時の過ぎゆくままに

『ハードボイルドに恋をして 2』は「時のすぎゆくままに」というタイトルで、「人生」「時」「青春」「若さ」「衰え」に関する名言集です。お気に入りの台詞があれば嬉しいけれど・・・。お暇な時にお読みください。

人 生

・・・ゆっくりと歩いてゆくリースを見送りながら、人間は一生のうち何度ぐらい人生をやり直せるものだろうかと思った。

早川書房「酔いどれの誇り」ジェイムス・クラムリー/小鷹信光訳

その日、その日を何げなく過ごしてもそれほどひどい事は起こらない。人生は単調なものだと感ずることはあるだろうが、われわれは、そんな人生が気に入っているのだろう。

早川書房「黒い風に向って歩け」マイクル・コリング/木村二郎訳

「これで彼女はぼくのことを思い出してくれるよ。・・・風が吹きすさび、海が荒れ狂うたびにね。人間は誰にも思い出してもらえないままで一生を終ったりしちゃいけないんだ」

早川書房「小さな土曜日」アーウィン・ショー/小泉喜美子訳

それから、おれの人生の貯蔵庫の中に、ひとつふたつプラスがはいっていないかと扉をあけてみた。それが間違いだった。おれはいきなり中からどっとあふれ出したマイナスの奔流の下敷きになった。

早川書房「怪人ホーホー博士」ロス・H・スペンサー/田中融二訳

どこまで信じてよいかわからないが、すくなくとも、彼女の人生観は九九換算表のように冷たいと思ってよいだろう。

二見書房「スキャンダラス・レディ」マイク・ルピカ/雨沢泰訳

貧すると、人は哲学的になるらしい。
「人生が思いどおりにいくことなんてあるのかな?」

文芸春秋「悪い奴は友を選ぶ」T・ホワイト/松村潔訳


(フェリシアについて)
「彼女の素性を話してくれ」
「それがないんです。彼女はダイアナ妃の次に空虚な人生を送っています。結婚もしていないし、人口中絶の記録もありませんし、仕事をクビになったことも、訴えられたこともありません」
「なんて退屈な人生なんだ」

早川書房「嘘じゃないんだ」ドナルド・E・ウェストレイク/木村仁良訳

「人生は単純よ。ただ、あなたが勝手にむずかしくしてしまっているだけ」

早川書房「騙しのD」スー・グラフトン/嵯峨静江訳

・・・当時のわたしはみずからの命運の一端を知り、それ以上に自分で驚いたことには、残された人生の旅路のかなり鮮明な地図をかいま見るはめになった。

早川書房「友と別れた冬」ジョージ・P・ペレケーノス/松浦雅之訳

人は住まいを変える。人生もまた変わる。

早川書房「暗闇にひと突き」ローレンス・ブロック/田口俊樹訳

あんまり物事を単純化しすぎると、危険なこともあるような気がするぜ。人生ってのは、多少ごちゃごちゃしてたほうがいいんじゃないかね。

文芸春秋「悪い奴は友を選ぶ」T・ホワイト/松村潔訳

人生はロマンティックで映画のストーリーみたいだと思っている。しゃれたディナーや花より、金曜日ごとに給料を持って帰る善良で堅実な男の方がよっぽど価値があるのに。

早川書房「ダウンタウン・シスター」サラ・バレッキー/山本やよい訳

「人生は送るより、読むほうがずっとおもしろい」

早川書房「ブリリアント・アイ」ローレン・D・エスルマン/村田勝彦訳

だが、自分が送っている人生などはかないもので、この完璧な午後を含めて、すべてのことはまたたく間に終わりを告げるのだと、わたしにはわかっていた。完璧な秋を冬が飲みこむようにあっという間に。

