国家の領有権って

秋真っ盛り。
私、夏は暑いから大嫌い。冬も寒いから大嫌いと言いたいけれど、クリスマスやお正月があるから「マ、いいか」と言いたいが、ウーン、やっぱり冬はイヤ。
だから好きなのは春と秋だけれど、私、とっても年寄りだから、華やかな春より寂しげな秋が似合う。

そう、俵万智の短歌 のように

陰翳の 季節と思う 秋の靄 人の心と 街を包んで

なんですね。

そして、若い人ならば、春に恋して夏に燃え秋に恋を失なってと、村木道彦の短歌のように

失恋の<われ>をしばらく刑に処す アイスクリーム断ちという刑

と、いうこともあるでしょうけれど、でも、これって恋をした証拠だから、シアワセなんです。私、とっても年寄り。恋などしたくっても出来ないんですから・・・。
ウーン、失恋してみたい!!!

ところで、朝日新聞の10月24日の朝刊に、2面を使って全面広告が出ていました。

世界を敵にまわして,生き残ったヤツはいない.。

写真もイラストまなく、ただこの大きな文字だけ。右下の片隅に小さく「世界も試されている。宝島社」と掲載されていました。

宝島社って、ファッション系雑誌の出版社と思っていたけれど、こんな憤懣やるかたないメッセージも出すんですね。私の記憶では、今までに2回ほどこのようなメッセージ広告を朝日新聞に出しています。

1回目はコロナで日本中がジタバタしていた頃の朝日新聞の2021年5月11日の紙面。2頁いっぱいを使い、かっての戦争で動員された子供たちが竹やりを持って構えた薄いモノクロ写真をバックに、真赤な日の丸を模したウイルスが紙面の真ん中に描かれていました。

ワクチンもない。クスリもない。タケヤリで戦えというのか。このままじゃ、政治に殺される。
私たちは騙されている。この一年は、いったい何だったのか。いつまで自粛すればいいのか。我慢大会は、もう終わりにして欲しい。ごちゃごちゃ言い訳するな。無理を強いるだけで、なにひとつ変わっていないではないか。今こそ、怒りの声をあげるべきだ。※1

そして2回目は、2021年9月22日の紙面です。

国民は、自宅で見殺しにされようとしている。今も、ひとりで亡くなっている人がいる。涙がでる。怒りと苦しみでいっぱいになる。この国はいつから、こんなことになってしまったのか。自分で守るしかないのか。※2

今回のメッセージ広告は、コロナではなくウクライナ侵略のことをいっているんですね。敵味方なく多くの兵士が殺されていく戦争。こんな無慈悲なことが許される訳がありません。

朝日新聞に鷲田精一さんの「折々のことば」というコラムが毎日掲載されています。11月12日のコラムには

戦争が起こるということは、個人の身体に対する国家の領有権が極限まで拡張するということだーーー李琴峰

と、ありました。そして

「大空と大地に抱かれて安らかに」死にいくこと。それが人に等しく与えられた権利のはずだと。

※1 「夢旅人」2021年5月15日号の「啖呵を切って」に関連記事を掲載。
※2 「夢旅人」2021年10月1日号の「命令一下、右向け右」に関連記事を掲載。
※ 村木道彦・・・1942年生まれ、歌人。1974年歌集「天啓」を刊行。
※ 鷲田精一・・・1949年生まれ、哲学者。大阪大学、京都市立芸術大学等の名誉教授を歴任。
※ 李 琴峰・・・1989年台湾生まれ、作家。日本在住で芥川賞を受賞。 

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