秋は遠くなりにけり

 秋である。スポーツの秋と言うわけで、私の住む地区の「南丘体育大会」が小学校の校庭で10月9日に行われた。
 私にも「グランドゴルフ」なるゲームに出ろという長老からのお達しがあったが、グランドゴルフなんてやったことがない。
 「なに、誰でもできる年寄りのゲーム。やったことがなくっても大丈夫」と簡単に言う。「年寄りのゲーム」には、内心忸怩たるものがあるが、ボスには逆らえない。やむを得ず出ることにした。
 だけど、こう言っちゃあなんだが、ゴルフは私が40代の華やかりし頃,15回ほどコースに出たことがある。
 「1回もゴルフの練習場には行かなかったっけれど、最初にコースに出たときから、ほとんど平均して90前後でコースをまわる」というと、皆さん
 「エッツ、最初から90なんて、スゲー!!! 」と、尊敬の眼差し。
 「ウン、ハーフで90前後」
 ここで、ゴルフを知らない方に言うけれど、ハーフは9ホール、1回のラウンドで18ホールまわる。普通、18ホールで90前後でまわることができれば「うまい」人と言われる。
 と、言うことは、普通の人の倍以上、即ち1ホール180回もボールをブッ叩たきながら、私はコースをまわっているということになるのである。
 私は、天性の運動バカなので、少年時代、野球をしても、球がバットに当たったためしがない。大体、飛んでくる球に当てるなんてアホなことが出来る訳がない信じている。しかし、ゴルフは止まっている球を打つだけである。こんなに簡単なことはないだろうと思っていたが、これが大誤算。
 大体、球も、球を打つクラブも小さすぎる。球もせめてソフトボ-ル位の大きさで、クラブも、スコップ位の大きさがあれば、私も軽々打てると思っているが、とかくこの世はままならぬ。 
 それに、大体、私が打ったボールは、空を飛ばない。地球の上をゴロゴロ。どうも、素直な私の性格をボールも見習って、地球の引力に逆らってまでは飛んで行かないらしい。
 そして、ヤットコサとボールが芝生にたどり着いても、穴の前後左右を行ったりきたり忙しくって、穴に入る暇などある訳がない。すると声あり。
 「もう、穴に入ったことにしよう」
 以来、私のボールが穴に1メートル以内に近づいたら、入ったことにするというルールが出来てしまった。
 そういう訳だから、私のスコアーは、驚異的な数字となり、計算するために電卓が必需品となる。
 ゴルフコンペでは、いろいろな賞が出されるが、普通は1~5等に加えて「ブービー賞」なるものがある。この賞は、ビリから一つ上の人に与えられる賞である。1度でいいからこのブービー賞を取りたいというのが、私の夢であったが、1回も取ることが出来ず、全部ビリばかり。しかし、バカにしてはいけない。15回連続オールビリなんて、世間広しといえども、私だけであろう。貴重な記録保持者といえる。
 「ゴルフの練習場に行ったら、きっとうまくなるよ」と言うけれど、私は、1回のゴルフで、2回分のゴルフが出来るなんて、なんと素敵と思っている位だから、練習などする訳がない。すると、皆さん、私がイヤイヤ付き合ってくれていると誤解して、次第に誘わなくなり、私のゴルフ人生は15回で終わりを告げてしまった。
 さて、今度はグランドゴルフである。これは、球もクラブもチッピリ大きい。距離も20メートル位先の目標に向かって球を転がすだけでいいというわけで、転がすのは私の得意技である。1回きりの勝負で、目標に一番近いボールを打った人が1等となる。
 これなら大丈夫と、得意満面、打ったところが意気揚々と打ちすぎてなんと、私の打ったボールは遥かに目標をオーバーして、観客席まで転がってしまった。本大会最大の飛距離である。これが、ゴルフなら、大いに称えられるところであるが、ホント残念。遅きに失した感じである。悔やまれてならない。
 これだから、スポーツの秋は嫌いである。やはり、食欲の秋と言いたいけれど、固いものは噛むと歯が痛むし、読書の秋と言っても2時間も本を読むと目がチラチラするし、失恋の秋と言いたいけれど、失恋するためには恋をしなければならない。
 ホント、私、67歳。きらめいて秋どころではない。秋は遠くなりにけりである。

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