女 その3

今日の「夢旅人」は「女 その3」です。
「アメリカのミステリイ作家の描く女性ってどんな人でしょうね。
あなたの好みのタイプの女性が居ますように・・・。

完璧なキャリアウーマン、それでいてかすかに退廃的な雰囲気を漂わせている女を演じることに執着しているが、そのイメージは男を困惑させ当惑させる。国家予算に関する質問をすべきか、はたまたベッドに行きたいかどうか訊いてみるべきか、男たちはみな迷う。それを一発であてられなければ、もうアウトなのだ。

二見書房「ピンク・ウォッカ・ブルース」ニール・バレット・ジュニア/飛田野裕子訳

(モナが下着姿で現れ)
「ほんとに気に入った?」・・・
「ほんとに」そう答えて私はまたヴィレッジの名画座にでもいるよな気分になった。ボガードの顔が眼に浮かんだ。
「きみは冬の夜の一杯のブランデーみたいな体をしている」

早川書房「神なき街の聖歌」トマス・アドコック/田口俊樹訳

シシーと出会ったときに受ける印象をひとことでいうならば、これぞ母なる大地といったところだろう。豊かな胸に力強い眉、そしてふだんは髪の毛をカフタンかなにかでぎゅっと縛り、ヘッドバンドすることも多い。

早川書房「バラは密かに香る」デイヴィッド・M・ピアス/佐藤耕士訳

自分は男が望むようなタイプの女ではない。なにからなにまで、どこをとって見ても、神々によって生まれながらにそういう女につくられたとかしか思えない。・・・神々は自分をつくるときに、相当手抜きをしたに違いない。もし、リチャードのような男と召し合させようと考えていたなら、今より4インチは背が高く、ブラのサイズも36インチのCカップ、あるいはせめてBカップ、そして燃えるような赤毛のロングヘアの女に生まれてこられたはずだ。

早川書房「汚れた街のシンデレラ」ジェフリー・ディーヴァー/飛田野裕子訳

驚くほどあっさりした紹介が終わるころ、女性はこちらを向いた。・・・私にチャールストン流の微笑を向けてきた。だが、今度こそは本物だった。私の心臓は溶けて流れ出し、さざなみをたてながら腰のところを通過して、爪先をくすぐった。

早川書房「熱い十字架」スティーヴン・グリーンリーフ/黒原敏行訳

・・・全身くまなく小麦色に焼けていて、お尻も大きすぎず、まさにゴージャスという形容詞がぴったりくる、すこぶるつきのいい女だった。・・・健康的でありながら、同時に異国情緒を漂わせている女なんてほかにいるだろうか?

早川書房「バラは密かに香る」デイヴィッド・M・ピアス/佐藤耕士訳

ジェニファー・シェリダンがすでにテーブルについていた。ウェイターたちが彼女に微笑みかけ、隣のテーブルの年輩の女性が彼女に話しかけ、店内の照明までがひとつ残らず彼女に向けられているように見えた。世の中にはこういう力をもつ人間がいるのだろう。
・・・はじめて会ったときよりもいっそう若く見える。本当は23歳ではないかもしれない。ひっよとしたら17歳で、まわりの人たちはわたしを父親だと思うかもしれない。彼女が17歳で、わたしが38に見えるとすれば、親子でも不思議はない。悪夢だ。

扶桑社「ぬきさしならぬ依頼」ロバート・クレイス/高橋恭美子訳

マックスはわたしなど足下にもおよばないほどセクシーだ。・・・言ってみれば、彼女は深い色合いの流れるようなシルクのドレスで、わたしはグレーのフランネルのビジネススーツ。彼女は泡立つフランス産のシャンペンだった。隣にいると、わたしは生ぬるいビールになったような気がした。

集英社「コンピューターから出た死体」サリー・チャップマン/吉澤康子訳

・・・20歳は年上に見せようととしているとしか思えない。きっと夫に合わせようとしているのだろう。顔のなかで唯一ほっとするのは、少女のようなそばかすが、鼻と頬にちらほら見えることだ。そこには一夏の思い出といった、可憐な風情があった。

