「悪魔の飽食」と聞いただけで
「これってホラー映画のタイトル?」と思われるかもしれないけれど、私、「ホラー映画」は「ホラ映画」と思っていますので「ホラー映画」は大嫌い。だから、今日のプログはホラー映画の話題ではありません。ご安心下さい。
この「悪魔の飽食」というタイトルは、れっきとした混声合唱組曲のタイトルで、なんと原詩は森村誠一、作曲は池辺晋一郎。凄いでしょ。
この演奏会が4月10日に福岡シンホニーホール(アクロス福岡)で開催。私の知人がこの合唱団のソプラノに出演しているので誘われたものの、おっかなびっくり気分で聴きに行った次第である。
13時30分開場と言うことだったけれど、このタイトルでしょ。皆さん「?」っていう感じだろうからきっと空席一杯と思い、気分は悠々と13時40分頃に入ったら、1600席の客席は超満員。ビックリ! ドッキリ!!、大慌て・・・。
ようやく、後ろから4列目に一つ空席があったので、おみそれしました気分でヤレヤレと座ったところ、何と隣の席の女性は、先月私が出演した青い空合唱団の定期演奏会のメンバー。シンホニーホールの観客1600名分の1の出会いである。
これって、スッゴイ偶然でしょ。世が世なら、きっとキューピットのお導きということで、ああしてこうしてああなってめでたし目出度しとなることだろうけれど、なんたって、私、残念無念ながらいい加減年寄り。人類普遍の話題をかわすばかりで、ハイ、それまでよとなってしまった。
どうして、こんなに人気があるのかと不思議に思ったけれど、知らないのはどうも私だけらしく、この合唱組曲の初演は1995年。「第26回全国縦断コンサート福岡公演」と銘打ったこの日の演奏会の指揮は勿論池辺晋一郎。合唱団はこの日のために結成された福岡合唱団と、全国からこの演奏会に以前出演したメンバーによる「全国合唱団」で総数350名。シンホニーホールの広いステージいっぱいに並んで盛大に歌い上げて拍手喝采を浴びていました。
この合唱組曲のもとになったのは、森村誠一郎が1981年に発表したノンフィクション「悪魔の飽食」。ベストセラーとなった本だそうだけれど、私、ホラー気味のタイトル本は敬遠しているので、恥ずかしながら読んでいない。
プログラムを読むと、この本の内容は関東軍の731部隊が中国で行った細菌戦・生物兵器と人体事件を描いた作品だそうである。
ただこの合唱組曲は、関東軍が行った残酷な行為を単に糾弾すると言うことではなく、これに真摯に向き合い反省と不戦の想いを刻むために作られたとのことで、この日の演奏に先立ち森村誠一と池辺晋一郎の対談が行われ、これが最高。ウン良かった。
対談では、駄洒落を頻発する池辺晋一郎と、緊張していますと固い表情の森村誠一との掛け合いが楽しかったけれど、両氏がその想いをこもごも語られていたのが印象的でした。
森村誠一は「戦争は人類の天敵」と語られ、池辺晋一郎は「争いに対抗する手段を考えるより、世界に一つしかない戦争を放棄した第9条を武器にして、戦争をなくすにはどうしたら良いかを考えるのが大切ではないか」と話されていました。
そして、今の日本は「右か左か」に分類され「戦争反対」と言うと左と決めつけられてしまうけれど、「戦争反対」は右とか左という範疇のものではないと思う・・・とも話されていました。
最初は、何も分からずおっかなびっくりで行った演奏会だったけれど、想いを深くしてコンサートホールを去ることが出来ました。