素敵! その1

「ハードボイルドに恋をして」の第5弾は「素敵!」です。

素敵なことの出会いが少なくなったと思っているあなた・・・ミステリィ作家のウイットに富んだお洒落な文章を読んだら、ちょっぴり素敵気分になるかもしれません。

幸運

(世界じゅうのあらゆる街のあらゆる本屋の中から、彼女はよりによって私の店にやって来たのだ。・・・私は文明史に関する本をカウンターの中で読んでいた)

彼女は店にーー私の人生にーーはいり込んできたとき、私はそんな本を読んでいた。完璧な春の一日だった。どうして自分から進んでほかの都市に住みたがるやつがいるのか、頭をひねりたくなるような、まるで魔法のようなニューヨークの午後だった。

早川書房「泥棒はボガートを夢見る」ローレンス・ブロック/田口俊樹訳

小さな田舎町で暮らすことの利点は、医者が患者を数字でなく、人間らしく扱ってくれることである。

早川書房「図書館の親子」ジェフ・アポト/佐藤耕士訳

キャム・ノイエスは、グラマシー・パークに面したギリシャ風のタウンハウスに住んでいるのだ。これは、ヤンキーズの先発ピチャーが7回まで投げぬくと同じくらいすばらしいことである。

講談社「フィッツジェラルドを目ざした男」デイヴィッド・ハンドラー/河野万里子訳

そう、世の中は〝もしかしたら〟と〝できたら〟に満ち満ちている。それを頼りに生きているやつらもいる。

文芸春秋「吾輩はカモじゃない」スチュアート・カミンスキー/出口俊樹訳

夢の中は治外法権である。

新潮社「両手いっぱいの言葉ー413のアフォオリズム」寺山修司

人間にはだれにでも夢がある。わたしの夢は、アカデミー賞を受賞して、取るにたらない人びとに対する偽善的な感謝の言葉を述べることだ。実は、私の才能を見抜く頭脳すらない間抜けで、いつもいつもわたしの邪魔ばかりしてくれた人びと。にもかかわらず、私がじっさい乗越えることができた人びとに。

早川書房「犯人にされたくない」パーネル・ホール/田中一江訳

(大学生だったころ)

「あの時代がどういう雰囲気だったかを、ここで説明するつもりはないわ。わたしたちを夢中にさせた主義主張に、あなたはあまり賛成してないから。わたしときどき思うのよ、あんなにーーあんなに生き生きできることはもう2度とないだろうって。・・・やがて夢は崩れはじめた。・・・わたしの理想が一番無残に砕かれたんじゃないかしら。・・・夢を信じたくてたまらないから、ときには目ざめることもできなくなるの」

早川書房「センチメンンタル・シカゴ」サラ・バレッキー/山本やよい訳

俺は、同じように壊れた夢をポケットいっぱいにかかえたリーザという女と結婚したが、それでも自分の夢を追い続け、競馬場に通い続け、いっぱしの賭け事師になろうとするそのたびに、財布を空にし続けている。

文芸春秋「鮫とジュース」ロバート・キャンベル/東江一紀訳

(ポーラのアパートの住民は)

・・・ニューヨークへ来て比較的日が浅く、夢には困らないが金には困っている若い女たちだった。

二見書房「慈悲深い死」ローレンス・ブロック/田口俊樹訳

「夢はけっして死なない。ときには死んだように見えても、じっさいには老いた大熊のように冬眠しているだけだ。夢の冬眠期間が長くなると、目覚めたとき、熊は不機嫌で腹をすかしている」

早川書房「カムバック・ヒーロー」ハーラン・コーベン/中津悠訳

「・・・親父の年来の夢だった。それが現実のものとなったとたん、悪夢に変わろうとしている。これはゆゆしき問題だ。ときとして生は夢とともに潰えることがある」

           早川書房「仮面のディスコテーク」ウォーレン・マーフィー/田村義進訳

(探偵事務所にきた依頼人が)

