今日の「夢旅人」は、アメリカのミステリー作家が描いた女性に関する名言・迷言集の続編「女 その2」です。
読んで「ウン、納得」という文章がありますように・・・。
彼女は松林を吹き抜ける風だった。月明かりに照らされた谷を横切る雲の上の青い影だった。そよ風に乗って突然漂ってくるみずみずしい花の香りだった。私が近づいていくと、彼女は顔を上げた。チャイムが鳴った。
早川書房「ブリリアント・アイ」ローレン・D・エルスマン/村田勝彦訳
つまり、印象をひとことでいうならば、自信にみち、なにげないしぐさにも品の良さがにじむ。老舗のデパートの贈答用の包み紙のようにあかぬけていた。
早川書房「泥棒のB」スー・グラフトン/嵯峨静江訳
目の上からブロンドの筋のはいった前髪を払いのけながら、わたしを含めて店にいる男という男を悩殺していったが、視線が絡み合うことはなかった。
早川書房「名ばかりの天使」マイク・リプリー/鈴木啓子訳
チコの顔は小麦色で生気とビタミンと良性の遺伝子でピッカピッカに輝いている。見ているだけでヘルシーな気分になってくる。
早川書房「伯爵夫人のジルバ」ウォーレン・マーフィー/田村義進訳
彼女は信託資金と裕福な旦那と恥辱のもたらす刺激によって作り上げられたゴージャスな女だった。
早川書房「死者は惜しまない」ナンシー・ピカート/宇佐川晶子訳
潤んだ目はどこかしらうつろで、そこに何なりと都合のいい物語を書いてほしい、と男に向って言っているようだった。生れ付き美人なのはあなたの問題だとしてもあたしには関係がない、といわんばかりの態度だ。バストは小さかった。しかし、バストのサイズとそれが引き起こす感情は反比例するのか、と思わせるようなところがあった。
扶桑社「最後に笑うのは誰だ」ラリー・バインハート/工藤政司訳
(ドアが開いて)
信じられないような赤褐色の髪と、一度落っことされて、拾い上げるときにもう一度落っことされたような顔の女が出て来た。彼女は東洋風のドレシング・ガウンを着て、誰かのおならを思わず嗅いでしまったような表情をしていた。
早川書房「泥棒は抽象画を描く」ローレンス・ブロック/田口俊樹訳
(立ち去るジュリアンに向って)
「悪くない」
ふりむいた。「なにが」
「歩き方が」
また冷たい目。・・・
「もうひとつ」ふりむいた。
「きみはいつもこんなに美しいか。それとも今日は特別なのか」・・・
ジュリアンは部屋から出て行き、ピシャリとドアをしめた。
新潮社「追いつめられた天使」ロバート・クレイス/田村義進訳
彼女はでぶでむさ苦しかった、と言っているのではない。ただただ彼女には量があった。それだけだ。
早川書房「泥棒は抽象画を描く」ローレンス・ブロック/田口俊樹訳
謎めいた怒りの言葉を吐いて、ミセス・カルヴァーソンはくるっと向きを変え、他の弔問客に美容整形の驚異を見せつけに大股で歩きさった。
早川書房「死者は惜しまない」ナンシー・ピカート/宇佐川晶子訳
(男なんてクソくらえと言っているのも当然で)
彼女は小柄で、なかなかのべっぴんだった。髪がきれいで、脚が長く、まつ毛も長い。長いほうがいいものはぜんぶ長く、女はこうでなきゃと雑誌に書かれているとおりの娘だった。
彼女なら、男を軽蔑していいさ。
早川書房「汚れた守護天使」リサ・コディ/堀内静子訳
(フランクの秘書は)
都会風の厚化粧の下に、若々しい田舎娘の顔を隠している。ジーンズとブラウスがぴったり体に合っているところから察して、さぞかし雇い主の追跡意欲をそそっているのだろう。
早川書房「凝り屋のトマス」ロバート・リーヴズ/堀内静子訳
(70歳のローズは)
名前とは裏腹に、華やかなところは皆無だが、一部の愛想のいい人々にトゲがあるのと対照的に、物柔らかな雰囲気を漂わせていた。彼女の場合、それは、ごつごつした岩山をよく見たら一片のレースの縁飾りがついていた、というようなものだった。
早川書房「虹の彼方に」ナンシー・ピカート/宇佐川晶子訳