風薫る5月に・・・

 いい加減年寄りの私にとって春は眩しすぎるけれど、5月は爽やかに緑が目に沁みて、薫りたつような美しい季節。私のよれよれハートも、チョッピリ甦る気がする。
 そして、鯉のぼりが爽やかな風に乗っておよいで・・・と、言いたいところだけれど、街はすっかりコンクリートに覆われて、鯉のぼりを見ることが少なくなってしまった。
 だから、5月5日は「子供の日」のイメージが強いけれど、郊外に出て、鯉のぼりがのどかな風景にとけこむように泳いでいるのを見ると、「ああ、端午の節句なんだ」という季節感が甦り、なんだかホノボノうれしくなってしまう。
 そして、パパやママそしておじいちゃんやおばあちゃんの健やかに育ってという想いをのせて、真新しい鯉のぼりが風に舞い・・・ウーン、これって絵本の世界。日本の古き良き時代の原風景なんですね。
 あの日に戻りたい。

こいのぼり   谷口 廣保

父親の願い
母親の祈り
青空におどる まごいよ
新緑におどる ひごいよ
ー初節句の ご本人は無心ー
1年生は いま
自分で 自分のこいのぼりを作る
たどたどしい その手つき
真剣に光る 美しいその目
しかし やがて
その手は
宇宙船のボタンをおすかもしれない
その目は
すばらしい芸術を生みだすかもしれない
子どもたちよ
その手を
戦争なんかで汚してくれるな
まして
そのだいじな いのちの目を
つむらされてたまるものか
子どもたちよ
五月の空に高々と
あなたの こいのぼりをあげよ

※ 谷口廣保ーー1920年~1998年。教育者。詩集に「白墨のうた」など。

これって ハードボイルド その3

 私はミステリイ大好き人間。それも海外のハードボイルドがダーーイ好き!!!
そこで、書かれている文章の中でお気に入りの台詞を紹介します。

 かわいいお尻だ。黒板に向かっているときの女性の身体の動きは一見に値する。アメリカの大学進学適性検査の平均点が下がったのは、男の教員が増えて黒板を見る理由がなくなったからであるというのも、トレースが信じて疑わない明白な理由のひとつだった。

早川書房「二日酔いのバラード」ウォーレン・マーフィー/田村義進訳

(妻のアリスと意見がくいちがったが・・・)
 人生には、ついついわすれがちなことがある。いかに明々白々であり、いかに単純素朴であり、くりかえしくりかえし、わすれてはならじと自分にいましめても。わたしがついうっかりするのは、なにがあってもけっして妻を相手に議論をするな、ということだ。

早川書房「依頼人がほしい」パーネル・ホール/田中一江訳

 「信頼できる人間はいないのか」
 「いる。三人いる。おれと私とぼく」

角川書店「ミッドナイトゲーム」デビット・アンソニー/小鷹信光訳

(図書館の業務をやるにあたって・・・)
 ・・・僕はある種の柔軟性を仕事に導入した。柔軟性というのは、自分のやっていることがしょっちゅうわからなくなって、適当にゴマカシてしまう、という意味である。

早川書房「図書館の死体」ジェフ・アポット/佐藤耕士訳

 「どうにもならないことをくよくよ考えるのは、貴重な時間をむだにして心の傷口をひろげるのにすぎないわ」

早川書房「騙しのD」スー・グラフトン/嵯峨静江訳

 完璧なキャリアウーマン、それでいてかすかに退廃的な雰囲気を漂わせている女を演じていることに執着しているが、そのイメージは男を困惑させる。国家予算に関する質問をすべきか、はたまたベッドに行きたいかどうか訊いてみるべきか、男たちはみな迷う。それを一発であてられなければ、もうアウトなのだ。

二見書房「ピンク・ウォッカ・ブルース」ニール・バレット・ジュニア/飛田野裕子訳

 「もう寝た?」
 「いいえ。・・・でも今夜はもう十分運動したわ。風邪で熱まであるのに。今夜のところは思い出を枕に寝ることにしない?」

文芸春秋「吾輩はカモじゃない」ステュアート・カミンスキー/田口俊樹訳

マジ?

