橋の下のアルカディア

 2016年のJASRAC賞が先月発表され、中島みゆきの「糸」が銅賞を受賞した。金賞は、三代目 J Soul Brothers from EXILE の「R.Y.U.S.E.I.」、銀賞はAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」である。
 JASRAC賞は、日本音楽著作権協会が有線放送やカラオケ、CM等で使われて著作権使用料の多かった作品の作詞家・作曲者・出版者に送られる賞である。
 「R.Y.U.S.E.I.」や「恋するフォーチュンクッキー」は、昨年ヒットした曲だから受賞するのは当然と云えるかもしれないが、「糸」は、なんと24年前に発表された曲である。これがウェディングソングの定番となって、結婚披露宴やカラオケなどで多く使われ、昨年度の著作権使用料が3番目に多かったと言うことで受賞につながったらしい。
スッゴーイ!!! さすが中島みゆき!!!
 「糸」の

縦の糸はあなた 横の糸は私
逢うべき糸に 出会えることを
人は 仕合わせと呼びます

 の歌詞を聴くと、エンエン24年間も歌いつながれてきたのも「当然」というものである。
 と、云う訳で大の中島みゆきファンの私にとって、これは嬉しいニュースだったけれど、さらに嬉しいことのは、中島みゆきの 夜会 VOL.18「橋の下のアルカディア」の劇場版が、我が街でも上映されることに決定。九州の片隅に住んでいながら「夜会」の雰囲気にひたれるなんて・・・と、胸ときめかして見に行った次第である。
 いつもはシニア料金1,000円也で映画を見ているでしょ、でも夜会は金2,500円也。タカーイと云いたいけれど、赤坂ACTシアターの公演に行った人から顰蹙をかいそうだから、本音は隠して建前でヤスーイということにしよう。
 映画館では、5.1chサラウンドで大スクーリンで、彼女のアップもいっぱいあって、もう言うことなし。赤坂ACTシアター最上階の片隅のシートより良いのかもしれぬ・・・ウン、本音でヤスーイということに変更することにします。
 今度の夜会で、劇のセリフとなり挿入歌となる歌は全部新曲でなんと46曲。脚本・作詞・作曲・演出も全て中島みゆき。ウン、天才です。彼女。
 舞台は、石造りの橋の下にある地下壕に作られた昭和のレトロ溢れる寂れた地下商店街。この地下壕が地下水路に改修されるため、ここに住む占い師の中島みゆきと酒場の代理ママの中村中に、ガードマンの石田匠が立ち退きを迫るという物語である。
 中島みゆきが、このテーマは「集団が個を捨てる、個が集団を捨てる」と云っているように、橋の下に住む二人を追い出そうとするもののそれを拒否した二人が、地下壕に隠されていたゼロ戦戦闘機で、地下水に溢れる地下街から最後に脱出するシーンでENDマーク。
 ここで、唐突にゼロ戦が登場したのには、驚いたけれど

私の願いは空を飛び 人を殺す道具ではなく
私の願いは空を飛び 幸せにする翼だった

 という歌にあるように、中島みゆきのいろいろな想いを・・・そう、個が集団を捨てる・・・ゼロ戦にのせて表現したに違いないと思った次第である。
 と、なんだかんだと考えるのはヤボなこと。中島みゆきと中村中の演技力と歌唱力は、凄かった!!!感動ものデス。
 単純に、楽しませて貰いました。ウン、もう一度言うけれど、中島みゆきって天才です。

なんたってアイドル?

