朝日新聞に谷川俊太郎さんの詩が毎月1回掲載されているが、11月17日の朝刊には「感謝」という詩が掲載されていた、
感謝 谷川俊太郎
目が覚める
庭の紅葉が見える
昨日を思い出す
まだ生きてるんだ今日は昨日のつづき
だけでいいと思う
何かをする気はないどこも痛くない
痒くもないのに感謝
いったい誰に?神に?
世界に? 宇宙に?
分からないが
感謝の念だけは残る
この詩が掲載されて1週間後の20日に、谷川俊太郎さんが11月13日に亡くなられたことが報じられた。享年92歳。
谷川俊太郎さんは、間もなく自分の命が召されると感じてこの詩を書いたのに違いない。
その時、谷川俊太郎さんが感じたのが「感謝」
凄いというか、あっぱれというか、さすが谷川俊太郎さんである。
私、86歳。谷川俊太郎さんとほぼ同年代だが平々凡人。
毎日、目が覚めると「今日は昨日の続き」で谷川俊太郎さんと一緒だが、彼は「何かをする気はない」。私は「アレやコレやしなければならぬ」と、現生にドップリ浸かりきっている。
私、することをいっぱい抱えているので、92歳までしぶとく生き延びたとしても、現生に未練を残しっぱなしとなって、谷川俊太郎さんのように「感謝の念だけは残る」ようになれるのか?・・・ウーン、???。
詩心なんて全くない私だが、何故か現代詩が大好き。若いころ中央公論社から出版された「現代の詩人」全12巻を買い込んでチンプンカン気分を味わいながら読んでいたが、何故かホンワカ気分を感じて「これイイ」という詩に出会うこともある。
だから、谷川俊太郎さんの代表作「二十億光年の孤独」など???だが、大好きな詩もいっぱいある。その中で「ふたつの幸せ」は老人の私にとってピッタリの詩である。
ふたつの幸せ 谷川俊太郎
心の中で何かが爆発したみたいに
いま幸せだ!って思う
理由なんて分かんない
ただ訳もなく突然幸せになる瞬間
晴れてても曇りでもなく雨でも雪でも
まわりは不幸な人でいっぱい
私だって悩みがいっぱい
でも なんだろうね ほんと
あっという間に消えるんだけど
その瞬間の喜びは忘れない
そんなことってない?老人は微笑んで少女を見つめる
爆発とはほど遠いが
いまの穏やかな幸せに包まれて
私、谷川俊太郎さんと違って平々凡人だから「感謝」なんて及びでない。多分「穏やかな幸せに包まれて」その時を迎えられたらと思う。