素敵! その2

サムーイです。とってもサムーイです。うんざりするほどサムーイです。いやになるほどサムーイです・・・と、言っても、わが街北九州市で降った雪は3センチ。北国に住む人のことを思うと

「これっきしのこと、寒いなんて言えるか!」と、見得を切りたいところですが、私、とっても年寄り。見得を切るのは若い衆に任せて、私、ブルブル・・・。ごめんなさいね。

そこで、身体が冷たいのは仕方ないにしても、心は温かくという訳で、今日のコラムは「素敵! その2」です。素敵なアレコレをニヤニヤして読んだら、ちょっぴり、心も温かくなるかもしれません。

自 信

わたしが魅力を発揮すると、相手はたいていバターのように溶ける。

早川書房「約束の地」ロバート・B・パーカー/菊池光訳

プレスしたジーンズに、赤のセーターに、ランニングシューズ。靴下は白。自信と余裕を漂わせており、察するに、鏡をのぞき込んでは〝自信と余裕〟と、自分に言い聞かせているような人物なのだろう。

東京創元社「ストリート・キッズ」ドン・ウィンズロウ/東江一紀訳

なんといってもこっちは、頭脳明晰博覧強記の泣く子も黙るプロフェッショナルなのだ。

早川書房「バラは密かに香る」ディヴィッド・M・ピアス/佐藤耕士訳

マルカム・ザカリーはFBI捜査官らしく車からおり、FBI捜査官らしくコーヒーを飲み、FBI捜査官らしく静かにすわって耳を傾ける。素晴らしい。・・・FBI捜査官らしく歯を磨くーー肩をいからせ、肘を高くあげ、左右に動かす。ごしごし、ごしごし。FBI捜査官らしく愛を交わすーー両足首を合わせ、両肘で体重を支える。しこしこ、しこしこ。

早川書房「逃げだした秘宝」ドナルド・E・ウェストレイク/木村仁良訳

・・・ベンドルトンの壊れたハートのかけらを拾い集めて、ノースカロライナ州ローリーへ送り届ける。飢えた芸術家に金を与えるのと同じぐらい、たやすい仕事だ。

東京創元社「仏陀の鏡への道」ドン・ウィンズロウ/東江一紀訳

信 頼

(犬のロボが)

ある夜、かたじけなくも、わたしの敷物の上に身を伸ばしに来てくれるまで、3ケ月も要した。

角川書店「ミッドナイトゲーム」デビット・アンソニー/小鷹信光訳

「信頼できる人間はいないのか」

「いる。3人いる。おれと私とぼく」

早川書房「チコの探偵物語」ウォーレン・マーフィー/田村義信訳

会っていないと壊れてしまう友情もたしかにあるが、なかには会わなくても少しも損なわれない友情だってある。言葉であらわせない親近感がそこにはあるからだ。・・・男の友情を長つづきさせる理由ほど、つかみどころのないものはない。

早川書房「バラは密かに香る」デイヴィッド・M・ピアス/佐藤耕士訳

「心と心の関りができた相手に、アルコール中毒にかかっていることを秘密にしておこうとは思わない。そんなのは馬鹿げてる」

「ええ、そうね。でも、わたしたちってそうなの?」

「そうって、何が?」

「心と心の関りができたの?」

「そのへりに立っている」

「へりに立ってるか」と彼女は言った。「気にいったわ、それ」

二見書房「慈悲深い死」ローレンス・ブロック/田口俊樹訳

良 策

病院には新しい贅沢な病棟の建物が建てられているのに、大学の建物はオンボロのままだった。どうやら、われわれは人生に何をなすべきかを教えるよりも、人々をより長く生かしつづけることに多くの金を費やしているようである。

早川書房「致命傷」スティーヴン・グリーンリーフ/野中重雄訳

(彼女は)

「タフで皮肉で、いかなる侮辱に対しても非常に神経質に反応する」

「わたしが手懐けるよ。キャンデイや花を贈ってお世辞を言う・・・」

早川書房「レイチェル・ウォレスを捜せ」ロバート・B・パーカー/菊池光訳

わたしは農場とか、近頃のお天気とか、あたり障りのないよもやま話をし、クヌードセンもそれに劣らず不屈の話題で答えた。

早川書房「身代金ゲーム」ハワード・エンゲル/中村保男訳

そこには誤解もあったが、反論はしなかった。知恵と成熟の徴候だ。

早川書房「ただでは乗れない」ラリー・バインハート/真崎義博訳

 「ただ、今日は仕事にいきたくないの」

「わかるよ。なんたって誕生日だ。アメリカでは自分の誕生日は休みにするもんさ。げんに、ぼくには誕生日が200日ある友人がいる」

早川書房「天使の火遊び」マイク・リプリー/鈴木啓子訳

賢 明

目が合った。俺は、この女の防御壁を打ち砕くには、何を使って、どれだけ時間をかけ、どれだけ深い穴をあけなければならないかを考えた。一方、俺を見る女の目つきは、そのための道具をこの男は何ひとつ持ち合わせていない、と見透かしていた。それはたぶん俺が涙目で、鼻水なんか垂らしていたからだろう。

文芸春秋「吾輩はカモじゃない」ステュアート・カミンスキー/田口俊樹訳

ニールは出口に向かった。図に乗って運を深追いするほど、世間知らずではない。

東京創元社「ストリート・キッズ」ドン・ウィンズロウ/東江一紀訳

(時間あたり40ドルの探偵料を)

「どうして値上げしない?」

「インフレに強いライフスタイルを維持しているんだ」

「どういうライフスタイルだい?」

「ものを買わないんだよ」

早川書房「匿名原稿」スティーヴン・グリーンリーフ/黒原敏行訳

(図書館の業務をやるにあたって)

・・・ぼくはある種の柔軟性を仕事に導入した。柔軟性というのは、自分のやっていることがしょっちゅうわからなくなって、適当にゴマカシてしまう、という意味である。

早川書房「図書館の死体」ジェフ・アポット/佐藤耕士訳

慰 め

(彼女と別れて辛かったことを話したとき)

「あんたはこんなことを言ったんだ。人間の関係というのは、終わるんじゃなくて、ただ形を変えるだけだと」

「そんなことを?」

「ああ、私にはその言葉がとても慰めになった。・・・そう思うと、大切なものを失った喪失感からいくらか解放された」

二見書房「死者との誓い」ローレンス・ブロック/田口俊樹訳

「人生の目的のひとつは思い出を作ることだ。そのときにしたいと思ったことをする。そうすればあとで思い出したとき、それをしなかったことを悔やむかわりに、いい気分になれる」

早川書房「熱い十字架」スティーヴン・グリーンリーフ/黒原敏行訳

(ベータ・ハーチャーが殺される前に僕と口論したものだから)

・・・おかげでこっちは、あとあとさんざんな目にあうことになってしまった。もっとも僕は、人生の配るトランプ・カードが足りないからといって文句をいうような人間じゃない。それがぼくにとってはせめてもの救いだった。

早川書房「図書館の死体」ジェフ・アポット/佐藤耕士訳

視線がことばなら、触れることがことばなら、与えるスタイルがことばなら、語らいの不足をカヴァーしてくれるのだが。

早川書房「ただでは乗れない」ラリー・バインハート/真崎義博訳

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