「ただでオペラだなんて、ウソでしょ」と、言うかもしれないけれど、本当である。
だいたい、オペラというものは、舞台や衣装は豪華絢爛に出来ているうえに、登場人物がうじゃうじゃといっぱい出てくるでしょ。それにオーケストラも加わっているので、オペラのチケットはべラボーに高くなってウン万円。外国産だとウン10万円。
私、すっかりビンボーではないけれど、ほどほどにビンボーだから、TVでオペラを見ることはあっても本物のオペラなど見に行ったことがない。
ところが、である。アルモニーサンク北九州ソレイユホール主催で、学生向けに新たに制作されたプチーニのオペラ「ラ・ボエーム」が、北九州市内の7中学校の生徒を招き上演されたのである。
そして、その公演のおこぼれだけれど、公演前日のリハーサルを「公開リハーサル」としてタダで見せてくれることになったのである。
私、無料ということになると、見境もなくすぐ飛びつくという優れた性格を持っているので、見に行ったのは当然であろう。
無論、リハーサルだから衣装やメークなしだけれど、舞台装置も九州交響楽団の演奏も本番そのまま。私、いいかげん年寄りでしょ、だからキャストの顔や衣装はもともとロクに見えやァしないから本番を見ているみたいだし、それに日本語での上演でおまけにステージの両袖に字幕も流れて、すこぶる私向き。
九州交響楽団の指揮は園田隆一郎、演出は伊香修吾、翻訳は宮本益光。場面にそって流れるプチーニの音楽とこれを紡ぐように歌われる歌詞は、まったく違和感がなくて、シミジミとウットリ・・・。
「ラ・ボエーム」は、お針子のミミを巡る4人の芸術家の卵の物語。ミミを演じたのは北原瑠美。子供たちも大勢登場したけれど、これはわが街が誇る「北九州市少年少女合唱団」の子供たち。私、子供たちの親じゃないけれど、オペラに出るなんてと、鼻高々。きっと、子供たちにとっても、一生忘れることのできない出演になったことでしょう。
そしてミミの声のきれいなこと・・・。最後にミミは肺病で亡くなるのだけれど、とっても分かりやすいラブストーリで、これまた私向き。
北九州ソレイユホールの2000席を埋めた中学生の生徒たちは、多分初めて見るオペラだったろうけれど、ストレートに心に刻み込まれたに違いありません。
このオペラは、日生劇場が「ニッセイ名作劇場」として、オペラやクラッシクコンサート、バレーなど全国で中高生を無料で毎年招待しているシリーズの一環で、北九州市でも公演されたというこである。
こんな企画をする日生劇場と協賛の日本生命って凄いなと思ったけれど、このリハーサルを無料で公開しようと持ち掛けたソレイユホールの館長椿照子さんも凄い。どうも日生劇場は、今迄リハーサルを公開したことはなかったらしい。
おかげでホドホドのビンボー人にとって、贅沢な時を過ごすことが出来ました。どうも有難うございます。
作者別: 荘八
素敵にときめいて
先月の朝日新聞の「with 読者会議」のページに「最近、ときめいていますか?」という問いに対し、読者から寄せられた体験談が掲載されていました。
読者から寄せられた体験談を分けると
・きっかけは同窓会
昔、好きになった人に再会して・・・。
・ときめきは或る日突然に
近所の人や職場や同じクラブの人に、コンビニの店員さんに病院の看護婦さんに・・・。
・ときめく相手は無限大
孫やペットにキュンキュン、大人のよそおいをまとった我が子にエッ!、配偶者がお洒落に着飾った時にドキッ・・・。
・SNSや仮想世界を通じて
フェイスブックの相手に、スマホゲームの人物に・・・。
今、ときめいているあなたは、どれにあたりますか?