早川書房「秋のスローダンス」フィリップ・リー・ウィリアムズ/坂本憲一訳

「元気だなんて、あなた、わたしたちは苦痛に満ちた世界に生きているのよ」

早川書房「証拠のE」スー・グラフトン/嵯峨静江訳

人生は<B級>のメロドラマに過ぎないのだろうか?
もっとも、たとえそうだとしてもいまさら驚くことはないけれど。

文芸春秋「木曜日の子供」テリー・ホワイト/村松潔訳

その話に深入りするつもりはなかった。哲学論議は日が昇ってからしたい。

早川書房「死の蔵書」ジョン・ダニング/宮脇孝雄訳

靴を磨き、爪にマニキュアをし、銀行に預金し、テニスを楽しみ女性を口説くというように、チャスパーはきわめて充実した活動的な生活を送っていた。

サンケイ出版「眠れる犬」ディック・ロクティ/石田善彦訳

「マーク、よく聞くんだ。きみもじきに年頃になるから、人生は不公平なことばかりだってことがいまにわかるだろう。人生は他人の愚痴をゆっくり聞いてやれるほど長くないってこともね。・・・」

早川書房「図書館の死体」ジェフ・アボット/佐藤耕士訳

「でも、人生の大半が過去のものになったとき、人はその中で多くのときを過ごすものよ」

早川書房「ブリリアント・アイ」ローレン・D・エスルマン/村田勝彦訳

ベルリンの壁は崩壊したばかりだし、チェコスロバァキアは自由を宣言していた。だが、赤ん坊の誕生や早々と降りだした雪といった、人生の本質なことにかかずらっていると、そんなことはどうでもいいような気がしてくるんだな。

扶桑社「最後に笑うのは誰だ」ラリー・バインハート/工藤政司訳

とうの昔に人生をあきらめ、今はただ生きているふりをしているだけ、というように顔色が悪く、肥満している。

東京創元社「夜の海辺の町で」E・C・ウォード/小林祥子訳

「ルー、おれのことは放っといて欲しい。おれは自分の人生が悪くなっていくのを見ることにかけちゃ、経験豊富なんだから」
しかし、経験は知恵のかわりにはならない。事実、そのころの私は、あまり賢くなっかた。

早川書房「いまだ生者のなかで」ザカリー・クライン/黒原敏行訳

ときには自分で人生のハンドルを握れるときもある。だがたいていは、それができない。

二見書房「ピンク・ウォッカ・ブルース」ニール・バレット・ジュニア/飛田野裕子訳

(モーは拳銃の秘密携帯で逮捕されて釈放された後、行方不明になったので)
「・・・モーは法廷未出頭者になったのよ。罰金とお説教をくらう程度のものなのに、説明がつかないわ」
「人生なんて、説明のつかないことだらけだ」

扶桑社「モーおじさんの失踪」ジャネット・イヴァノヴィッチ/細美遥子訳

理屈で考えればそれが最良の方法なのだが、理屈で割り切れるものばかりじゃないのが人生のつらいところだ。

早川書房「バラは密かに香る」デイヴィッド・M・ピアス/佐藤耕士訳

電話は切れた。・・・さよならはいいたくなかった。新しい人生も欲しくない。ぼくの望みは、これまでの人生をなんとかして繕い直したいということだ。余分な章をいくつか削って、話がスムースに運ぶようにするのだ。

二見書房「ピンク・ウォッカ・ブルース」ニール・バレット・ジュニア/飛田野裕子訳

だが、人生というものは、その人生を送った当人には、ほとんど評価されないものだ。それは、カルディアにおいても例外ではなかった。

早川書房「探偵の帰郷」ステーヴン・グリーンリーフ/佐々田雅子訳

ひとつだけはっきりしているのは、齢をとるごとに、人生はどんどん複雑になっていくということだ。いままでは、世の中はそんなに捨てたもんじゃないと思っていた。

早川書房「愚か者のララバイ」ウォーレン・マーフィー/田村義進訳

忘れられない夜もあれば、忘れてしまう夜もある。

早川書房「バラは密かに香る」デイヴィッド・M・ピアス/佐藤耕士訳

現実にはつねに二通りがあります。その一つは「あるがままの現実」であり、もう一つは「望ましい現実」です。人が歌や文字の中に見出そうとするのは、つねに「望ましい現実」への足がかりにほかありません。

