズの結果は、大変な出来事だけれど、我がニッポン国も、二つの台風に想定外の大雨、それに沖縄の首里城の大火事など、とてもすっごく大変な出来事が頻発して、こころ痛めることばかりです。

と、云うことで、今日の夢旅人は、「ハードボイルドに恋をして」の「大変!!!」の第三弾です。

疑 問

女が逃げだしたとき、男はどうすればいいのか、私は知らなかった。一人にしておいてほしいのか、あるいは、追いかけてほしいのかわからなかった。両方とも、試してみたことがあったが、両方ともうまくいかなかった。

早川書房「酔いどれの誇り」ジェイムス・クラムリー/小鷹信光訳

・・・彼は先週わたしがどこにいたかを聞き出そうとした。わたしは、〝別にこれといって、どこにも〟という意味の表現法を無数にあみだした。

早川書房「虹の彼方に」ナンシー・ピカード/宇佐川昌子訳

「なるほど。ところでなんの用?」ミンディが肩をすくめる。私がうなずく。彼女がうなずく。私が肩をすくめる。この調子だと、店を出るころには二人とも首のスジを違えていることだろう。

講談社「リスクが多すぎる」ボブ・パーガー/笹野洋子訳

一人の記者が質問した。テレビの世界では、こういうのを強硬懐疑派というのだろう。

早川書房「チャーム・シティ」ローラ・リップマン/岩瀬孝雄訳

ジェーンから聞いた話はぷんぷん臭うことこの上ない。ひきたてのコーヒーよりもまだにおうくらいだ。ジェーンは電話のすぐそばにごみトラックを駐め、荷台一杯分のごみをぼくの耳の中にぶちまけてくれた。

二見書房「ピンク・ウォッカ・ブルース」ニール・バレット・ジュニア/飛田野裕子訳

「すばらしい。疲れ果てた者にも眠りはないってわけだ」

「大家さん、あんたまだ、疲れるほど生きちゃいないだろうに」

早川書房「いまだ生者のなかに」ザカリー・クライン/黒原敏行訳

苦 労

(船の位置測定器ロランを設置しようとしたが)

これは決して楽な仕事ではない。取付作業はほとんど一日かかった。ぼくは優秀なテクノ馬鹿によって描かれた指示書に大いに悩まされた。

早川書房「破産寸前の男」ピーター・バーセルミ/斎藤数衛訳

(猛烈な二日酔いで目を覚ますと、隣に見知らぬ娘が寝ていたので)

・・・ぼくはそっとベッドから抜けだした。あともうちょっとで椅子というところまで来て、床の上でひと休みした。旅人には休息というものが必要なのだ。・・・なんとかトイレまで行けそうだと判断した。4フイート全力疾走のタイムが2分フラットとは、二日酔いとはいえ、褒められた記録ではない。

二見書房「ピンク・ウォッカ・ブルース」ニール・バレット・ジュニア/飛田野裕子訳

嫌みな変わり者で、超過勤務手当が目当てで週末はかならず残業している。それというのも、この世でもっとも中毒性の高い高価な趣味、つまり女に夢中だからだ。

早川書房「バラは密かに香る」デイヴィッド・M・ピアス/佐藤耕士訳

ベータはまだ40代前半だが、隣近所の罪や苦悩を一身に背負いこんでいるため、実際より老けて見える。

早川書房「図書館の死体」ジェフ・アポット/佐藤耕士訳

 

 

 

井上陽水三昧

先月、なんと嬉しいことには、NHKFMラジオで「今日は一日“井上陽水”三昧」が午後0時15分から9時25分までエンエン9時間にわたって放送されました。

NHKFMでは、さまざまな音楽のジャンルから一つのジャンルだけに絞って「今日は一日~~~三昧」というタイトルで、多数のゲストを招きエンエンと放送。小田和正とか松任谷由美とか取り上げられてきたけれど、ついに、私の大好きな井上陽水が登場!!!

私、16時にヤボなアポが入っていたため、残念無念、口惜しながら15時半に外出し、後半は聞けなかったけれど、娘のサラサさんも出演して陽水の素顔をあれこれ話し、陽水らしからぬ陽水のおかしな話もあって「フーン、そうなんだ」とニコニコ。

陽水って、しかめっつらをして取っ付きにくいイメージがあるでしょ。だけど、TVの番組に出た時のトークってすっごく面白いんですね。とぼけたような話しぶりがおかしくって大好きです。

むかし昔のTV番組で司会者から「あの不可思議な歌詞は、どうして生まれるのですか」と聞かれた時、「歌詞を書きながら、その時にフット頭に浮かんだ言葉を書いてるだけ」と答えたのを聴いて、「そうか、それで脈略ないんだ」とウン納得。

「アジアの純真」の歌詞「北京 ベルリン ダブリン リベリア 束になって輪になって イラン アフガン 聴かせてバラライカ」というようなチンプンカンプン風歌詞でも聴くとなぜか「ウン、これってアジアの純真なんだ」と納得させられるですね。これって不思議。陽水マジック!!!

この楽曲はPUFFYのデビューシングルだけれど、彼女達の歌いっぷりが可愛くて、すかりPUFFYのファンになりました。

でも、陽水の楽曲の中で私が一番好きなのは「白い一日」。作詞は小椋佳だけれど、この楽曲の3番の歌詞が素敵デス。

ある日 踏切のむこうに 君がいて

通り過ぎる汽車を待つ

遮断機が上がり 振り向いた君は

もう 大人の顔をしているだろう

番組の中で、「リクエストをメッセージを添えてどうぞ」というアナウンスがあったのでさっそく送信。ボツになったのか知らないけれど、外出するまでに放送されなかったので、シャクなのでここに書くことにします。

「私、すこぶる付の年寄りです。生まれた年を西暦でいうと、すぐ計算されるので、年号では昭和13年生まれ。今から35年くらい前、花の都の東京で華の単身生活をしていた時、テレビのスイッチを入れたら、椅子に座って、黒いバックで唾を飛ばしながらギターの弾き語りをしている歌手を見て茫然自失。唾が飛んでいるのが見えるんですよ、その歌手が井上陽水で歌は「心もよう」。以来、ズズズーイと陽水のファンになりました。好きな曲は「白い一日」と「5月の別れ」です。

※ 19号台風で、各地の被害状況がテレビで放映されました。もし、19号台風が九州に来て私の家が床上浸水していたら・・・と思うと、他人事ではすまされません。水が引いても、被害者の方々のこれからの生活のことを察すると・・・・いたたまれない気がします。心も折れてお疲れのことと存じますが、どうぞご大事に過ごされることが出来ますようご自愛のほどお祈りいたします。

こんな時に「井上陽水三昧」などと呑気な事を書いてと、お叱りを受けるかもしれませんが、ご勘弁のほどお願い申し上げます。