 4月1日に、ネットで特ダネ専門のUSO800通信が、驚くべき情報を流した。なお、この情報は近く発効する特定秘密保護法の対象となっているため、これを知った人が他に漏らした場合は、10年以下の懲役刑が科せられるとのことなので、他言してはならないということである。
 最近の天候不順は、単なる地球温暖化によるものではなく、地球の地軸が微妙にずれ始めていることにより、発生していることが判明した。
 これにより、原発に関し、東北大震災の災害に基づき、新たにより厳しい安全規制が制定されたものの、それを超える想定外の災害が起こる可能性が指摘された。
 そうなるとすべての原発が破壊される恐れがあるため、我がニッポン国政府は、原発を全て中止させ、次のような対策を講じることにしたが、諸般の事情により公表は差し控えているということである。
 1 電力10社は、原発が立地している市町村に対し現在支払っている各種補助金・助成金は「自立助成金」として名称を変更し、今後10年間は同額を支払うものとする。その間に、当該市町村は「自立助成金」なしで自立できる方策を講じるものとする。なお、原発を稼働させるために見込んでいる安全対策費1.6兆円は不要となるため「自立助成金」の支払いに充てるものとする。
 2 電力会社は、直ちに廃炉工事にかかり、原発を稼働していた時に契約していた関連会社に工事を請け負わせるものとする。
 3 原発稼働中止によるコストアップは電力料に転嫁せず、30年を償還期限とする電力国債を発行して赤字補填をする。なお、国債は原発により電力を供給されていた地域を対象として発行し、国債購入を義務付ける。なお、発行された国債の消化方法については、当該地域が責任に持って講じるものとする。

春はまだ遠く・・・

 東日本大震災から3年・・・。
 長いようで短い3年だったけれど、3年前より復興している・・・というより、振り出しに戻ったと言うか、ようやくスタート台に立てるようになったと言えるのかもしれぬ。
 5年たち10年たつと、想定外と言われた東日本大震災も、風化していくのかもしれない。だけど、東北の人たちが笑顔を浮かべたとしても、その痛みは心の中に深く重く沈み風化していくことはないのであろう。
 そう、悲しみと痛みと怒りを封印したままて・・・。

 どうぞ、心に春が戻ってきますように・・・

墓碑銘     吉原 幸子

返しておくれよ 時よ
わたしのあげた 微笑
わたしのあげた くちづけ
おまへにたべられて
すべてをなくした
たくさん持ってゐたから たくさんなくした

わたしは 泣かない瞳のきらきらをもってゐた
こころのように泡だつラムネをもってゐた
高い音のでる口笛をもってゐた
疲れない愛をもっていた
わたしはいま ひとつのお墓をもってゐる
―――ココニワガ ハルノヒネムル―――

 ※吉原幸子・・・1932年6月~2002年11月。第4回室生犀星賞受賞、掲載の詩は詩集「幼年連禱・四」より。

勝っても負けても・・・

 オリンピック「SOCHI 2014」が終わった。
 私は、スポーツ音痴なので、スポーツ番組のTV中継は、我が愛するジャイアンツが勝っている試合しか見ないことにしている。
 そういう訳で、オリンピックもニュースで見るだけ・・・と、言いたいところだけれど、実況を一つだけ見た試合がある。
 モチ、浅田真央さんのフィギュアスケート。
 私は生まれつき女性に弱く、特に可愛い女性には弱いから、浅田真央さんの大大大ファン。
 彼女の出る1回目の試合は、見るまでもなくTOPだろうから見なくてもいいだろう、だけど、2回目の試合は見納めになるかもしれないから、これだけは見ようと思っていたのである。
 ところが1回目の翌日の朝のTVを見てホント大大大ビックリ!!!
 なんと16位だって・・・。
 でも、私が見た翌日の朝のNHKTVのニュースは立派。彼女が失敗したシーンは映し出さなかったのデス。NKKのオエライさん達は、今や
 「なにやってんの!」という不可解な世界を演じているけれど、このニュースを担当したデイレクターは偉い。人の心の痛みを知っているに違いない。 
 でも、それから後のTVニュースは、エンエンと映し出して
「いい加減にして・・・」と大大大ファンはプンプン。
 第2回目の試合は、なんたって翌日でしょ、あんな大大大ショックから立ち直ることが出来るの?と思いながら(真央さん、ごめんなさい)、彼女の2回目のスケートを心をパクパクさせながら見たところ、なんと
 華やかに伸びやかに舞い上り滑って、心に涙!!!  
 もし、1回目もスイスイと滑り2回目もスイスイスイと滑り、金メダルを貰って
 「めでたし、目出度し」となって感動するより、茫然自失から立ち直って6位になった方の感動の方が大きいなんて・・・。
 こんなことって、有る?

 「オリンピックで重要なことは、勝利することより、むしろ参加することに意義がある」と言う言葉や、
 オリンピックの創始者 ピエール・ド・クーベルタン男爵の
 「自己を知る、自己を律する、自己に打ち克つ、これこそがアスリートの義務であり最も大切なことである」という言葉は、よく知られているけれど、このオリンピック精神をスケートで示してくれたのは、浅田真央さん、あなたです。
 あなたにはオリンピック精神の金メダルを・・・。
 ほんとうにありがとう。