 朝日新聞の5月28日の「be on saturday 」の「フロントランナー」に、小泉今日子が2頁にわたって取り上げられていたので、すっごくビックリニッコリ。
 この「フロントランナー」は、いろいろな業界の先頭をきって活躍する人・・・それもあまり馴染みのない人・・・を取り上げ、その人となりを紹介するコーナーだけれど、今迄はどちらかと云えばカタイ人ばかりだったでしょ、それが小泉今日子だなんて・・・。
 小泉今日子のファンである私、すっかり嬉しくなってしみじみ読ませてもらったけれど、キョンキョンと呼ばれていたキュートなアイドル歌手の彼女、なんと今年50歳。
 彼女は、歌手であり俳優でもあり文筆家でもあるけれど・・・ウーン、最近歌手はタナ上げ、文筆家の方で話題多いみたい・・・今回、制作者として舞台「日の本一の大悪党」に出演するばかりか、演出とプロデュースもするということで、取り上げたらしい。
 私が彼女のファンになったのは、18年ほど前に映画「怪盗ルビー」を見に行った時である。
 この映画は、作家ヘンリー・スレッサーのミステリー「怪盗ルビー・マーチスン」を映画化したものだったし、監督はイラストレ-ターの和田誠。私は彼のイラストも大好きなので、どんな映画を作ったのかと興味津々で見に行った次第である。
 勿論、期待どおり、斬新なカット割りの画面でお洒落に仕上がっていて、胸をときめかしながら見たけれど、もっと驚いたのは主演の小泉今日子。小泉今日子に目をつけた和田誠もエライけれど、なんとこの年のブルーリボン賞を取ってしまった。
 彼女が主演とは知っていたけれど、ヒット曲「なんたってアイドル」のキョンキョンと思っていたでしょ、それがスッゴーイ。キョンキョンではないんデス。
 彼女が怪盗ルビーを演じ、その仲間に真田広之。コメデイ映画となっていて、この二人のやりとりも楽しかったけれど、彼女のありのままな演技が素敵にサマになっていて・・・以来彼女のファンとなってしまいました。 
 アイドルなんてとんでもない、歌はともかく素敵な俳優になると思っていたとおり、以来映画やドラマに出演し、2001年には「風花」で日本アカデミー賞主演女優賞を取り、4年前に中山貴一と共演したドラマ「最後から二番目の恋」では、毎回お洒落な服をまとって登場して素敵いっぱい。
 鎌倉や東京を舞台に軽妙洒脱なドラマとなっていて、日本のドラマなどあまり見たことのない私が、毎週胸を弾ませてイソイソと見た次第だけれど、ウーン、こんな大人の恋のドラマ、最近見られないのが残念デス。
 彼女の歌で一番好きなのは「丘を越えて」。スローバラードのシンプルでホンワカした曲。「ホンワカ憧れ症候群」にかかっている私にピッタリ。作詞が小泉今日子と聞いてウン納得。いかにも彼女らしい素敵な歌詞になっていました。
 
丘を越えて(抜粋)

丘を越えて 会いに行こう
大好きな あの人に
丘を越えて 会いに行こう
スキップして 唄いながら

今でも愛しているよって 手紙をくれた
ずいぶん 遠まわりしたけれど 勇気を出して

 ウーン、私も丘を越えて会いに行きたいなァ・・・。誰か手紙をくれないかなァ。

Happy & Unhappy

 今年のゴ-ルデンウイーク、如何お暮しでしたか。
 私、前半は素敵にHappy Day、後半は惨めなUnhappy Day。良いことが有れば悪いこと有り・・・人生は平等に出来ているみたいです。
 私のゴールデンウイークのスタートは、映画「レヴェナント~蘇えりし者」。
 これって、弾を撃って撃って撃ちまくり、敵ばバタバタ倒れるけれど、我がヒーロには何故かまったく弾が当たらないという私のダーイ好きなドンパチ映画とは違うので、「どうしよう?」と思ったけれど、主演のレオナルド・ディカプリオが、アカデミー主演男優賞を取った映画でしょ。
 私、いい加減年寄りだけれど、世間の話題についていかなきゃならないので、止むなく見に行ったところが、これがスゴイ。
 私にとってレオナルド・ディカプリオと云えば、タイタニックのヤワなイメージしかないのに、この映画では髭モジャモジャの汚れぱなしの顔をして、服ともいえないようなキタナーイ服を着て・・・映画では臭いがなくて幸せ・・・死んでも死なない鬼気せまる壮絶な演技を見せて「ア然」。
 それに、画面はほとんど屋外のシーンなのに、陽がさすこともなく、まったくクラーイ画面ばかり。
 私の主義に反する映画だったけれど、レオナルド・ディカプリオに免じて「マ、いいか」ということにしました。

 ドイツ本場のオクトバーフェストの雰囲気を伝えようと一昨年から開催されている「小倉オクトバーフェスト2016」が、今年も小倉北区の勝山公園大芝生広場で開かれたので行ってきました。
 私、生粋のアルコールダメ人間。ビールは一口目から苦いせんじ薬みたいで「キレがあってコクがある」という宣伝なんて言語明瞭意味不明、インチキと思っている私は、たまたま会場の横の道路を通りかかったものだから、賑やかな雰囲気につられてフラフラと寄ってみました。
 広場では、ドイツ人楽団の賑やかな音楽が流れる中で、沢山の種類のドイツビールの出店がズラズラーと並び、人もズラズラーと並んで飲んだり食ったり大盛況。若い人たちは音楽に乗せられて、輪になって前に人の肩に両手を乗せて踊っていたけれど、楽しさがこちらにも伝わりニコニコ気分になりました。
 会場に入ったら、飲まなきゃソンソンという雰囲気。そこで「ジャーマンソーセージ5種類盛り合わせ」と黄金色のビルスナー“ビールの女王”という「ヴァルシュタイナープレミアムヴェラム」をグラス1杯買って飲んだところ、なんと、ビールが摩訶不思議なことに苦くないのである。
 これって生まれて初めての経験。「スゲー」って訳で、二口目を飲んだところちょっぴり苦くなったけれど、これならビールスキスキ人間になれるかもしれぬと、三口目を飲んだところ、
「なんと苦い!!!」と振り出しに戻ってしまった。残念である。残りはうちのかみさんが、一応フウフウ云いながら、ケチ精神を発揮して飲み干してしまった。
 でも、ジャーマンソーセージは美味しかったデス。