「わたし、人殺しがしたいんです」

「そりゃ、だれだって」

「冗談じゃないんです。本気でそう思っているんです」

「だれだってそう思っていますよ。当然です。ぼくも長いリストを持っています。女房を筆頭とする」・・・ここまでは、マトモに取りあわなかった。

早川書房「探偵になりたい」パーネル・ホール/田村義信訳

楽 観

(薬の安全性について)

ウェーランドとガロがあと何度かハッピー・エンド保証を行い・・・。

角川書店「暗くなるまで待て」トニー・ケンリック/上田公子訳

わたしは、なにもここがデーズニィランドだなんていっちゃいない。だんだんよくなっているといっただけなんだ。

早川書房「共犯宣言}スティーヴン・グリーンリーフ/佐々田雅子訳

受話器をおきながら、なぜか気分が明るくなり、今後財政的状況も好転するかもしれないという気持ちになってきた。ひょとしたら、わたしはこの国の経済的繁栄回復の先駆けとなるかもしれない。

早川書房「季節の終わり」マイクル・Z・リューイン/石田善彦訳

とはいえ、天候はかなりおやだかだったし、すべての要素を考えてカービーは、下降線上にあった彼の世界を、キンタマをつかんで引き戻した気になってきた。

早川書房「俺には向かない職業」ロス・H・スペンサー/上田公子訳

それでも我々は自分のことは都合よく思いたがるものだ。ポーラ・ウィットロウアーの歳では、これから何事もよくなっていくものだと思い、私の歳では、もうこれ以上ひどいことにはならないだろうと思う。

早川書房「おかしなことを聞くね」ローレンス・ブロック/田口俊樹訳

期 待

天使のジョーが送ってくれた百ドルの大部分をポケットに、そして心に希望を、頭に窃盗罪を描きつつ、ポーカー御開場の場へと向かった。

早川書房「素晴らしき犯罪」クレイグ・ライス/小泉喜美子訳

好意というものは、見返りがあって、初めて好意なのだ。世の中は持ちつ、持たれつ。誰もがやっていることだ。

早川書房「暗闇にひと突き」ローレンス・ブロック/田口俊樹訳

だしぬけに彼女は笑った。我知らず口をついて出た笑いだった。それを聞いたわたしは昔を思い出した。思いがけない、時として場違いな、あっという間に世界を変えてしまうその笑いを待ち望んでいた日々を。

東京創元社「夜の海辺の町で」E・C・ウォード/小林祥子訳

(エミリーは怒っていたものの)

もちろん彼女はいつものとおり嬉しそうな顔を向けてきた。そしてぼくもいつものとおり、ぼくら二人の仲はもしかしたらと思い、それからこれまたいつものとおり、その考えを振り払った。

早川書房「破産寸前の男」ピーター・パーセルミ/斎藤数衛訳

「ボーナスに豪華な夕食と素敵な夜、というのならいいわよ。でも、虹の彼方に金の壺が埋まっているのなら、わたしも分け前がほしいわ」

早川書房「泥棒は抽象画を描く」ローレンス・ブロック/田口俊樹訳

「またもや敗北すれすれから勝利を奪い取ってやるぞ」

「というより、敗北よれよれって感じですわ」

早川書房「嘘じゃないんだ!」ドナルド・E・ウェストレイク/木村仁良訳

(レイが賭けた馬・ベニーボーイは)

レイの希望と夢と安楽な生活への願いを乗せ、ついでに、拝んだり借りたり盗んだりしてかき集めた5セント玉、10セント玉、25セント玉のありったけを背負って、バック・ストレッチにへ入った。

文芸春秋「鮫とジュース」ロバート・キャンベル/東江一紀訳

わたしは昔気質の女なのよ。相手から敬意を払われないのはいやなの。古いペンシルヴェニア駅に対するような敬意を私は払われたい。わたしだって人間なんだから。壊れやすい繊細な人生を生きてるんだから。

