赤毛のアンと宗左近

 つかの間の秋がきた。
 秋はバラエテイに富む季節で、スポーツの秋、芸術の秋、食欲の秋、失恋の秋といろいろあるけれど、やっぱりふさわしいのは読書の秋。
 我が街北九州市には、その読書の秋にふさわしい「文学館」という施設がある。
 北九州市は、むかし昔その昔、工場の煙突から七色の煙が流れて「ニッポン国の四大工業都市のひとつ」と言われると共に、「文化果つる都市」とも言われていたけれど、実は文学の街でもある。
 北九州市にかかわりのある作家は森鴎外・杉田久女・橋本多佳子・林芙美子・火野葦兵・岩下俊作・劉寒吉・松本清張・多岐川恭・宗左近など・・・ウーン、いっぱいと云いたいところだけれど、スマホ時代の人は知らないでしょうね、きっと。
 文学館には、これらの作家の著書が展示されているのは勿論だけれど、自筆原稿をはじめ多くの貴重な資料も展示されているのである。
 この文学館でNHKTVの「花子とアン」が放映されているにも関わらず、九州での開催は北九州市だけという「赤毛のアン展」が7月に開かれ、11月には「詩人 宗左近展」が開催されたのである。
 「どうして、北九州でアン展が開かれるの?」と言われるかもしれないが、私も展覧会が開催されると聞いて
 「エ?」って感じ。
 NHKのTV「花子とアン」を、むろん北九州市民は見ている訳だけれど、視聴率がTOPという訳でもないから、「赤毛のアン」と北九州市との結びつきなんてナイと思っていたのである。
 それで、開会式に出席したところ、村岡花子の孫の村岡美枝さん、柳原白蓮とゆかりの深い東筑紫学園宇城理事長、プリンスエドワード島州政府観光局の高橋日本代表がいろいろ裏話を交えて挨拶、開会式の挨拶は退屈という通説を吹き飛ばし、大変面白く聞かせてもらった。
 それで、「赤毛のアン展」が北九州市で開かれることになったのは、文学館館長今川英子先生と村岡美枝さんの個人的な関係から生まれたと分かったのである。
 私は、今川先生のファンだからという訳ではないけれど、今川先生の人脈は凄いもので、11月に開かれている「詩人 宗左近展」も今川先生と宗右近さんの奥さんとの結びつきで開催されることになったみたいである。
 宗左近は北九州市戸畑で生まれているし、晩年一行詩「響灘」を書き、産土の地としてのふるさと讃歌を書いているので、北九州市で展覧会が開かれても当然と思われるかもしれないが、
 「ふるさとは大嫌い。故郷喪失者」と自ら呼んでいて、住んでいた市川市の名誉市民を受賞し市川市文学ミュージアムには「宗左近コレクション」として約1万点の資料が展示されていることから、我が街北九州市は無縁と思っていたのである。
 この展覧会の展示された資料も展示のレイアウトも素晴らしかったので、この展覧会が常設でないのが悔やまれる位である。ウーン残念無念。
 北九州市民から言えば、意外性を持つ二つの素敵な展覧会が開催されたということは、今川英子先生の尽力の賜物であろう。
 今川英子先生に乾杯!!!

 ※今川英子・・・北九州市立文学館館長。林芙美子研究の第一人者。著書に「林芙美子巴里の恋」他、共著、論文、エッセイなど。「林芙美子全集 全16巻」編集。

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