まっさらの頁

 秋。秋真っ只中。黄昏時の人生を迎えている私にとって、ピッタリの秋。

 物言えば唇寒しの秋。一日千秋の思いの秋。秋茄子は嫁に食わすなの秋。男心と秋の・・・・ン? 訂正、女心と秋の空の秋。一葉落ちて天下の秋の知るの秋。
 ね、さびしい句ばかりでしょ、だから秋は黄昏の季節。
 そう、そして、春に恋して夏に燃え秋に恋を失う・・・ウン、枯葉散る失恋の秋。
 だけど、恋を失うってことは、恋をしたってことだから、とっくの昔に賞味期限が切れ、恋あこがれ症候群にかかっている私からみれば、羨ましい次第である。
 惚れっぽくて振られっぽい私は、春に恋して夏に燃え秋に恋を失っても平気だったけれど、心寂しい秋を迎え、眠れぬ夜を重ねている人もいるに違いありません。
 でも、ままならぬのが人生と心に折り合いをつけ、悲しみを封印しこれからの時間を大切にしていけば・・・ウン、過ぎた日は戻らないけれど、きっと、ときめきを抱きしめる時がくるに違いありません。

これから     川崎 洋

これまでに
悩んでも悩みきれない傷あとを
いくつか しるしてしまった
もう どうにもならない
だが  
これから
どうにかできる 書きこみのない
まっさらの頁があるのだ
と思おう
それに
きょうこの日から
いっさいがっさい なにもかも
新しくはじめて
なにわるいことがある

 ※ 川崎洋ーー1930年生まれ。1980年出版の詩集「植物小屋」より掲載。詩集「ビスケットの空カン」で第17回高見順賞を受賞。他に放送作家として芸術奨励文部大臣賞なども受賞している。

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