今、ときめいていない人、ときめく相手は無限大ですから、ときめく相手を見つけましょうね。ときめきは「自分へのご褒美」だそうですから・・・。
瀬戸内さんも、以前聴きに行った講演会で話していました。
「わくわく どきどき そわそわ感を失くしたらダメですよ。素敵な男を見たら、年甲斐もなくなんて遠慮しないで、わくわく どきどき そわそわしなさい。彼に相手がいても大丈夫。嫉妬するのも恋の内、いっぱい恋をしなさい」と。
ときめいて、わくわく どきどき そわそわ・・・そう、心は若がえり美しくなって表情も豊かに、そして眉間にしわを寄せることも少なくなるに違いありません。
でも、アンケートに応募した人に共通していたのは、それが「恋以前」にとどまるように
「あくまでも大切なのは今の生活」ということだそうです。相手の生活を思いやりながら、大人として「ときめき」を味わう・・・素敵ですね。
ときめいていない人・・・ひょっとして小泉周二の詩「大すき」の中の一節に書いているようなことが、一つでもあればあなたもときめいているのです。
投稿した読者からの一言です。
「ときめきがあると、日々のいろいろなことを頑張れるんですよ」
大すき 小泉周二
遠くに見えたらワクワクします
近くに来たらドキドキします
目と目が合ったらズキンとします
あいさつできたらボーッとします
離れて行ったらシーンとします
見えなくなったらキューンとします
※ 小泉周二 ーー 1950年生まれ。小学校教諭。1998年日本童謡賞、三越左千夫少年詩賞受賞。掲載の詩は山本健司により作曲され、2000年にNHK全国音楽コンクール小学校の部の課題曲に選ばれた。
女 その3
今日の「夢旅人」は「女 その3」です。
「アメリカのミステリイ作家の描く女性ってどんな人でしょうね。
あなたの好みのタイプの女性が居ますように・・・。
完璧なキャリアウーマン、それでいてかすかに退廃的な雰囲気を漂わせている女を演じることに執着しているが、そのイメージは男を困惑させ当惑させる。国家予算に関する質問をすべきか、はたまたベッドに行きたいかどうか訊いてみるべきか、男たちはみな迷う。それを一発であてられなければ、もうアウトなのだ。
二見書房「ピンク・ウォッカ・ブルース」ニール・バレット・ジュニア/飛田野裕子訳
(モナが下着姿で現れ)
「ほんとに気に入った?」・・・
「ほんとに」そう答えて私はまたヴィレッジの名画座にでもいるよな気分になった。ボガードの顔が眼に浮かんだ。
「きみは冬の夜の一杯のブランデーみたいな体をしている」
早川書房「神なき街の聖歌」トマス・アドコック/田口俊樹訳
シシーと出会ったときに受ける印象をひとことでいうならば、これぞ母なる大地といったところだろう。豊かな胸に力強い眉、そしてふだんは髪の毛をカフタンかなにかでぎゅっと縛り、ヘッドバンドすることも多い。
早川書房「バラは密かに香る」デイヴィッド・M・ピアス/佐藤耕士訳
自分は男が望むようなタイプの女ではない。なにからなにまで、どこをとって見ても、神々によって生まれながらにそういう女につくられたとかしか思えない。・・・神々は自分をつくるときに、相当手抜きをしたに違いない。もし、リチャードのような男と召し合させようと考えていたなら、今より4インチは背が高く、ブラのサイズも36インチのCカップ、あるいはせめてBカップ、そして燃えるような赤毛のロングヘアの女に生まれてこられたはずだ。
早川書房「汚れた街のシンデレラ」ジェフリー・ディーヴァー/飛田野裕子訳
驚くほどあっさりした紹介が終わるころ、女性はこちらを向いた。・・・私にチャールストン流の微笑を向けてきた。だが、今度こそは本物だった。私の心臓は溶けて流れ出し、さざなみをたてながら腰のところを通過して、爪先をくすぐった。
早川書房「熱い十字架」スティーヴン・グリーンリーフ/黒原敏行訳
・・・全身くまなく小麦色に焼けていて、お尻も大きすぎず、まさにゴージャスという形容詞がぴったりくる、すこぶるつきのいい女だった。・・・健康的でありながら、同時に異国情緒を漂わせている女なんてほかにいるだろうか?