 5月2日にNHKBSの「The covers」に私の大好きな平原綾香が出演。彼女と司会のリリーフランキーと中里依沙とのやりとりもウフフと笑わせて楽しかったけれど、カバーした曲は玉置浩二の「田園」と徳永英明の「レイニーブルー」と杏里の「オリビアを聴きながら」の3曲。
 この「オリビアを聴きながら」が凄かった。感動モノでした。絶品!!!
 この曲は、女性が男性をポイとフル曲だけれど、平原綾香は大人の女性の感情を巧みに表現して、しみじみと聴かせてくれました。杏里ではなくて、綾香の「オリビアを聴きながら」に巧みに変身。聴いていた依紗も涙を流して・・・。
 ウーン、ますます平原綾香が好きになりました。

 5日に北九州市八幡東区にある「河内藤園」に行ってきました。この藤園は数年前から外国人の人気の的になっているらしく、昨年は山間部にあるため、大規模渋滞を引き起こし、大問題発生。
 そこで、今年から入場券は完全予約制となり、コンビニでチケットを購入しなければ行けなくなったけれど、うまくチケットが手に入ったので行くことが出来ました。
 河内藤園の面積は6000㎡。20種類の藤が150本咲き乱れ、藤棚や80mと220mの藤のトンネルが人気スポットで、トンネル内は写真を撮る人で渋滞模様となるようだけれど、私の時は、チケットの入園時間が5日14時~16時と制限してあるだけあって、まあまあの込み具合でラッキイ!!!
 外国人は3割程度。私は、昔1度行っただけなので、園内に溢れる藤の花に感嘆したけれど、一昨年までは毎年行っているうちのかみさんは、今年の藤は元気がないとガッカリしていました。どうも人いきれに負けてしまっているのかもしれません。

 と、ここまではHappyだったけれど、後は悪い。
 6日に、街に出かけてバスを降りた時に、ケッ躓いて前にバタンと倒れ、地球とキッス。上唇が腫れ上がってしまった。
 ネ、後ろに倒れるのならともかく、前に倒れたら手を付いて支えると思うでしょ。そりゃ、美人とキスしようとしたら、つい唇をとがらせてしまうかもしれないけれど、なんたって相手は地球。ホント、我ながら訳が分からない、どうして地球にキスせねばならぬ・・・と云ったら、うちのかみさん曰く
「あなたはジジイ」の一言。どうもジジイは運動神経が鈍くなっているらしい。ショック!!!

 それに加えて、春なのに風邪を引いてしまった。洟はタレ流し気味、咳も無暗矢鱈と出てヒイヒイ状態。洟&咳は夜も見境もなく出て不眠状態。どうも喘息付の洟垂れジジイになってしまったみたい。世も末である。
 それで、行きつけの病院に行って6種類の薬を貰ったけれど、いまだに治らずこのコラムも、鼻をかみかみヒイヒイ咳をしながら書いている始末である。
 ウン、地球ではなく、美人とキッスしたら、驚きのあまり風邪も吹っ飛ぶかもしれぬ。誰かいないかなァ。

想定外+想定外+?

 4月16日の1時25分、私はスヤスヤ真最中のところ、ドカンと叩き起こされてしまった。私、九州の北端の北九州市に住んでいるけれど、熊本地震の本震が伝わってきたのである。
 北九州市は震度4。我が街は地震が少ない所で、私、震度3以上の地震の経験がない。だから、震度4と言えば、私的に言えば地面がデングリ返った心地がする。
 だけど、デングリ返ったのは我が心だけで、我が家では家具が倒れあたり、物が落ちたりすることもなかったけれど、真夜中から明け方にかけ携帯電話から「緊急地震速報メール」が6回鳴り響き、その度に「ビックリ&ドッキリ」。
 女房の携帯電話も同時に鳴り響くものだから、目覚時計以上のすごい音量である。大体、緊急速報メールが鳴ったのは初めてである。このことだけで、すっごい地震が起こりつつあるということが分かったんだけれど、緊急速報メールの音くらいで「ビックリ&ドッキリ」したなど言うと、被災者の方々から叱られるかもしれぬ。
 震度4でこれだから、私にとって震度7なんて恐怖そのもの、「もうこれまで・・・」の震度に違いない。
 私の従兄弟が、熊本市と八代市と震源地に近い上益城郡甲佐町に住んでいる。幸いにも、家の中が滅茶苦茶になった位だけれど、異口同音に云ったのは
「熊本は大きな地震はない」と、思っていたそうである。
 震度7も想定外、震度7が2回も想定外ということで、この地球という星は、どうも人智の及ばぬ存在らしい。人類は海も空も宇宙もある程度解明することが出来るみたいだけれど、肝心の足元は「? ? ? ?・・・」がいっぱい。
 だから、想定外のことは起こらないなんて思うのは、我が地球に対して僭越至極であろう。
 その証拠に東日本大震災も想定外、熊本地震も想定外。震度4くらいでデングリ返る私は、こう続けて想定外が起こると言うことは、想定外はいっぱい有るんじゃないかと、つい疑心暗鬼にして戦々恐々・・・心配と不安がいっぱい。
 ウーン、次の想定外は何? 
 まさか、自称「世界一の基準を誇る厡発」が、その新たに設定された基準を超える想定外の地震や火山にテロ等の爆発で、頑丈な原子炉は壊れなかったけれど、他にウジャウジャある設備がブッ壊れて
「全てオジャン」なんてことにならないでしょうね。