新潮社「両手いっぱいの言葉ー413のアフォリズム」寺山修司

あらゆる人生には、退屈な会議が降りかかるべきだ。われわれはもっとひどい状態でも生き延びている。

早川書房「最高の悪運」ドナルド・E・ウエストレイク/木村仁良訳

「コンピューターの学位なんかとるから、頭の中がぐちゃぐちゃになるのよ。人生っていうのは最適化の連続ではないわ」

早川書房「お熱い脅迫状」H・フレッド・ワイザー/仙波有理訳

人生には筋書などないことを悟るには、時間がかかるものだ。・・・やがて世の中のできごとが自分のまわりを月のようにーーポーチの電灯のまわりをまわる蛾のようにーーまわっているところを思いえがく。そして最後にしぶしぶ、世界はこっちの存在に気づいてさえいないのだということを認める。わたしたちは、自分の身に起こること以上の存在ではない。自分の知っている以上の人間ではないのだ。

早川書房「黒いスズメバチ」ジェイムス・サリス/鈴木恵訳

「生きていくってのはそれだけで大変な仕事なのよ。それでみんな疲れちゃうのよ。でも彼は大丈夫」

二見書房「殺し屋」ローレンス・ブロック/田口俊樹訳

ディーツはとことん誠実な男であり、妻のメアリーにぞっこんで、そしてそのことが彼の人生における悲劇だった。

角川書店「歓喜の島」ドン・ウィンズロウ/後藤由希子訳

「私が見いだしたのは、時たま人生がばらばらに崩れると、もっと良いものに組み立てる機会が生じる、ということだ」

早川書房「蒼ざめた王たち」ロバート・P・パーカー/菊池光訳

6年という歳月は短いとはいえない。・・・が、ある女の思い出をかなぐり捨てるためには、決して長いとは言えない。

東京創元社「マンハッタン・ブルース」ピート・ハルミ/高見浩訳

辛抱強く待っていれば、事が自然に片づいて、信用を得るか怠慢だと責められるかのどちらかってこともありうる。少なくとも、確率は半々だ。

早川書房「秋のスローダンス」フィリップ・リー・ウィリアムズ/坂本憲一訳

私は彼の借家人。40過ぎ。ときどき思い出したように年を取り、それが腹立たしくてならない。

東京創元社「夜の海辺の町で」E・C・ウォード/小林祥子訳

(文字盤と針のついた時計は)
みるみるうちに一秒一秒が過ぎていくのがーーそれとともに自分の人生がすりへっていくのがーーわかったりしない時計。デジタル時計をする人間は、何秒とか何センチ単位で人と会う約束をしたりするのだろうか。ーー57丁目とブロードウェイの北東の角から3m75cのところで、5・18・22に会おう。

扶桑社「内なる犯罪」ジェリー・オスター/中野裕子訳

歳月から学んだことがあるとすれば、それは、何も期待するな、ということだ。

東京創元社「夜の海辺の町で」E・C・ウォード/小林祥子訳

・・・すでに30分も話していた。最近では、時が経つということだけがヘンリーの人生に起こる唯一の出来事のように思われた。彼の人生には、もはや何も起こらなかった。時は、ただ過ぎていく。

早川書房「ウインブルドンの毒殺魔」ナイジェル・ウィリアムズ/高儀進訳

時間というのは魔女に似ている。そばに来てくれればいいと思っていると、ぜったい姿を現わさないのに、来てほしくない思っていると、あっという間に背後に現れ、首筋にふーっと息を吹きかけるのだ。

二見書房「ピンク・ウォッカ・ブルース」ニール・バレット・ジュニア/飛田野裕子訳

時間は引き取り手のない小包のように積み重なっていった。

早川書房「花嫁は警察署長」シャーリーン・ウィア/青木久恵訳

「・・・忘れようとしても忘れるわけにはいかないことがある。昔のことって消えるわけじゃないのよね。そして、いつかは必ず甦るものなのよ。きれいさっぱり忘れた気になっていても、向こうのほうからやってくるの・・・人生なんてなんて複雑にできているのかしら・・・」

早川書房「神なき街の聖歌」トマス・アドコック/田口俊樹訳

彼女は、何もかもがまだ慎ましく素晴らしかった時代からやってきた女のように思われた。きちんと刈り込まれた芝生にスプリングクラーが潤いをあたえ、スクリーンドアはプラスッチクではなく雨か埃の匂いがし・・・雪がけして汚れてはおらず、落葉がじくじく湿っぽかったりしなかった、あの素朴な時代・・・