早川書房「バラは密かに香る」デイヴィッド・M・ピアス/佐藤耕士訳
ジェニファー・シェリダンがすでにテーブルについていた。ウェイターたちが彼女に微笑みかけ、隣のテーブルの年輩の女性が彼女に話しかけ、店内の照明までがひとつ残らず彼女に向けられているように見えた。世の中にはこういう力をもつ人間がいるのだろう。
・・・はじめて会ったときよりもいっそう若く見える。本当は23歳ではないかもしれない。ひっよとしたら17歳で、まわりの人たちはわたしを父親だと思うかもしれない。彼女が17歳で、わたしが38に見えるとすれば、親子でも不思議はない。悪夢だ。
扶桑社「ぬきさしならぬ依頼」ロバート・クレイス/高橋恭美子訳
マックスはわたしなど足下にもおよばないほどセクシーだ。・・・言ってみれば、彼女は深い色合いの流れるようなシルクのドレスで、わたしはグレーのフランネルのビジネススーツ。彼女は泡立つフランス産のシャンペンだった。隣にいると、わたしは生ぬるいビールになったような気がした。
集英社「コンピューターから出た死体」サリー・チャップマン/吉澤康子訳 続きを読む
いつか最も静かな記念日に
今日は8月15日「終戦記念日」。むかし昔「敗戦記念日」といったけれど、いつのまにか「終戦記念日」となってしまいました。
多分、私の孫の孫の時代には「アメリカと戦争したって本当?」と聞かれる違いありません。その時「敗戦」と言ったら恰好悪いでしょ。我がニッポン国のエラーイ人が深謀遠慮の結果「敗戦」を「終戦」に言い換えることにしたのでしょう。なんとなく、ズルーイ気がするけれど・・・。
この日、日本のあちこちで「戦没者追悼式」が行われるけれど、戦争を体験した人も少なくなって、その内
「終戦記念日と言ったって・・・」と、風化していくに違いありません。
「終戦記念日」が「戦没者を追悼し、平和を祈念する日」となっている通り、戦争でお国のために命を捧げた多くの犠牲のうえに、今の平和がもたらせている訳ですね。
宇宙飛行士が宇宙から地球を見て「あんな小さな星で、ゴチャゴチャするなんてどうかしている」と思ったそうです。でも、この小さな地球のあちこちで争いが絶えることなく続き、いつ、日本もその渦に巻き込まれるかもしれません。
「終戦記念日」は、別の意味で平和がもされた「平和記念日」でもあるのですね。この「平和記念日」が、永遠に続きますようにと言っても,はかない夢かもしれませんが・・・。
そして、ミュージシャン後藤正文さんもこれを願って「いつか最も静かな記念日に」というエッセイを、朝日新聞に連載しているコラム『後藤正文の朝からロック』に掲載していました。
いつか最も静かな記念日に
今年のアメリカの独立記念日。僕は自分のバンドのワールドツアーにロサンゼルスの滞在していた。
友人の家に遊びに行くと、彼は玄関口に青いTシャツと赤いズボンで現れた。独立記念日に合わせて、アメリカ国旗をイメージしたコーディネートであることがすぐにわかった。
夜には、街のあちらこちらで記念日を祝う花火が打ち上げられていた。イベントなどの大きな仕掛け花火もあれば、個人が勝手に道路脇で打ち上げる小さなものもあり宿泊するホテルのロビーにまで、火薬のにおいが漂っていた。
テレビをつければ、様々なチュンネルで、アメリカ国旗をバックに人気歌手が歌っていた。
アメリカ人はアメリカ合衆国のことが、とても好きなんだなと思った。特別に構えたところのない、無邪気な愛国心をまぶしく感じた。少しだけうらやましくもあった。
日本人はどうだろうか。
多くの市民が近しい感情を共有するのは、真昼の終戦記念日だけかもしれない。それでも、各地で捧げられる静かな祈りが、お祭り騒ぎよりも僕たちには合っているように感じる。
アメリカの独立記念日は約240年の歴史がある。
同じくらい祈り続けていけば、観光客がうらやむ平和の祭典になるかもしれない。きっと世界で最も静かな記念日だろう。僕は、そんな日を夢想する。