悪魔の飽食

 「悪魔の飽食」と聞いただけで
「これってホラー映画のタイトル?」と思われるかもしれないけれど、私、「ホラー映画」は「ホラ映画」と思っていますので「ホラー映画」は大嫌い。だから、今日のプログはホラー映画の話題ではありません。ご安心下さい。
 この「悪魔の飽食」というタイトルは、れっきとした混声合唱組曲のタイトルで、なんと原詩は森村誠一、作曲は池辺晋一郎。凄いでしょ。
 この演奏会が4月10日に福岡シンホニーホール(アクロス福岡)で開催。私の知人がこの合唱団のソプラノに出演しているので誘われたものの、おっかなびっくり気分で聴きに行った次第である。
 13時30分開場と言うことだったけれど、このタイトルでしょ。皆さん「?」っていう感じだろうからきっと空席一杯と思い、気分は悠々と13時40分頃に入ったら、1600席の客席は超満員。ビックリ! ドッキリ!!、大慌て・・・。
 ようやく、後ろから4列目に一つ空席があったので、おみそれしました気分でヤレヤレと座ったところ、何と隣の席の女性は、先月私が出演した青い空合唱団の定期演奏会のメンバー。シンホニーホールの観客1600名分の1の出会いである。
 これって、スッゴイ偶然でしょ。世が世なら、きっとキューピットのお導きということで、ああしてこうしてああなってめでたし目出度しとなることだろうけれど、なんたって、私、残念無念ながらいい加減年寄り。人類普遍の話題をかわすばかりで、ハイ、それまでよとなってしまった。
 どうして、こんなに人気があるのかと不思議に思ったけれど、知らないのはどうも私だけらしく、この合唱組曲の初演は1995年。「第26回全国縦断コンサート福岡公演」と銘打ったこの日の演奏会の指揮は勿論池辺晋一郎。合唱団はこの日のために結成された福岡合唱団と、全国からこの演奏会に以前出演したメンバーによる「全国合唱団」で総数350名。シンホニーホールの広いステージいっぱいに並んで盛大に歌い上げて拍手喝采を浴びていました。
 この合唱組曲のもとになったのは、森村誠一郎が1981年に発表したノンフィクション「悪魔の飽食」。ベストセラーとなった本だそうだけれど、私、ホラー気味のタイトル本は敬遠しているので、恥ずかしながら読んでいない。
 プログラムを読むと、この本の内容は関東軍の731部隊が中国で行った細菌戦・生物兵器と人体事件を描いた作品だそうである。
 ただこの合唱組曲は、関東軍が行った残酷な行為を単に糾弾すると言うことではなく、これに真摯に向き合い反省と不戦の想いを刻むために作られたとのことで、この日の演奏に先立ち森村誠一と池辺晋一郎の対談が行われ、これが最高。ウン良かった。
 対談では、駄洒落を頻発する池辺晋一郎と、緊張していますと固い表情の森村誠一との掛け合いが楽しかったけれど、両氏がその想いをこもごも語られていたのが印象的でした。
 森村誠一は「戦争は人類の天敵」と語られ、池辺晋一郎は「争いに対抗する手段を考えるより、世界に一つしかない戦争を放棄した第9条を武器にして、戦争をなくすにはどうしたら良いかを考えるのが大切ではないか」と話されていました。
 そして、今の日本は「右か左か」に分類され「戦争反対」と言うと左と決めつけられてしまうけれど、「戦争反対」は右とか左という範疇のものではないと思う・・・とも話されていました。
 最初は、何も分からずおっかなびっくりで行った演奏会だったけれど、想いを深くしてコンサートホールを去ることが出来ました。