早川書房「神なき街の聖歌」トマス・アドコック/田口俊樹訳

ジャックは、右側に顔を向けた。そこにミセス・フリッポが、クリスマスのプレゼントのようにきれいに包装されて立っているはずだというように。

早川書房「お熱い脅迫状」H・フレッド・ワイザー/仙波有理訳

たくさんの車が、私がまだ行ったことのない土地をめざしてフリーウエイを走っている。たぶん、未来のある人間、過去をふりかえらずに生きていける人間だ。

早川書房「友よ、戦いの果てに」ジェイムス・クライムリー/小鷹信光訳

期待することにかけては、私は人後に落ちない。

早川書房「パームビーチ探偵物語」ローレンス・サンダース/真崎嘉博訳

コーヒーを飲めば頭が働くはずだ。本当はビールを飲んで頭の働きを止め、そのうちなんとなくうまくいくだろうという呑気な気分にひたりたかった。

東京創元社「ピアノ・ソナタ」J・J・ローザン/直良和美訳

シッチャカ・メッチャカ

わがニッポン国の誇るソーリ大臣が、突然「解散」を宣言したものだから、ニッポン国は「上よ下よ」と大騒ぎ。

でも、シモジモがいくら騒いでも「これって、私の勝手でしょ」と、シレーと言わて、ハイ、おしまい。

なんたって一番トクをしたのは8月の内閣改造で大臣になったけれど、たちまちクビになった「仕事師内閣」のオエライさんたち。「仕事しないかく」と言われても、選挙ポスターには「元なんとか大臣」と書くのでしょうね。

次の総選挙の頃には、そのポスターを見た人は「大臣になるなんて、なんと凄い。エライんだ!!!」と、尊敬するに違いありません。

だけど、野党のオエライさんたちは、小池ナニガシさんが新党を立ち上げた途端、主義主張はどこえやら、なだれを打つように合流してしまった。なんと節操のない・・などと、嘆いてはいけません。なんたってエライ人は君子なんですから「君子は豹変する」のが当たり前なんです。

かくして、野党はガラガラポン化してしまい、それにつれ票も分散化。ニッコリしているのは、わがニッポン国の誇るソーリ大臣。今までの反省はどこえやら、過去は過去、過去にとらわれては何もできませんと、我が道を突進するに違いありません。

・・・てなことになるのが、分からないんでしょうね。野党のオエライさんたち。

「まずは当選、当選。後は野となれ山となれ・・・」てことはないのでしょうね。

そこで、アメリカのジョークをどうぞ・・・。

国会の記録係の日記から。

  • 1年目「・・・みんないい人だ」
  • 2年目「・・・一部はいい人だ」
  • 3年目「・・・一部の人は腐っている」
  • 4年目「・・・ほとんどの人は腐っている」
  • 5年目「・・・みんな腐っている。これからは安心して分け前にありつける」

