星新一 ComeBack

北九州市立文学館から、芥川賞作家・村田喜代子さんが語る「村田喜代子の文学いろいろ」の講座案内が届いた。

日本芸術院会員でもある村田先生は,1987年に芥川賞を受賞以来、諸々の賞を受賞しているわが街北九州市が誇る作家である。作家というと、近寄りがたい存在と思ってしまうけれど、村田先生はわが街に住んでおられるので、何度かお話を聞いたことがあるが、とってもお上手なうえに親近感がいっぱい!!!

そういう訳で講座に参加したいのはヤマヤマなれど、なにしろ全7回の講座で、永井隆の「長崎の鐘」・葉山嘉樹の「セメント樽の中の手紙」・アラン・ベネットの「やんごとなき読者」・松本清張の「黒地の絵」・スベトラーナ・アレクシェービッチの「チェルノブイリの祈り」というまさに文学っぽい講座がずらずら。

私、文学などという世界にほど遠い人間でしょ。こりゃ無理と思った・・・のではありません。なんと星新一のショート・ショート「おーい でてこーい」が9月に「終末の日」が11月の講座に取り上げられているんですね。

むかし昔その昔、私、星新一大好き人間。それで、星新一にかぶれている私は、今でも、宇宙人と空飛ぶ円盤の存在をかたく信じている訳だけれど、そういう話をすると「アホか」的眼差しで私を見るんですね。でもね、ここで言いたいけれど「宇宙人と空飛ぶ円盤はない」という証拠はないでしょ。だから居るんです。宇宙人と空飛ぶ円盤。

今や、星新一は忘れ去られた存在になっている思っていたのに、講座に取り上げた村田先生って凄い!!! 当然ながら、嬉しさいっぱいでこの2講座だけ申し込んだ次第です。

だけど星新一のショート・ショート、これっぽちも覚えていないでしょ。でも、私、早川書房が1969年に出版した「世界SF全集 全35巻」というのを持っていて、その28巻目が「星新一」。これに100のショート・ショートが掲載されていたので、受講する前に読まなきゃと、おっとり刀で読んだら「おーい でてこーい」が2編目に掲載されていました。村田先生の選択眼って凄い。

この講座では、取り上げた2編のショート・ショートの全文コピーが用意されていて、村田先生のお話がありました。「おーい でてこーい」のストーリーは、

ある村に、台風が去った後、1メートルの大きさの穴が出来た。底は暗くて深さが分からなかったので、最初に小さな石を投げ込んだら、落ちた音がしない。どうも深くて深くて底がないように思われたので、利権屋がその穴を買い取り「原子炉のカスを捨てるのに最適」と売り込んだら、原子力発電会社が争って契約。以後、外務省や防衛庁が機密書類投げ捨てたのをはじめ、役所や会社や個人までもありとあらゆる不要物を投げこみ、生産することばかり熱心で後始末に頭を使うのはだれもがイヤがっていたので、この問題も、穴によって少しずつ解決していくだろうと思われた。

ある日、建築中の高いビル鉄骨の上でひと休みしていた作業員が、頭の上で「おーい でてこーい」という声を聞いた。見あげた空には何もなかったが、小さな石が彼をかすめて落ちてきた。

これって、40年も前に書かれたショート・ショートだけれど、いずれわが身に振りかかってきますよという恐ろしい話ですね。現代にも通じるショート・ショート。星新一ってエライ。

この講座の最後に、村田先生が笑いながら「穴をテーマにした小説は、ほとんど男性の作家。この意味分かる?」と言われて、私、ニヤニヤ。受講生はほとんど女性だったので、皆さんキョトン風・・・。楽しい締めっくくりでした。

「終末の日」は、私が購入したSH全集が出版された後に、執筆されたショート・ショートだけれど、代表作となっているそうです。

平和で穏やかな町だけれど、町の全員が今日がこの世の終わりと知っていた。でも、これが運命だと思い、今迄あまりにも平和で幸福過ぎたのが、神々のお気に召さなったのだろうと思った。

終末の時がきた。空の一角に巨大な〝終〟という字。それと共に神の声が響いた。

「長いことご覧いただいた連続人形劇〝ちいさな町〟本日をもって終了させていただきます」続いてスポンサーの声に移ったが、すぐに途切れ非常で残酷であきっぽい神の手が別の局にすぐ切り替えてしまった。

ホント、まじ、これって私たちの世界で起こることかもしれません。星新一かぶれの私は、これと同じようなことをこのプログに何度か書いたことがあるんですから・・・。

遥か宇宙の彼方で地球という星をウオッチングしている「ナンジャモンジャ星雲」の「チチンプイプイ星人」が、「地球という星に棲息しているヒト科の生物が、やっりぱなし使い放題にこの星を酷使して他の生物や植物を滅ぼす可能性がある。怪しからん。邪悪なヒト科の生物を駆逐して地球という星を救済しよう」と、空飛ぶ円盤に乗ってくるに違いありません。ノホホンとしている場合じゃありませんよ・・・と。

星新一は、昔の人と思っていたけれど、村田先生は「星新一は現代に通じる」ことを証明してくれました。星新一かぶれの私、感謝感激です。

※ 村田喜代子 ーー 北九州市生まれ。女流文学賞・藝術選奨文部科学大臣賞・読売文学賞など受賞。著書は「鍋の中で」「白い山」「蕨野行」など多数。

星信一 ーー 1926年~1997年。1000以上のショート・ショートを書いた。日本推理作家協会賞・日本SF大賞特別賞を受賞。

 

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