※ 後藤正文ーーミュージシャン、ボーカリスト、ギタリスト、作詞家、作曲家。「ASIAN KUNGーFU GENERATION」のメンバー。
精霊の守り人
北九州市立文学館で7月22日に「上橋菜穂子と<精霊の守り人>」展の開会式と開会記念講話が行われた。
私は、文学館の友の会に入っているので、特別展が開催されるときは、開会式の招待状が届く。
文学館の館長今川英子先生は、私的に言えば、素敵な女性にして、かつ彼女の企画する特別展は見に行く前から「素晴らしい」ということになっているから、いつも期待に胸を弾ませてイソイソと出かける。
念の為に言っておくけれど、イソイソと行くのは今川英子先生に会えるから行くわけではない。あくまでも展覧会を見に行くのである。これ、本当である。
展覧会のテーマとなっているのは、NHK総合TVで4Kで撮影され昨年より2回に分けて放映中のファンタジー大河ドラマ「精霊の守り人」である。今年の11月に最終回となる「シーズン3」が放映されることになっているそうである。
もともと、ファンタジー映画は私の趣味ではない。まあ、かの有名な「ハリーポッターシリーズ」は、世間の話題についていくために見に行ったけれど、ファンタジーファンになるまでには至っていないのである。
しかし、この「精霊の守り人」の予告を見た時、凄腕の用心棒「綾瀬はるか」のカッコいい戦闘シーンを見て、私の大好きな弾を撃って撃って撃ちまくるドンパチ映画のハラハラドキドキシーンと相通じるものがあったので、ファンタジードラマだったけれど見ることにした次第である。
今回の展覧会は、国際アンデルセン賞を受賞した上橋菜穂子の代表作「精霊の守り人」シリーズの関連資料や文化人類学の研究資料、TVドラマやアニメの関連資料など上橋菜穂子の魅力あふれる展示で、驚いたのは異世界「ナュグ」を表現したインスタレーション。
インスタレーションを経験したのは、私、初めてである。上下左右全面鏡張りの小部屋に入ると、どこを向いても私がいっぱい、ドッキリ&ビックリ。
おまけに正面の鏡には、私自身が異世界の人間となって怪しく映し出されいて、私の動きに合わせて、ぴったり動く。異世界が体験出来るという仕掛けである。
私がインスタレーションの室に入ったとき、若い女の子が飛んだり跳ねたり踊いたりして「キャッキャッ」と楽しんでいたけれど、それを見ていると異世界の世界にいるようで、楽しい経験をさせてもらいました。
開会式の北橋健治市長と今川英子館長の挨拶の後は開会記念講話。講師は、NHK大河ドラマ「精霊の守り人」の監督をしている片岡敬司さん。撮影中の映像を交えながらの裏話は、驚くばかり・・・。
綾瀬はるかが戦うとき見せる短槍シーンは、VFXで合成されたものと思っていたら実写らしく、彼女は運動神経抜群ということで、力いっぱい振りまわす槍に、バッタバッタと倒れる敵役の俳優さん達は戦々恐々らしい。
ファンタジーながら、ロケした場所は宮崎や鹿児島が多いそうで、どうもわが九州は、異世界に近いみたいで嬉しくなってしまいました。
このドラマはNHKの大河ドラマより、製作費は高いということだけれど・・・これは、言われなくってもドラマを見ているだけで分かる・・・外国では高い評価を受けているとのことである。外国では、平安時代や江戸時代と言ったってピンと来ないから、大河ドラマといえども受けが悪いらしい。
文学館の展覧会と言えば、今までは作家の自筆の原稿や手紙など、展示物に事欠かなかったけれど、今や、原稿はパソコンで手紙はメールでという時代になって、文学館の展覧会は何をどう展示するか苦慮する時代になっているそうである。
でも、話題を先取りしたこの「上橋菜穂子と<精霊の守り人>」展」は、センスあふれる展示も素晴らしく、インスタレーションを取り入れたりして、画期的な展覧会になっていました。
ここで、コマーシャル!!!
この展覧会は9月3日まで開催されていますから、どうぞ見に行ってくださいね。
そしてNHKのドラマを見てない人は、展覧会に行けばNHKのドラマを見ようと言う気になりますから、どうぞ、見に行ってくださいね。