早川書房「酔いどれの誇り」ジェイムス・クラムリー/小鷹信光訳

昔は、ゆっくりと、苦労しながら目を覚ますと、この先にさまざまなチャンスと勝利と敗北と危険に満ちたかなり長い時間が待ち受けていて、それは、いつもというわけではないが、昼飯でいったん終りとなった。ヘンリーの記憶では、午後はアリゾナのように延々として不毛で、そのあとに、夕方というものが続いた。それは、夜とはまったく違う、別の物だった。

早川書房「ウインブルドンの毒殺魔」ナイジェル・ウィリアムズ/高儀進訳

もっとも、人間はつねに不名誉な現在から過去を眺めては、つい一昔前を自分たちの世代よりも、ヒロイックなものと美化してしまうかもしれない。ガラスの時代、硬質で、脆くって、美しくて、壊れやすい時代。

早川書房「父に捧げる歌」ルース・バーミングハム/宇佐川晶子訳

時計の針が前に進むと「時間」になります。後ろに進むと「思い出」になります。

新潮社「両手いっぱいの言葉ー413のアフォアリズム」寺山修司

青 春

18歳のアム。・・・人生にはまだまだ先があった、あのころだ。

集英社「ホテル・カリフォルニア」アラン・ラッセル/日暮雅通訳

目の覚めるようなブルーネットがドアをあけた。小柄で丸味を帯びた体と明るい顔を見ると青春を賛美したくなると同時に、年齢を感じる。

早川書房「黒い風に向って歩け」マイクル・コリング/木村二郎訳

清潔な春のように、溌剌とした美しさに輝いているようだった。

講談社「夏服を着た女たち」アーウィン・ショー/常盤新平訳

(大学の同窓会に出席して)
苦い思い出のほうが強く記憶に残っているのは、それだけ心に深い焼き印を押されたということだろう。---達成されなかった目標、壊れた友情、成就しなかった恋、見過ごしてしまったり、一度探検したのにその後忘れてしまった知の洞窟。

早川書房「熱い十字架」スティーヴン・グリーンリーフ/黒原敏行訳

彼女は、早く素敵な20歳になりたいと思っていて、実際そのとおりになったのに、自分ではそれがわからなかったタイプの女性かもしれない。

早川書房「共犯証言」ステーヴン・グリンリーフ/佐々田雅子訳

あの頃、私たちは口を開けばポロックやパップについて論じ合い、画家は詩人と隣りあってカウンターによりかかり、・・・そう、この私を含めてだれも若かったのだ、あの頃は。

東京創元社「マンハッタン・ブルース」ピート・ハルミ/高見浩訳

運転しているのは、紫色のTシャツを着た第六次大戦のエースパイロット気どりの若者で、車はビールで一杯機嫌の仲間を満載していた。

早川書房「逃げるアヒル」ポーラ・ゴズリング/山本俊子訳

灰色の物寂しい冬の日々、情熱はぱっと燃えあがってはすぐに沈静したーー愛は破綻し、友情は断絶し、学業は閉却されて、しばしば取り返しのつかないまま終わった。春の訪れはあまりにも遅く、とうてい償いにはならなかった。

早川書房「熱い十字架」スティーヴン・グリーンリーフ/黒原敏行訳

トラック運転手やガソリンスタンドの店員など、行く先に長い人生が待ち構えている若者の横に、腰を落ち着けていく。

東京創元社「ピアノ・ソナタ」J・J・ローザン/直良和美訳

若 さ

・・・25歳は過ぎているのだろう。彼女の美しさはほとんど若さゆえだから、もうあまり時間が残っていないことになる。

早川書房「黒い風に向って歩け」マイクル・コリング/木村二郎訳

「1976年のことを覚えているかい、相棒? あのころはじつに前向きだった。--人間同士のつきあいかたも、なにもかもが。ガキのグループが自転車でホイッスルを鳴らしながら、ロック・クリーク・パークを乗りまわしていた。音楽にもメッセージがあった。・・・」