ホント、こんなことにならないように、我と思う人を見つけて投票しましょう。

エッ? 何? 「そんな人はいないって・・・」

「ウーン、ベストはいなくても、まあベターな人を・・・」

無料でオペラを・・・

「ただでオペラだなんて、ウソでしょ」と、言うかもしれないけれど、本当である。
だいたい、オペラというものは、舞台や衣装は豪華絢爛に出来ているうえに、登場人物がうじゃうじゃといっぱい出てくるでしょ。それにオーケストラも加わっているので、オペラのチケットはべラボーに高くなってウン万円。外国産だとウン10万円。
私、すっかりビンボーではないけれど、ほどほどにビンボーだから、TVでオペラを見ることはあっても本物のオペラなど見に行ったことがない。
ところが、である。アルモニーサンク北九州ソレイユホール主催で、学生向けに新たに制作されたプチーニのオペラ「ラ・ボエーム」が、北九州市内の7中学校の生徒を招き上演されたのである。
そして、その公演のおこぼれだけれど、公演前日のリハーサルを「公開リハーサル」としてタダで見せてくれることになったのである。
私、無料ということになると、見境もなくすぐ飛びつくという優れた性格を持っているので、見に行ったのは当然であろう。
無論、リハーサルだから衣装やメークなしだけれど、舞台装置も九州交響楽団の演奏も本番そのまま。私、いいかげん年寄りでしょ、だからキャストの顔や衣装はもともとロクに見えやァしないから本番を見ているみたいだし、それに日本語での上演でおまけにステージの両袖に字幕も流れて、すこぶる私向き。
九州交響楽団の指揮は園田隆一郎、演出は伊香修吾、翻訳は宮本益光。場面にそって流れるプチーニの音楽とこれを紡ぐように歌われる歌詞は、まったく違和感がなくて、シミジミとウットリ・・・。
「ラ・ボエーム」は、お針子のミミを巡る4人の芸術家の卵の物語。ミミを演じたのは北原瑠美。子供たちも大勢登場したけれど、これはわが街が誇る「北九州市少年少女合唱団」の子供たち。私、子供たちの親じゃないけれど、オペラに出るなんてと、鼻高々。きっと、子供たちにとっても、一生忘れることのできない出演になったことでしょう。
そしてミミの声のきれいなこと・・・。最後にミミは肺病で亡くなるのだけれど、とっても分かりやすいラブストーリで、これまた私向き。
北九州ソレイユホールの2000席を埋めた中学生の生徒たちは、多分初めて見るオペラだったろうけれど、ストレートに心に刻み込まれたに違いありません。
このオペラは、日生劇場が「ニッセイ名作劇場」として、オペラやクラッシクコンサート、バレーなど全国で中高生を無料で毎年招待しているシリーズの一環で、北九州市でも公演されたというこである。
こんな企画をする日生劇場と協賛の日本生命って凄いなと思ったけれど、このリハーサルを無料で公開しようと持ち掛けたソレイユホールの館長椿照子さんも凄い。どうも日生劇場は、今迄リハーサルを公開したことはなかったらしい。
おかげでホドホドのビンボー人にとって、贅沢な時を過ごすことが出来ました。どうも有難うございます。

素敵にときめいて

先月の朝日新聞の「with 読者会議」のページに「最近、ときめいていますか?」という問いに対し、読者から寄せられた体験談が掲載されていました。
読者から寄せられた体験談を分けると

・きっかけは同窓会
  昔、好きになった人に再会して・・・。
・ときめきは或る日突然に
  近所の人や職場や同じクラブの人に、コンビニの店員さんに病院の看護婦さんに・・・。
・ときめく相手は無限大
  孫やペットにキュンキュン、大人のよそおいをまとった我が子にエッ!、配偶者がお洒落に着飾った時にドキッ・・・。
・SNSや仮想世界を通じて 
  フェイスブックの相手に、スマホゲームの人物に・・・。

今、ときめいているあなたは、どれにあたりますか?

今、ときめいていない人、ときめく相手は無限大ですから、ときめく相手を見つけましょうね。ときめきは「自分へのご褒美」だそうですから・・・。
瀬戸内さんも、以前聴きに行った講演会で話していました。
「わくわく どきどき そわそわ感を失くしたらダメですよ。素敵な男を見たら、年甲斐もなくなんて遠慮しないで、わくわく どきどき そわそわしなさい。彼に相手がいても大丈夫。嫉妬するのも恋の内、いっぱい恋をしなさい」と。
ときめいて、わくわく どきどき そわそわ・・・そう、心は若がえり美しくなって表情も豊かに、そして眉間にしわを寄せることも少なくなるに違いありません。
でも、アンケートに応募した人に共通していたのは、それが「恋以前」にとどまるように
「あくまでも大切なのは今の生活」ということだそうです。相手の生活を思いやりながら、大人として「ときめき」を味わう・・・素敵ですね。

ときめいていない人・・・ひょっとして小泉周二の詩「大すき」の中の一節に書いているようなことが、一つでもあればあなたもときめいているのです。
投稿した読者からの一言です。
「ときめきがあると、日々のいろいろなことを頑張れるんですよ」

   大すき    小泉周二

遠くに見えたらワクワクします

近くに来たらドキドキします

目と目が合ったらズキンとします

あいさつできたらボーッとします

離れて行ったらシーンとします

見えなくなったらキューンとします

※ 小泉周二 ーー 1950年生まれ。小学校教諭。1998年日本童謡賞、三越左千夫少年詩賞受賞。掲載の詩は山本健司により作曲され、2000年にNHK全国音楽コンクール小学校の部の課題曲に選ばれた。

