3月というと、とっても年寄りの私は、昔むかしキャンデイーズの歌った「春一番」の歌詞「もうすぐ春ですね 恋をしませんか」の歌を思い出して、恋など出来る訳でもないのに、なぜかウクウキ気分になってしまう。
でも、春近しといえども気温の変化が激しくて、春模様になったり、冬模様になったり、どの服装で出かけるか悩まねばなりません。
と、いうことで、今日のプログ「ハードボイルドに恋をして」の第8弾は、「どうしよう?」です。
躊 躇
・・・しかし、女の子に戻れと説得するのは、いわば、僕の専門とは反対なんですね。
早川書房「大はずれ殺人事件」クレイグ・ライス/小泉喜美子訳
「どうして弁護士をよこさなかったのかしら。・・・正直いって、トレースさん、意外だったわ」
「友だちからはトレースと呼ばれている」
「お友だちになったときまで、その権利は保留します」
早川書房「二日酔いのバラード」ウォ-レン・マーフィー/田村義信訳
朝の時間が流れ、夜の決意が太陽と日常性のなかに溶けていってしまうと、心にとって言いたいことを言うのがいよいよむずかしくなり、むりに言おうとすればどもったり、顔を赤らめたり、唇に指を当てたりということになってしまう。
早川書房「シンシナティ・ブルース」ジョナサン・ヴァイリン/真崎義博訳
錯 覚
グラスにはおかわりが注がれていた。親父はトレースを上客とにらみ。喜びと友愛とおしゃべりで客の人生を豊かにしてやろうという気になったらしい。
早川書房「二日酔いのバラード」ウォ-レン・マーフィー/田村義信訳
面と向かってみると、女の音声は電話とはうってかわって聞えた。同じ名画でも、雑誌で見るのと、画廊で見るとではやはり別のものなのだ。
早川書房「シュガータウン」ローレン・D・エスルマン/浜野サトル訳
電話が二度鳴り、女が対応した。「もしもし」女の声は若くて、可愛かった。若い声の女はすべて可愛く聞こえるので、あとで不幸な発見につながるものなのだ。
早川書房「逃げだした秘宝」ドナルド・E・ウェストレイク/木村仁良訳
変 心
その頃には、プライはロスアンゼルス大好き、テレビ大好き、わたしの人生最高という心境になり・・・彼女はまたたくまに、ニューヨーク嫌い、東海岸嫌い、さらのは故郷のメリーランド嫌いになってしまった。
二見書房「殺人シーンをもう一度」サミュエル・ホルト/広瀬順弘訳
約束は破られるためにある、とだれかがいった。どうせどこかの女だろう。
早川書房「バラは密かに香る」デイヴィット・M・ピアス/佐藤耕士訳
図 星
(電話で食事をする約束を取り付けて)
「オーケイ。ついでだけどジャッキー---心をそそるような服装にしてくれよな」彼女の唸り声が聞こえてきた。「ぼくにはなにを着てもらいたい?」わたしは快活に言い添えた。
「とくにないわ」彼女は言った。「ただし、身につけてもらいたくないものならあるわね」
「なんだろう?」
「あの愚かしいにやけ笑いよ」と彼女は言った。
「ちょどいま顔に浮かべているような」
早川書房「友と別れた冬」ジョージ・P・ペレケノス/松浦雅之訳
過 ち
少なくとも、あたしは同じ間違いを二度犯すことはめったにない。---モレリのことは例外にして。モレリはときどき、あたしの人生に押し入ってくる習性をもっていた。そしてあたしも、彼にそうさせるという習性をもっているのだ。
扶桑社「あたしにしかできない職業」ジャネット・イヴァノヴィッチ/細美遥子訳