早川書房「友と別れた冬」ジョ-ジ・P・ペレケーノス/松浦雅之訳

ブラック・クインは、もうまもなく30歳に手がとどくところであるが、手を引っ込めてのばそうとはしない。どうやら、過去の積み重ねで評価される大人になるより、未来の可能性を秘めた小人でいたいらしい。

早川書房「殺人シーンをもう一度」サミュエル・ホルト/広瀬順弘訳

もちろん、同じという意味は、同じように幼稚できゃあきゃあ騒いだり馬鹿げたことをして途方もない感激と不条理な絶望のあいだを狂ったように往復している。言い換えれば、年齢相応に振舞っているのだ。

扶桑社「ニューヨーク編集者物語」ドナルド・E・ウエストレイク/木村仁良訳

彼女は20代で、コレステロールと脂肪の危険性については、まだ耳にしたこともないらしい。もっとも後者については近い将来、彼女のお尻にたっぷりとくっつくことだろう。

早川書房「証拠のE」スー・グラフトン/嵯峨静江訳

Tシャツは羨望の目で見る大人に向かって十代の女の子がさりげなく、人生には乳房が断乎重力に抵抗する時期があることを実証して見せる例のタイプだ。

扶桑社「最後に笑うのは誰だ」ラリー・バインハート/工藤政司訳

「・・・なにしろ17のときからきみが好きだったんだから」・・・
「あらジェフ、そんなの高校生の熱病みたいなものよ」
「そうかもしれない。だがあのころからずっとぼくの頭の中にはきみがいた」

早川書房「死者は惜しまない」ナンシー・ピカード/宇佐川晶子訳

わたしたちは18歳。世界の睾丸は若きわれわれが手中にあると信じて疑わない年ごろだった。

早川書房「友と別れた冬」ジョ-ジ・P・ペレケーノス/松浦雅之訳

「・・・ある年までは、まだ、男たちを泣かせ、『彼らの夢の中を泳ぐ』ことができる。・・・で、次の年になると、あなたはもう、ただの人。誰にも、見向きもされない。お金でも持ってないかぎりはね」

新潮社「エリー・クラインの収穫」ミッチェル・スミス/東江一紀訳

(交差点で停車した横で信号待ちしていたレース用自転車にまたがった女性は)
肌は滑らかで小麦色、脚も身体も申し分ない。髪はポニーテイル、ブロンズ色のサングラス。わたしはにっこり微笑みかけた。デニス・クエイドを少々。ケビィン・コスナーを少々。彼女はブロンズのレンズ越にわたしを見て「ノー」のひと言。そのままペタルをこいで立ち去った。ううむ。39歳は思ったよりおじさんかも。

扶桑社「ぬきさしならない依頼」ロバート・クレイス/高橋恭美子訳

「…すべてが可能性に満ちている時期には、なんでもあんたの前に広がっている。そして世界が現実味を帯びてくる前に、あんたは叩きのめされる」

早川書房「友と別れた冬」ジョ-ジ・P・ペレケーノス/松浦雅之訳

サラは在宅していた。ちなみにサラは現在20歳で、80歳への道のりをひた走るパンクだ。もちろんタイヤのパンクの話ではない。蛍光着色した髪・・・あちこち穴の開いたタイツ、そんなファッションで身を固めたパンクということだ。

早川書房「バラは密かに香る」デイヴィッド・M・ピアス/佐藤耕士訳

衰え

としをとると、みんなくだらない思い出をいっぱい引きずって生きてゆくのね。だから、あたしは、今朝あったことも覚えないようにしているの。

早川書房「酔いどれの誇り」ジェイムス・クラムリー/小鷹信光訳

ございますだって? 私は、走って行って運転免許証を見せてやりたかった。まったく、まだ三十そこそこだというのに。若者に“ございます”なんて言われるのは大きらいなのだ。