女 その3

今日の「夢旅人」は「女 その3」です。
「アメリカのミステリイ作家の描く女性ってどんな人でしょうね。
あなたの好みのタイプの女性が居ますように・・・。

完璧なキャリアウーマン、それでいてかすかに退廃的な雰囲気を漂わせている女を演じることに執着しているが、そのイメージは男を困惑させ当惑させる。国家予算に関する質問をすべきか、はたまたベッドに行きたいかどうか訊いてみるべきか、男たちはみな迷う。それを一発であてられなければ、もうアウトなのだ。

二見書房「ピンク・ウォッカ・ブルース」ニール・バレット・ジュニア/飛田野裕子訳

(モナが下着姿で現れ)
「ほんとに気に入った?」・・・
「ほんとに」そう答えて私はまたヴィレッジの名画座にでもいるよな気分になった。ボガードの顔が眼に浮かんだ。
「きみは冬の夜の一杯のブランデーみたいな体をしている」

早川書房「神なき街の聖歌」トマス・アドコック/田口俊樹訳

シシーと出会ったときに受ける印象をひとことでいうならば、これぞ母なる大地といったところだろう。豊かな胸に力強い眉、そしてふだんは髪の毛をカフタンかなにかでぎゅっと縛り、ヘッドバンドすることも多い。

早川書房「バラは密かに香る」デイヴィッド・M・ピアス/佐藤耕士訳

自分は男が望むようなタイプの女ではない。なにからなにまで、どこをとって見ても、神々によって生まれながらにそういう女につくられたとかしか思えない。・・・神々は自分をつくるときに、相当手抜きをしたに違いない。もし、リチャードのような男と召し合させようと考えていたなら、今より4インチは背が高く、ブラのサイズも36インチのCカップ、あるいはせめてBカップ、そして燃えるような赤毛のロングヘアの女に生まれてこられたはずだ。

早川書房「汚れた街のシンデレラ」ジェフリー・ディーヴァー/飛田野裕子訳

驚くほどあっさりした紹介が終わるころ、女性はこちらを向いた。・・・私にチャールストン流の微笑を向けてきた。だが、今度こそは本物だった。私の心臓は溶けて流れ出し、さざなみをたてながら腰のところを通過して、爪先をくすぐった。

早川書房「熱い十字架」スティーヴン・グリーンリーフ/黒原敏行訳

・・・全身くまなく小麦色に焼けていて、お尻も大きすぎず、まさにゴージャスという形容詞がぴったりくる、すこぶるつきのいい女だった。・・・健康的でありながら、同時に異国情緒を漂わせている女なんてほかにいるだろうか?

早川書房「バラは密かに香る」デイヴィッド・M・ピアス/佐藤耕士訳

ジェニファー・シェリダンがすでにテーブルについていた。ウェイターたちが彼女に微笑みかけ、隣のテーブルの年輩の女性が彼女に話しかけ、店内の照明までがひとつ残らず彼女に向けられているように見えた。世の中にはこういう力をもつ人間がいるのだろう。
・・・はじめて会ったときよりもいっそう若く見える。本当は23歳ではないかもしれない。ひっよとしたら17歳で、まわりの人たちはわたしを父親だと思うかもしれない。彼女が17歳で、わたしが38に見えるとすれば、親子でも不思議はない。悪夢だ。

扶桑社「ぬきさしならぬ依頼」ロバート・クレイス/高橋恭美子訳

マックスはわたしなど足下にもおよばないほどセクシーだ。・・・言ってみれば、彼女は深い色合いの流れるようなシルクのドレスで、わたしはグレーのフランネルのビジネススーツ。彼女は泡立つフランス産のシャンペンだった。隣にいると、わたしは生ぬるいビールになったような気がした。

集英社「コンピューターから出た死体」サリー・チャップマン/吉澤康子訳 続きを読む