早川書房「図書館の死体」ジェフ・アポット/佐藤耕士訳

だが、女たちは俺のいないままに下相談をすませ、母親という共通の立場から互いに手を結んだ。その結果俺は雪ダルマ西部映画の主人公に仕立て上げられ、凍傷にかかったジョン・ウェインよろしく、家族のため汚名返上の旅に出ることになった。母親同盟に真っ向から立ち向かえば旗色が悪くなる、と相場が決まっている。女というものを多少は知っているつもりだが、彼女らは塹壕を掘って立て籠もり、血みどろの長期戦に持ち込むのだ。

扶桑社「最後に笑うのは誰だ」ラリー・バインハート/工藤政司訳

おまえのせいだよ、おまえは歩く災厄だ。おまえに関心をもつ男はマゾヒストにならなきゃならい。

扶桑社「モーおじさんの失踪」ジャネット・イヴァノビッチ/細美遥子訳

自分が魅力的であることを知らないので、それほど懸命には頑張らないというような意味で魅力的だった。

早川書房「最高の悪運」ドナルド・E・ウエストレイク/木村仁良訳

彼女は、この世の良きもののすべてだった。彼女は春一番であり、10歳の少年だった頃の土曜日の午後であり、冷たい砂にスコッチ色に光る波が打ち寄せる浜辺で過ごす初夏の夕方のひとときだった。

角川書店「スコッチに涙をたくして」デニス・レヘイン/蒲田三平訳

すらりとした指、細い手首。わたしはその手を握った。世界がまた可能性のうずきはじめた。

早川書房「黒いスズメバチ」ジェイムス・サリス/鈴木恵訳

アメリカでもっとも政治的に正しくない女であるわたしのママはこういっている。
「うまくいかないかもしれないと思ったら、太腿をちらっと見せなさい」

早川書房「父に捧げる歌」ルース・パーミングハム/宇佐川昌子訳

彼女は見た目も悪くなかった。 ~すばらしい体形をしていた。脚は長くほっそりとしていて、しかるべき場所がきちんとカーブを描いてた。笑うと両頬にえくぼができ、季節を問わずそばかすがある。マーティンの考えでは、彼女は申し分なかった。

東京創元社「泥棒は几帳面であるべし」マシュー・ディックス/高山祥子訳

マーシャはあまりにも早く、私の人生の肝心かなめの部分を占めるようになっていた。

早川書房「火事場でブギ」スティーヴン・ウォマック/大谷豪見訳

翌朝、何十もの視線を浴びるヴェロニカに、おれもまた視線をそそいでいた。女たちが何を思っているかはいざ知らず、男どもの頭のなかなら手に取るように分かる。

早川書房「記者魂」ブルース・ダシルヴァー/青木千鶴訳

「男は石ころみたいにわかりやすいのよ。複雑なのはわたしたち女のほう。女はひたすら自分を苦しめ単純なものを、わかりにくくしようとするの。空想のなせるわざね。単純明快なものを壮大なミステリイに変えてしまうのよ」

早川書房「父に捧げる歌」ルース・パーミングハム/宇佐川昌子訳

退屈な形容詞を並べてページを消費するなど論外だけれども、女の美しさというものはどうやって言い表せばいいのか。書けることだけ書いてみると、身長は5フート7インチ、髪はところどころ赤毛の混じった明るい茶色、肌は白く、くすみも傷跡もない。そう、医学的無関心を装った書き方もできなくはない。秀でた額、鮮明な眉、バランスの取れた大きな眼、細くてまっすぐな鼻。また、完璧に魅せられたことを白状するような描写も可能だ。赤らむことをすでに覚えた象牙のような肌。見る者を溺れさせるような深い茶色の瞳。キスをするために創られたような唇。いや、やはり私には無理だ。どうぞご自由にご想像願いたい。

早川書房「泥棒はボガートを夢見る」ローレンス・ブロック/田口俊樹訳

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