早川書房「殺人ウェデング・ベル」ウイリアム・L・デアンドリア/真崎義弘訳

背が低く、肩幅が広く、若いころにはさぞ敏捷でタフだったにちがいない。だが、人生のどこかで腹がせりだし、いまは足の生えた冷蔵庫。

早川書房「ハリーを探せ」リチャード・ホイト/浅倉久志訳

彼女は、私を悲しませたのではなく、私自身が山よりも年老い、日照つづきの山の斜面を走る涸谷のように荒れ果てていると感じさせられたのだということも。

早川書房「酔いどれの誇り」ジェイムス・クラムリー/小鷹信光訳

(Tシャツにパンツという格好を見て)
「・・・あなたのその中年の悲哀を感じさせる下着姿を鑑賞するだけにしとくわ。それが終ったら、ベッドで寝るわ」
「そうだったね」とおれは中年の悲哀を振りまいて言った。

文芸春秋「吾輩はカモじゃない」ステュアート・カミンスキー/田口俊樹訳

ジェリー・ハークネスは、長身痩躯の男で、中年になっても年齢との戦いに善戦している。

早川書房「死の蔵書」ジョン・ダニング/宮脇孝雄訳

・・・なにか過去のドジな体験や後悔の種になる決心を思い出したりすると、わたしは「くそっ」と口走るのだ。・・・年齢をかさねるにつれ当然ながらそうした過去の体験もたびかさなり、それを思い出す度合いもますます頻繁になり、間隔はどんどん短くなってきた。

早川書房「依頼人が欲しい」パーネル・ホール/田中一江訳

めったに人には言ったことはないが、コーリンは48歳になっている。そのことは、時おり彼女を、まるで深夜の街をおおいつくす不気味さのように、とてつもない恐怖のふちに追いつめることがある。

文芸春秋「ニューヨーク物語」ピート・ハミル/宮本美智子訳

(大学の同窓会の案内状がきたが)
とにかく疎ましい、というのが私の最初の反応だった。--もう長い年月がたっているのだ。遠い昔の恥多き日々を今さら振り返りたくない。すでにして私は、生意気盛りの青春時代にこうはなるまいと思っていた、哀れにも滑稽な時代遅れの古物となり果てている。気がついてみると、同じ中年でもいよいよ冴えない年齢層に、決定的に足を踏み入れてしまっている。考えれば、考えるほど、厭わしさは募るばかりだった。

早川書房「熱い十字架」スティーヴン・グリーンリーフ/黒原敏行訳

中年の夫婦が俺と一緒にエレベーターに乗ってきた。中年と言ったのは、つまり俺よりひとつかふたつ年上だということだ。中年の下限年齢というのは、毎年奇跡的に上昇しており、つねに俺の歳のひとつかふたつ先にある。これで長生きすれば、きっと俺は中年をまったく経験しないことになるのだろう。ある朝目覚めて、自分がすでに老人であることに、はたと気づくというわけだ。

早川書房「吾輩はカモじゃない」ステュアート・カミンスキー/田口俊樹訳

明かりをつけ、鏡を見ると、新しい一日の冷厳な光に照らされた惨めな自分の姿が目に入った。おまえも老けたもんだな、ジェーンウェイ、と私は思った。

早川書房「死の蔵書」ジョン・ダニング/宮脇孝雄訳

「あなたのお世話をするようにミズ・センスケに言われたわ」と若い女はわたしに言った。セント・トマスで女の尻を追いかけていた青春時代だったら、彼女の言葉を深読みしたかもしれない。だが、今のわたしはあっさりと聞き流した。それが成熟というものだ。老いだという意見もあるかもしれないが。

早川書房「ツイン・シティに死す」ディヴィッド・ハウスライト/川副智子訳

「年をとるってこういうことなんだな、最近わかってきたよ、--人間は、最初の40年で自分を支えてくれる原理原則を使い果たすんだ。だからわたしはいま、新しい原理原則を見つけようと努力してるのさ」
「どういうのが見つかった?」
私はにやっと笑った。「結局、望みを低くするってところに落ち着くのかな」

早川書房「匿名原稿」スティーヴン・グリーンリーフ/黒原敏行訳

(マリと)
食事のあと、フラトーン・アヴェニューの高架鉄道の駅でマリを降ろし、一人で家に帰った。ベッド・インに大きな魅力を感じる年齢はすでに過ぎてしまったのだ。

早川書房「センチメンタル・シカゴ」サラ・バレッキー/山本やよい訳

中年になっても年齢との戦いに善戦している。

早川書房「死の蔵書」ジョン・ダニング/宮脇孝雄訳

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